立憲民主党は11日夜、りっけんチャンネル「コロナ禍の子どもたち&こどものためのほうりつを考える」を配信しました。党の子ども・子育てプロジェクトチーム(PT)の座長を務める大西健介政務調査会長代理と同PT事務局次長を務める早稲田夕季衆院議員がコロナ禍の子どもたちの現状について、2014年から内閣府貧困対策の有識者として参画し、教育行政の専門家である日本大学の末冨芳(すえとみ・かおり)教授と意見交換しました。立憲民主党が国会会期末に提出した「子ども総合基本法案」(こどものためのほうりつ)のポイントを説明し、この法律がどうあるべきかについて、子ども第一、チルドレンファーストの視点で議論しました。

■日本では子どものための予算も足りないし、それを裏付ける法律もない

 末冨教授は、内閣府や文部科学省の委員を務め、今年5月に参院内閣委員会で子ども・子育て支援法の児童手当を高所得層のお子さんたちから奪ってしまうという、改悪について批判的な意見を述べたと説明し、「本来なら楽しくて毎日充実しているはずの子育てなどに、今の政府や企業が罰を科してしまうような冷たい社会をどうにか変えられないか」というテーマで出版した著書「子育て罰」を紹介しました。

 大西議員は末富教授に党が7月に主催した意見交換会や番組への出演に謝辞を述べ、今月末に出願時期が迫る大学入試共通テストの受験料18,000円について、「受験料が支払えるか支払えないかで、子どもが受験をあきらめるようなことはあってはならない」と重要で緊急性の高い問題だと提起しました。

 末富教授は子どもの学習支援団体NPO法人キッズドアの調査を引用し、受験料の問題は受験生が志望校を変更せざるをえなくなるという深刻な問題だと指摘しました。そのうえで、日本の教育格差について、「問題は大学受験だけではなく、そもそも生まれる前の親の栄養状態や食など、格差は生れる前から始まっていることを心に留めていただきたい。日本では何ら格差や貧困に対して、積極的な改善策が講じられていない。日本の子どもの貧困状態にはひとり親よりもふたり親世帯の方が多いという特徴がある。家族関係の支出がGDPに対してあまりにも低い。子どものための予算も足りないし、それを裏付ける法律もない。教育投資も足りない」と根本的な問題点を指摘しました。

末冨芳先生資料.pdf

 大西議員は末富教授の危機感を共有し、「コロナ禍で大変厳しい状況にある、ひとり親世帯だけではなく、ふたり親世帯への支援だけではなく、日頃から児童扶養手当の枠組みを使って、児童手当にさらに追加の支援をおこなっていきたい。子どもに対する予算配分を大幅に引き上げていく。与党が先進国並に伸ばしていくには10年間で2倍に増やしていかなければならないと言っている。われわれもまったく同じ思いで、与野党関係なく、しっかりやっていきたい」と意気込みを語りました。

 早稲田議員は「家族関係費や教育予算が少ない国は少子化になっており、予算を倍増にしたフランスについては出生率が高くなっている、それだけでなく、社会全体で子どもたちを育てていくという枠組みになっている。日本は子どもを産んで育てることがこれまで自己責任というような中でおこなわれてきたために非常に社会的にも経済的にも冷たい状況になっている。ここを改善するには私たちは子育て予算の倍増を目指して、子ども総合基本法の理念を実現していきたい」と抱負を語りました。

■コロナ禍の子ども政策

 大西議員は党がこれまでに打ち出したコロナ禍の子ども政策を説明しました。

 立憲民主党は9月2日に新型コロナの感染拡大が深刻化する中で新学期が始まる前に、子どもたちを守るため政治が取り組む課題について、子どもの感染防止などの新型コロナ対策を厚生労働省と文部科学省に申し入れをおこないました。

 緊急事態宣言の3週間延長を受けて、9月10日に枝野代表が「3週間で取り組む『命と暮らしを守る』4つの緊急提言」を発表を発表、(1)集中的な人流抑制等(2)医療・保健所の本来機能の回復(3)出入国管理の徹底(4)学校・子育てへの配慮――の4項目を提案しました。

