立憲民主党の代表選挙に立候補している西村ちなみ、逢坂誠二、小川淳也、泉健太の4人は25日、横浜市内で開かれた、子育てを含む社会保障政策、政治改革・党改革をテーマにした討論会に参加しました。

 討論会では代表選挙管理委員の青木愛参院議員が進行役を務めました。同委員の坂本祐之輔衆院議員は冒頭のあいさつで、同日の討論会が北海道、福岡に続く第3回目であり代表選挙管理委員会主催の最後の集会であるとして、「オープンで活発な議論をおこなうことで立憲民主党の新たなスタートを広くアピールしていきたい」と話しました。

 討論会は、各候補者がテーマに沿った政見を表明した上で、各候補者間での討論、会場からの質問への回答という形で進みました。

■西村ちなみ候補

 今回の代表選挙を通じて、立憲民主党が日本の政界のなかで果たすべき役割をきちんと果たせる政党としてもう一度立て直していきたい。いま日本社会では多くの困難が生じている。今日のテーマで言えば、子育てをはじめとする社会保障、多くの皆さんが社会保障のセーフティネットに救われたいと思いながらなかなかその対象にならないのではないか。私自身子育て中だが一度保育園に落ちた。仕事をしながら子育てをするお父さん、お母さんが保育園に落ちる深刻さを身をもって体験した。日本の社会では子育てや介護の仕事は、家の中での女性の仕事として見られてきた。ようやく社会化が進んだが、まだその名残があり十分な提供体制とは言えない。

 その象徴としてあるのが、介護や保育の現場で働く方の待遇が低い問題。今回、岸田総理は新しい経済政策として医療や保育、介護の現場で働く皆さんの待遇改善策を打ち出した。私たちはこの件について何回も法案を提出してきたし、全産業の平均賃金と比べても低いことはご承知のとおり。それに対し今回岸田内閣が打ち出した額は非常に低い。全産業の平均賃金と比べて月額10万円近く差があるのに、たった4千円の引上げ。これで再分配だと胸を張られるのはたまったものではない。
 コロナ禍でもこうしたエッセンシャルワーカーの皆さんがいてくださったから私たちは生活を送ることができることが明らかになった。こうした方々への処遇を改善することを通して、サービスを提供する側はもちろん、受ける側にとってもプラスになる。引いていえば、これまで立憲民主党が主張してきた、分配を通しての経済成長、内需を温め使えるお金を増やし地域のなかで消費を回すことによってGDPの重要な部分を占める個人消費を上向かせていくことが可能になってくる。社会保障はすべての人の暮らしを守るためであると同時に、経済にとってもプラスになる。こうした考えを背景に、もっと充実させていきたい。

 社会保障はいま、多くの皆さんが保険料を払えない事態に直面している。国民健康保険料が払えない、介護保険料が高すぎる、年金の給付が低くて生活ができない。特に一人暮らしの女性が大変な状況に置かれている。年金の再分配機能、最低保障機能を強化を、時間はかかるがやっていくという決断をいま政治がすべきだ。安心できる年金制度へと切り替えていきたい。

 まっとうに、額に汗して働いた人たちが、ふつうに働けば安心して地域のなかで暮らして年を取っていける社会。子どもを持ちたいと思う人たちが安心して産み育てられる社会でなければ、この国で自由な選択をしながら多様性を尊重しあいながら生きていくことが難しいと思っている。代表選挙を通して政治の流れを変えていきたい。

■おおさか誠二候補

 いま日本にはさまざまな課題があるが、そのうちの大きな課題の1つが少子化。これを克服すれば社会保障の基盤も強化される。日本で戦後最も子どもが生まれていた1949年(昭和24年)には270万人だったのが、最近はだいたい80万人台とピーク時の3分の1。これは相当深刻な状況。さらに婚姻の数は、約50年前の1971、72年には年間110万件だったのが現在50万件程度。一方で結婚したカップルの子どもの数はだいたい2人と変わっていない。ではなぜ結婚の数が減っているのか。調べて見ると、個人の年間の収入と婚姻率に相関関係がある。収入がある一定程度あれば婚姻率が高いが、収入が低い。あるいは不安定だと望んでいても結婚には結びつかない。すなわち今の少子化は、生活が安定しない、収入が不安なところに1つの課題があると思う。だからこそわれわれは、法律を改正することで望む人は非正規雇用から正規雇用になれるようにする。あるいは子育て世代や結婚を望む世代の給与を上げていくことが大事だと思っている。

