衆院本会議で11日、岸田総理の所信表明演説に対する代表質問がおこなわれ、共同会派を代表して立憲民主党の辻元清美副代表が登壇。衆院予算委員会の野党筆頭理事を務める辻元議員は「コロナ禍で多くの方々が苦しんでいるなか、国会を閉じていていいのか。現場の首長からも、補正予算の審議をするべきという声が上がっている」と野党が憲法53条の規定に沿って求め続けてきたと主張しました。そのうえで、14日に解散する意向を表明した岸田総理に「このまま、3日後に解散されたら、各大臣が適材適所なのかも、さっぱりわからない」と述べ、NTTから高額接待を受けていた牧島デジタル担当大臣の事例に触れ、「予算委員会を開いて、大臣の資質をしっかり点検しなければならない」と要求しました。

■民主主義の危機

 自民党の総裁選挙以来、「民主主義の危機にある」と発言してきた岸田総理に(1)安倍元総理が国会で118回虚偽答弁した件(2)森友学園問題で財務省による公文書の改ざんが行われた件――の2例が「民主主義の危機」にあたるのかをただしましたが、岸田総理は明確な回答を避けました。

■甘利幹事長の政治倫理審査会招致

 2016年、自身や当時の秘書が都市再生機構(UR)と交渉をしていた建設業者から現金を受け取った問題で経済再生担当大臣を辞任した甘利幹事長について、岸田総理に「岸田内閣では大臣が大臣室で、事業者などから現金を受け取る行為を認められるのか」とただしました。また、先週「調査報告書は公表しない」と文書で表明した甘利幹事長に「調査報告書と調査の内容の公表を総理から指導していただけるか」求めました。

 辻元議員は19年前に秘書給与問題で議員辞職した後、自民党による予算委員会の参考人招致に応じた経験に触れ、「刑事責任のあるなしとは別に、政治家は政治責任も果たさなければならない」と諭されたのは、岸田総理が現在代表を務める宏池会の加藤紘一元幹事長だったと明かしました。また、これまで宮沢元総理などの総理経験者も証人喚問に応じていたと説明し、「かつては、総理経験者にもしっかり対応させる。それが自民党だったのではないか」「岸田総理は『政治の矜持』をお持ちのはずだ」と岸田総理に「宏池会の先輩方に恥じない答弁」を求めましたが、岸田総理は「政治家の政治責任は各議員に任せている」と明確な回答を避けました。

■広島での買収事件

 5日に自民党広島県連が河井克行夫妻による買収事件の再調査を求めた件について、岸田総理に再調査する意向を確認しました。岸田総理は再調査を否定しました。

■森友・公文書改ざん問題

 森友学園に関する決裁文書の改ざんに関与させられ自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんの妻、雅子さんが岸田総理に第三者による再調査を求めた手紙を読み上げ、「正しいことが正しいと言えない社会はおかしい」と雅子さんの思いを届けました。その上で、「長期政権でたまった膿(うみ)を岸田政権で出すことができないのであれば、国民のみなさんの手で政権を変えていただいて、私たちが大掃除をしたい」と表明しました。

■安倍・菅政権からの脱却を

 9月5日、近畿医師会・連合が発出した「国は感染症対策を強化することなく、急性期病床の削減に固執した地域医療構想を推進した。結果として、医療がひっ迫し、必要な医療が受けられない事態を招いた」決議に触れ、コロナ前、安倍政権時に「公立・公的病院の再編(病床の削減と統廃合)」を決め、菅政権は法案を強引に成立させたと非難し、岸田総理に政策の転換を求めました。

 コロナ禍で政府が強行に開催した東京五輪の経費について、岸田総理に国の支出を明らかにするよう求めました。また、財政がひっ迫している東京都が赤字補てんが出来ない場合に国が負担するのか、経済効果はあったのか、ただしました。

 総務省によると、コロナ禍で雇用状況が悪化した昨年、非正規雇用で働く女性たちが大量に雇い止めにあって、自殺者が急増していると述べ、「新自由主義からの脱却」を主張する岸田総理に「労働者派遣法のあり方を抜本的に見直すつもりはあるのか」ただしました。

 また「今後は安定した雇用を生み出す業界に力を入れることが最優先だ。再生可能エネルギーが、地域密着型で回る経済を生み出す起爆剤になる」と主張しました。

 安倍・菅政権の成長戦略の象徴であるカジノ・IRは格差を拡大させるとし、「このようなビジネスモデルにすがってきたから、日本は衰退を続けてきたのではないか」と苦言を呈し、カジノ解禁の撤回を強く求めました。立憲民主党はIR関連法の廃止法案を提出しています。

 エネルギー政策について、原発推進の急先鋒である甘利幹事長で、エネルギー政策は転換できるのかと疑問を呈しました。

 辻元議員は安倍・菅政権を「妻や息子まで出てくる『政治の私物化』だった」と断じ、元総理らへの配慮で「身動きができない」岸田総理に同情を示す一方、「私たちには、しがらみがない」と違いを強調しました。そのうえで、「私たちが守るのは、新自由主義を進めてきた人たちの既得権ではなく、国民のふつうの暮らしです」と表明し、質問を終えました。