参院本会議は12日、岸田総理の所信表明に対する代表質問をおこない、立憲民主・社民から福山哲郎幹事長が登壇しました。福山幹事長は、(1)予算委員会の開催要求(2)安倍・菅政権からの負の遺産(3)成長と分配の好循環、新しい資本主義(4)新型コロナウイルス対策(5)自宅療養者への対策(6)ワクチン追加接種および医療品確保(7)コロナ禍での低所得者支援(8)子育て世帯生活支援特別給付金の再支給(9)持続化給付金の再支給(10)アベノミクスの評価(11)気候変動対策(12)石炭火力の見直し(13)ジェンダー平等の実現(14)選択的夫婦別姓(15)LGBT平等法(16)同性婚(17)名古屋出入国在留管理局のビデオ開示(18)入管体制の見直し(19)人権機関の創設(20)日中関係(21)北朝鮮、拉致問題(22)北方領土問題(23)敵基地攻撃能力(24)沖縄、辺野古基地問題――について質問しました。

福山哲郎幹事長 代表質問原稿.pdf

 福山幹事長は、野党が国会開会を要求してきたにもかかわらず、政府が要求を無視して、ようやく臨時国会を開いたと思ったらすぐに解散するのは2017年の安倍元総理のやり方と同じではないかと追及。「国会から逃げないでください。私たちは、夜中でも委員会を開催するべきだと言っています。ぜひ予算委員会をやりましょう」と衆院解散前の予算委員会開催を求めました。岸田総理は「所信表明演説を行った上で代表質問の機会を通じて、政権の考え方を国民の皆さんにしっかり説明させていただいている」などと声を聞く姿勢を示しませんでした。

 福山幹事長は、「所信について、驚き、あきれた箇所があります」と述べ、岸田総理がマクロ経済運営について「大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進につとめる」と表明したことに、「アベノミクスの『三本の矢』と全く変わらない」と指摘し、「『新しい資本主義』はアベノミクスの焼き直しに過ぎないのですか」と質問しました。また岸田総理が自民党総裁選で主張した「令和版所得倍増計画」について、「所信には全く見られませんでした。金融所得課税強化の旗も降ろされましたね。早くも党内もしくは官僚からの圧力で取り下げたのでしょうか。失礼ながらいきなりブレすぎではないですか」と迫りました。岸田総理は金融所得課税の見直しについて、「成長と分配の好循環を実現するため、さまざまな分配政策を選択肢のひとつとして掲げてまいりました。分配政策として賃上げに向けた税制の強化、下請け対策の強化など、まずやるべきことがあると考えております。まずこの税制については、皆さんの中であるいは政府・与党の税制調査会の中でご議論いただきたい」などと答弁。新しい資本主義実現会議を創設し、すみやかに会議を開設する考えを示しました。

 また、福山幹事長は、新型コロナウイルス感染症の第5波では自宅療養者がピーク時に全国で13万5千人を超え、入院したくても入院できずに亡くなった方が大勢いたことを指摘。「国民皆保険の日本において、治療を受けることなく、多くの方が自宅療養中にお亡くなりになったという事実について、総理はどのように受け止め、原因を分析しているのか」と質問しました。岸田総理は、「最悪の事態を想定し、病床と医療人材の確保、在宅療養者に対する対策など対応策の全体図を早急に国民にお示しできるよう指示を出した」と答えました。さらに福山幹事長は岸田総理が「地域、業種を限定しない形で、事業規模に応じた給付金を支給」と述べていることについて、持続化給付金の必要性、総理が給付金支給をどのくらいの規模でおこなうつもりかただしました。岸田総理は「先日の閣議で指示を出しました。新たな経済対策の中に盛り込んでいる」などと具体的には答えませんでした。

 先週の国連人権理事会で「安全でクリーンで健康的で持続的な環境への権利」は人権とする決議が43対0で初めて採択され、日本を含む4カ国だけが棄権したことについて、岸田総理にその理由を聞きました。岸田総理は「この概念の意味するところが明確でないため棄権をした」と説明しました。福山幹事長は「未来に対して責任を果たすために、一日も早く脱石炭にかじを切るべきだ」と総理の認識を聞きました。岸田総理は「資源が乏しく周囲を海で囲まれた日本において安全性、自給率、経済性、環境適合を満たす単一の完璧なエネルギー源がない現状では、多様なエネルギー源を活用することが重要です。石炭火力は二酸化炭素の排出量が多いため電力の安定供給を確保しながら、石炭火力の発電比率をできる限り下げていかなければなりません」と述べました。福山幹事長は、立憲民主党が原発に依存しないカーボンニュートラルを実施することを政権公約にしていると紹介。「気候変動対策として2030年までに、温室効果ガスの排出を2013年比で55%以上削減します。原子力発電所の新増設は認めず、使用済み核燃料の扱い、立地地域への支援、雇用の公正な移行、廃炉により電力会社に生ずる損失の補填、技術者・研究者の育成など、具体的で不可逆的な方針をすみやかに確立し、国の監督と責任の下で、廃炉を着実に進めます。それぞれ長く厳しい闘いですが、やり切る覚悟です」と力を込めました。

 被爆地広島出身の岸田総理に核兵器禁止条約締約国会合へのオブザーバー参加を検討することはあるのか質問しました。岸田総理は、「核兵器のない世界への出口ともいえる重要な条約であると認識をしています」と述べる一方で、「ご指摘のような対応よりも、わが国には唯一の戦争被爆国として核兵器(保有)国を関与させるよう努力していかなければなりません。唯一の同盟国である米国の信頼を得た上で、核兵器のない世界の実現に向けて共に前進し行動していく。こうした取り組みを進めていきたい」などと米国主導での行動となることを答弁しました。

 最後に福山幹事長は、「岸田総理自身が所信で、『明けない夜はありません』と言われました。今、日本は真っ暗だということですね。忖度だ、改ざんだ、虚偽答弁などが横行した、窮屈な生きづらい政治から、いよいよみんなで支え合う『まっとうな政治』に変えていきませんか。政治の景色を少し明るくしませんか。国民の皆さん、私たちは本気で日本の政治を変えたいと思います。そして、変えるのは、私たち政治家ではありません。一人ひとりの国民の力です。ともに変えていきましょう。立憲民主党には、あなたの力が必要です」と強く呼びかけました。