 経済成長があって、そうした方たちにお金が回るのではない。そもそも仕組みを変えなければならない。例えば最低賃金を上げることは重要。そのとき、中小企業などは儲けのうちのほとんどを賃金に回しているが大企業が賃金に回すのはもうけのうち5、6割程度。中小企業に対しては政府から何らかの形で応援しながら最低賃金を上げていかなければいけない。とにかく若いみなさん、子育て世代の皆さんの賃金を安定化させて収入を増やしていくことで、望んでいる方が結婚しやすい社会になる。加えて、若い働き手の皆さんの賃金が上がると社会保険料が増え、社会保障の上からも有利になる。そうした若い、子育て世代の皆さんは入用なものが多いから上がった分の賃金をすぐに消費に回す。すなわち経済の面でもプラスになる。少子化を克服するための1つの柱として、収入や雇用が不安定な方の収入、雇用を安定化させる政策をとることが重要。

 あわせて、日本のさまざまな問題をひも解く鍵は教育にあると思っている。現在教育を受ける環境は平等ではない。また、コロナ禍で独自のワクチン、治療薬を作れず海外からの輸入に頼らざるを得なかった。そうした意味で日本は新たな稼ぎ頭をどうするかが手元にない。そうしたことをしっかりするためにも、将来の所得格差をなくすためにも教育に力を入れなければいけない。

 こうしたことを実現するためには党が強くならなければいけない。さまざまな方が集えるようしっかり努めていく。

■小川淳也候補

 社会保障改革は長年の有権者の悲願。なぜか。日本の社会保障制度は基本的に昭和の時代に原型がつくられている。当時平均寿命は60歳前後、55歳で定年、圧倒的に現役世代が多くいた。国民年金の掛け金は月額100円。そうした時代にスタートしたものをつぎはぎしながら今日に至る。当時年金受給世代は国民100人に対し5人、高齢化率5%。いまほぼ30%に到達している。国民年金の掛け金は当時の100円からいまは1万6千円を超え、4割の人たちは収入が減り雇用も不安定化して支払えない現況にある。この高齢化率は40%まで上がっていくことが想定される。そうした中でどう社会を変えていけばいいのか。

 基本的に昭和の時代は人口増、経済の高成長、ほとんどすべての方が正社員で毎年賃金が上がるという前提のなかで結婚も住宅も子育ても、子どもたちの教育、医療、年金、介護と、ほとんどが自己責任、自助努力のもとに置かれている社会だった。平成に入って30年、人口は減少に転じ、高齢化は進み、社会保障はほころび、正社員は狭き門となり、毎年給料が上がるとは想定しづらい時代に入った。それでも住宅、結婚、子育て、教育、医療、介護と、ほとんどが自己責任の下に置かれ、自助努力が求められる社会を放置してきた。

 したがって、この社会保障改革で最も求められるのは、自己責任、自助努力の呪縛から解放し、きちんと公助を整えていくこと。公助により誰もが安心感、将来への見通しが立てられるよう変革していくことが最も大事な視点になってくる。そして高齢化率40%の時代になると、現役世代だけで高齢者を支えていくことが困難になる。持続可能な社会にしていくための負担構造はどうあるべきなのか。給付のあり方は。いずれにしてもあらゆる面で十分なものでなければならず、そうした社会に移行していけるかが大きな分岐点になる。

 同時に、社会保障改革と政治改革は大いに関連していると思っている。つまり、当面のところ、いまのコロナ禍で多くの国がしたように消費減税をはじめとした減税政策と、大規模な財政出動で暮らしと経済を支えたい。しかし何十年も先まで、子どもや孫たちの世代までそのやり方だけでこの社会は持続可能かという問いに直面する。そのときに納得する国民負担とはどうあるべきか、議論していかなければいけない。こうした議論のときに消費税だけに焦点が当たりがちだが、間違っていると思う。例えばかつては所得税の最高税率は90%だったものがいま40%まで下がっている。この所得税の累進性をどうしていくか。金融所得、高収入の方ほど配当所得で得ている方が多い。収入が1億円を超えると実効税率が下がっていくのがこの国の姿。こうした金融所得課税のあり方は本来どうあるべきか。そして法人税も、引き下げ競争をこれまで国際的にやってきたが、いよいよ国際社会はグーグルやアップルをはじめ大変な収益を上げているのにしかるべき納税をおこなっていないことに、法人税を含めて適正化の道筋を探ろうとしている。さらに再分配の観点から相続の議論も避けられない、消費課税も含めて。