 大西議員は進級進学への不利益の防止や、オンライン授業をおこなう際の環境整備、分散学習への学習指導員とスタッフの増員などについて強調しました。
 早稲田議員は働く保護者への支援について、党の新型コロナウイルス対策本部と厚生労働部会が政府に申し入れた休校休業等助成金の復活が実現した報告しました。

■本当に大変な状況にある子ども・若者・大人こそ声をあげられない

 末富教授は与野党に申し入れた提言「夏休み延長・臨時休校に関連する補正予算・予備費等での緊急対応のお願い」について、「日本は子どもや子育てする親、若者に非常に冷たい社会で、本当に大変な状況にある子ども・若者・大人こそ声をあげられない」と子どもと大人の貧困対策支援団体と連携し、いろいろな意見を届けていると説明しました。

 初等中等教育関連について、「学びの補償のためには、世界一多忙な日本の教員の状況をどうにかしなければならない。国会が開かれないことで、補正予算で組まれなければならないものができていないことによって、現場は苦しんでいる」と苦言を呈しました。

 高等教育関連について、「共通テストの受験料の支援は立憲民主党をはじめ与野党にご尽力いただいたが、間に合わなかった」と残念な思いを明かしました。

 喫緊の課題について、保護者の休業補償、生活困窮世帯の親が感染した場合の子どもたちためのケア、立憲民主党が申し入れた、子育て世帯への特別給付金や多子世帯への支援、生活保護の仕組みの改善などを挙げ、立憲民主党に引き続き「子どもや若者が置き去りにされない」政策を訴えました。

■子どものための法律はどうあるべきか

 立憲民主党は5月31日、子どもたちのための法律「子どもの最善の利益が図られるための子ども施策の総合的な推進に関する法律案(子ども総合基本法案)」を衆院に提出しました。法案提出者は、大西健介子ども・子育てPT座長、岡本あき子同PT事務局長、今井雅人内閣部会長、山井和則、寺田学、後藤祐一、池田真紀各衆院議員。

 大西議員は、子ども総合基本法案を多岐にわたる総合的パッケージ法案だと紹介、5つのポイントを説明しました。

(1)予算の確保:先進国でもGDPで最低水準という予算を倍増へ。子ども省の設置もさることながら、予算を大幅に増やす。
(2)チルドレン・ファースト:子どもの権利条約の理念にのっとり、子どもの最善の利益を図ることを子育て施策の目的にしていく。子どもの権利擁護のための独立した機関(イギリスの子どもコミッショナーやノルウェーの子どもオンブットを参考とする)を設置する。
(3)子どもから若者までの切れ目のない支援:未就学児から初等・中学教育を対象とし、子どもが成人した後の関連施策を含む。
(4)児童手当・児童扶養手当の拡充:児童手当=支給対象を高校生までに拡大し、特例給付の一部廃止分の復活によりすべての児童を対象に支給する。児童扶養手当=支給対象をふたり親を含む低所得子育て世帯に拡大する。
(5)子どもの貧困への対応:子どもの貧困率を10年で半減することを目標に取り組む。

■自民党と立憲民主党の最大の違いは「児童手当」

 末富教授は立憲民主党の子ども総合基本法案について、(2)チルドレン・ファーストと(3)子どもから若者までの切れ目のない支援が核となり、(4)児童手当・児童扶養手当の拡充と(5)子どもの貧困への対応は立憲民主党が子どもを尊重しているあらわれだと一定の評価を示しました。

 その上で、「現在の自民党と立憲民主党の最大の違いは児童手当と児童扶養手当を政策の前面に掲げてくるかどうかということではないか」と提起し、衆院選の争点として、「財源について、子どものための投資を誰がどのように公助として支払っていくのか、与野党の論争にしていただきたい」と提言しました。

 大西議員は「間近に迫った総選挙の中でわれわれもしっかり争点化して、与野党ともに議論することによって、日本の子育て政策が一歩でも二歩でも前進していくようにしていかなければいけない」と意気込みを語りました。