参院厚生労働委員会で16日、閉会中審査がおこなわれ、「立憲民主・社民」会派から打越さく良議員が質問に立ちました。

■医療提供体制について

 打越議員は新型コロナウイルス感染症の自宅療養者が全国で10万人を超え、8月に250名の方が医療を受けられずに自宅で亡くなった現状をふまえ、「政府として、十分な医療を受けられずに重症化、あるいは死に至った国民に対し謝罪すべきではないか」と田村厚生労働大臣に強く求めましたが、謝罪の弁は聞かれませんでした。

 打越議員は「医療計画の実質的前倒しをおこなっていくべきではないか」と問うと、田村大臣は冬にかけて第6波が来るという認識を示し、都道府県に臨時の医療施設の整備など医療提供体制の強化を働きかけていく考えを示しました。

 打越議員は、地域医療計画の今後の見直しはどのようにおこなっていくべきか、政府の分科会の尾身会長の見解を求めました。尾身会長は日本の医療体系について「従来、がんや救急医療が重要だとされており、感染症に対応する発想がなかった。これまでの経験を活かして、根本的な見直しが必要だ」と述べました。

■「ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方」について

 打越議員は(1)ワクチンを接種済みであることや検査で陰性だったことを証明する「ワクチン・検査パッケージ」について、予防接種済証の有効期限等は想定しているか(2)ブレークスルー感染(新型コロナウイルスのワクチン接種を終えたあと2週間以上して感染)のリスクが指摘される中、 新型コロナワクチンの3回目の接種をおこなう「ブースター接種」の検討状況と見通し(3)検査について抗原定性検査を含めるべきではないのではないか――を問い、政府は3点とも、現時点で決定には至っておらず、海外や専門家の知見を参考に議論を進めていく状況だと回答しました。

■2類相当から5類等への検討について

 打越議員は新型コ口ナウイルス感染症の感染症法上の位置付けの見直しの検討について、厚労省と尾身会長の見解をただしました。
 厚労省担当者は「専門家の意見を伺いながら、適切なリスクを検討していく」と述べました。
 尾身会長は「普通の風邪と一緒ではない。ただし、すべての新規陽性者が全員入院しないといけない状況ではない。しかるべき時期がきたら、慎重に検討していく」と説明しました。

■家族全員が感染した場合について

 打越議員は家族全員が感染した場合について、親子で入院が難しい場合の看護師や保健師らの支援を受けながら親子滞在できる宿泊療養施設の必要性を主張し、厚労省に現状の取り組みを確認しました。厚労省は「感染した家族が同じ部屋で宿泊療養できる対応を都道府県に呼びかけている」と答弁しました。

■保健所のひっ迫について

 打越議員は埼玉県で50代男性が保健所からの安否確認がなく、自宅で死亡した事例について、さいたま市が新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)に入力していなかったことが発覚したと説明しました。その上で、保健所でHER-SYSが機能していないのではないか、是正する考えについて、厚労省にただしました。

 厚労省は「患者の症状変化を確認するために、保健所に説明をおこなって、積極的な活用を働きかけてきた。今後とも現場の声を聞きながら、見直しを検討していく」と答弁しました。

 打越議員は(1)各地の保健所がどれくらいの残業状況か、把握しているか(2)感染症で自宅療養されている方の健康観察業務について自治体から民間への委託状況を把握しているか(3)契約内容等について把握しているか――について、厚労省に確認しましたが、厚労省は3点とも「把握していない」と答弁しました。

 打越議員は「国民の健康と命を守る責任を果たしていない。地域に根差した業務が果たせていない」と保健所のひっ迫した状況を把握していない厚労省を断じ、田村大臣に説明を求めました。

 田村大臣は感染症に対応する人員を1.5倍に増やし、民間への委託も活用し、「11月から来年1月までの山を乗り越えたい」と答弁しました。