 国民がほしいものを買う時に払うお金は国民負担とは言わない。同じこと。私たちはどういう社会がほしいか。その社会に納得づくで、みんなが支え合いの感覚で提供できる税や保険料とはどういう姿か。それを大人社会を挙げて議論しなければならない。そして政治改革とは、その議論を進められる政治をこの国が手にできるかにかかっている。それは身を切る改革、身を正す改革もそう。そして政治家、政治はいま社会で不信の象徴。だがしかし、政治家を信用してみよう、政治が信頼に足るのではないかと思える日がこの国にやってくるかどうか。そして党改革をどの党にも増して、献身的に引っ張ろうとする力が立憲民主党から見えてこなければならない。

 党改革は政治改革、そして政治改革が社会保障改革、社会保障改革は社会の改革、そして社会の改革がそれぞれの新しい時代にふさわしい人生の不安感を取り除き、将来への見通しをもたらし、そして次世代への責任を果たす。これらすべてが連関し、相互に関わり合っていることをぜひじっくりと議論させていただきたい。

■泉健太候補

 私は社会保障をデジタルを使ってさらに進化を遂げさせていきたい。私も国会議員になる前に介護のデイサービスのスタッフをやっていたことがある。その頃は今よりももっと介護現場の人件費が安く、結婚や子どもを持ちたいと考えると他の職場に移らないといけないなと考える状況だった。こうした状況は徐々に変わってきてはいるが、まだまだ他の業種に比べても低賃金な状態は続いている。やはり処遇改善をおこなっていくことをお約束したい。

 そして、処遇改善をすれば、私たち立憲民主党がずっと言っていた、地域経済の活性化につながる。介護や福祉、子育ての現場で働いている方々は、地域で働き生活をしている方がほとんどで、地域経済が回る。

 デジタルの活用については、一人ひとりの所得を把握することでサービスに段差ではなくなめらかな坂、あるいは負担や給付になめらかな坂をつくることができる。今では、例えば年収何万円以上から何万円以下といった形で段差になっている。高齢者の医療費窓口負担も1割、2割となっていて、境界線のところの方は不公平、損をしていると感じてしまうことがある。こうしたものをお一人おひとりの所得とマイナンバーカードとつなげることで徐々に給付や負担を設定することができる。こうしたことで公平感を高めることが十分可能になる。

 子育てについては、かつて内閣府の子ども子育て担当の政務官を務めていたときの主な仕事は、幼稚園と保育所をできるかぎり統合していくことだった。文部科学省は、極端に言えば幼稚園は教育施設だが、保育所には教育がないと言ってきた。しかしそんなことはない。子どもたちは教育も受けたいし、子育てもしっかりやってもらいたいということでこども園を作ってきた。こうした認定こども園の考え方はまだまだ中途段階だが、これから子どもたちがどこでも教育と保育の両方を受けられる環境づくりを進めていく。文科省と厚労省の線引きは、いま言われている子ども庁の話にもつながるが、政府・与党が言う「こども庁」はいまだにどこからどこまでを範囲にするかが明確にはなっていない。われわれは、これまで子ども庁、子ども家庭省の議論をしてきた立場から今後、政府に先行する形でこの姿を明らかにしていきたい。

 年金については、私も含めて国会議員は国民年金だけ。これだけで生活していけるのか。もともとの成り立ちでは、生活をするための年金ではなかったものが、これだけ世帯が分かれてしまうと国民年金で自立、自活をしていかなければならない方が大勢いる。これではきついので、方向性として2つあると思う。1つは厚生年金への加入の範囲を緩和し、なるべく入ってもらう。例えば、今は事業規模50人以上のところであれば入れるところ、もっと小さな事業者でも入れるようにしていく。そして今後の検討課題としては、国民年金に上乗せする形で新たなベーシックサービス年金のようなもの必要になってくるのではないか。特に75歳以上の方を対象に。こうしたことも積極的に検討し、安心を届けていくことを主要な政策課題として取り上げていく。

 続いて、候補者間の討論では、(1)少子化の要因分析とその解決策(2)社会保障制度におけるジェンダーギャップ是正に向けた取り組み(3)介護現場での外国人労働者の活用と持続可能な年金制度のあり方(4)世帯構造の変化にそぐわない「標準世帯モデル」の構造的問題をどう変えていくのか――について質疑がおこなわれました。

 参加者からの質問では、連合との関係や環境問題、世襲議員への対応について質問があり、各候補者がそれぞれ答えました。