参院厚生労働委員会で16日、3週間ぶりに閉会中審査がおこなわれ、立憲民主党の2番手として石橋通宏議員が質問に立ちました。
石橋議員は冒頭、「救うべき命、救えたはずの命が失われている状況のなかで、国会がその役割を果たしていないのではないか」と切り出し、立憲民主党など野党4党は、7月16日に憲法53条にもとづく「臨時国会の召集」を求めているにもかかわらず、いまだに憲法上の義務すら果たそうとしない政府与党の対応を批判。加えて、わずか2時間という限られた時間の審議を充実させるべく、河野ワクチン担当大臣および新型コロナウイルス対応担当の西村経済再生担当大臣の委員会出席を求めたが、これも拒否されたことに触れ、「平時ではなく、いまは有事だ。担当大臣が出席して国民に対する説明責任を果たすべきではないのか。本来であれば総理が出てきていい話だ」と問題視しました。
その上で、石橋議員は、(1)新型コロナ陽性者の入院対象を重症者等に限定した結果(2)緊急事態宣言下で行動制限を緩和する案――等について取り上げ、政府の見解をただしました。
新型コロナウイルス患者の入院制限をめぐっては、政府は8月2日、感染急拡大による病床のひっ迫を防ぐ必要があるとして自宅の療養方針の見直しを決定し、翌3日に全国に事務連絡を通達。「感染者が急増している地域では自宅療養を基本とし、入院は重症者や重症化のおそれが強い人などに限る」としましたが、同月5日の厚労委員会で石橋議員の質問に対し、「中等症は基本的に入院。軽症でも悪化の可能性が高いと医師が判断すれば入院」だと答弁、軌道修正した経緯があります。
石橋議員は、政府の方針見直し以後、自宅療養者数が激増していることに触れ、田村大臣が答弁した「中等症は原則入院」が実現されたのかと質問。田村大臣は、「感染者が増えてくると日本の医療資源、限られたマンパワーのなかでどうやってより多くの方の命を救うのかという体制を作っていく。デルタ株によって日本の想定よりもかなり大幅に増えた感染者のなかでは中等症の方全員を病床で見ることはできなかった」などと答弁、「中等症は原則入院」が実現しなかったことを認める形となりました。
石橋議員が、自宅療養者が激増するなか、自宅療養中に亡くなられた方の数を尋ねると、田村大臣は、厚労省がHER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)で把握した8月の自宅療養中の死亡事案は全国で11件だと答弁。「たぶん入力されていないものもたくさんある。警察等々の発表のデータもいただいている。どれくらいの方がHER-SYSにあらかじめ登録した上で、コロナが原因で亡くなれた方は完全に把握できている状況ではないが、徐々にデータが入ってくると思う」などと説明しました。石橋議員は、警察庁の発表では、自宅などで体調が悪化して亡くなった人のうち新型コロナウイルスの感染者は8月は250人に上り、7月の8倍に急増しているとして、「これだけ多くの方が自宅療養中に命を落とされている。なぜ厚労省の把握とこれだけ大きな乖離(かいり)があるのか。東京の数字も29人であり全然違う。現状どうなのかをリアルタイムで把握しないといけないのに、それができなかったから救える命が、救うべき命が救えないのではないか。どこに理由・原因があったのか、それをみずにどうやって対処するのか」と迫り、感染急拡大を理由に責任を認めない田村大臣に対し、医療提供体制を整えないまま、専門家に相談することもなく方針転換をしたことがこうした事態を招いたと指摘しました。
石橋議員は次に、19都道府県を対象として緊急事態宣言延長の議論のなかで政府が9日、今後の日常生活の回復に向けた考え方を決定、行動制限の緩和方針を示したことに、「アクセルと同時に踏んで国民の皆さんに誤ったメッセージを送ってしまったのではないか」と指摘、政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長の見解を尋ねました。
尾身会長は、ヨーロッパ諸国などを見てもワクチン接種率が高まっても行動を緩めると感染が拡大することは明らかになっているとして、「一番恐れているのは、ワクチンは有効だが感染予防効果は完ぺきではない。しっかりとした感染予防対策を一定程度続けないと必ずリバウンドがくる。行動制限の緩和は、感染が落ち着いてきて、ゆっくりと徐々にやるということ。緊急事態宣言下でやることはないことを政府はしっかり国民の皆さんに伝えていただきたい」と求めました。
関連して石橋議員は、政府が行動制限の緩和の概要のなかで示した、ワクチン接種または検査を要件とすることが差別や排除につながることにならないかと懸念を表明。尾身会長は、「分断と差別を避けるため、われわれは国内で『ワクチンパスポート』という言葉は使うべきではないと考える。ワクチン打たない人には検査というやり方で補完したらいいのではないか。だからといってワクチン・検査をパッケージとして法的な義務にするのではなく、どのようにすると国民の納得があり、合理的なのかを国・自治体、事業者、一般市民でこの期間に議論していただいたらいいのではないかというのがわれわれの趣旨だ」と述べました。