衆院予算委員会で15日、2021度補正予算案の締めくくり質疑があり、立憲民主党・無所属から階猛議員が質問に立ちました。階議員は(1)国土交通省による基幹統計書き換えの問題(2)前年度決算剰余金の処理(3)「人への投資」の施策パッケージの政策効果(4)「事業復活支援金」の支給要件の合理性(5)コロナ禍による中小企業の過剰債務問題(6)資本性資金の必要性(7)2%物価安定目標の必要性(8)入管のあり方――等について岸田文雄総理らに質問しました。

■国土交通省による基幹統計書き換えの問題

 階議員は、2013年から国土交通省において、政府の基幹統計「建設受注統計」の元資料である建設業者が受注した実績データを改ざんしていたことについて事実関係を確認。斉藤鉄夫国土交通大臣は、改ざんが事実であることを認めたうえで、2020年1月からは改善を行っており、政府の計画に基づき再発防止の徹底に努めると答弁、陳謝しました。
 答弁を受け階議員は、昨年、毎月勤労統計の虚偽が発覚した際に基幹統計の一斉点検をしたにもかかわらず、このような事態になったことに「自浄作用が著しく欠けている」と指摘。第三者委員会を立ち上げて徹底的な深層解明をすべきだと岸田総理に求めました。岸田総理は「再発防止のためにどういった形でそれをやるべきか、至急検討して対応したい」と述べるにとどめました。階議員は、「統計の信頼を回復するまでは本予算の審議には入れない」と主張し、徹底した調査と、調査に基づいた予算委員会の集中審議の開催を求めました。

■前年度決算剰余金の処理

 階議員は、麻生太郎前財務大臣のもとでは、2年連続で特例法を成立させ、国債の全額を補正予算や本予算の財源に充てており、見かけだけの財政健全化努力を示すもので「全くナンセンスだった」と指摘。財政の実態を見誤らないように、素直に国民に実態を示すのが大事ではないかと岸田総理に質問をしました。岸田総理は、「政治の立場からできるだけ透明に実態を示すことによって、国民の信頼をしっかり得ながら財政について考えていく姿勢は、政治にとって大変重要ではないか」と答弁しました。

■「人への投資」の施策パッケージの政策効果

 岸田総理が打ち出している「人への投資」の投資効果と4000億円の施策パッケージについて質問。後藤茂之厚生労働大臣は、「人への投資」について非正規雇用労働者の円滑な支援、教育訓練の充実などのメニューは示したものの効果は示しませんでした。また、「弾力的な政策を進めていくのがパッケージの趣旨」と答弁したことから、「パッケージと言いながらパッキングされていない。投資と言いながら効果が明らかではない」と階議員は指摘しました。

■「事業復活支援金」の支給要件の合理性

 新型コロナウイルスの影響により一定の売上が落ち込んだ中小企業等に対して支給される事業復活支援金について、階議員は今年1月から10月までの業績悪化に対応する1次支援金や月次支援金は申請が容易ではなく、全国に満遍なく支援金が行き渡っていないと指摘。また、政府が推進する「EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)」を進めるためには公正中立な立場から政府の予算が将来の財政にどのような影響を与えるのかを推計する独立財政機関が必要だと主張し、設置を提案しました。独立財政機関の設置について岸田総理は、「ご指摘を受け止めたうえで、どうあるべきか政府としても考えてみたい」と答えました。

■コロナ禍による中小企業の過剰債務問題

 コロナ禍で規模の大きな企業が借金を増やして乗り切らなければならない過剰債務の問題について、どのように取り組むのか質問。岸田総理は、「中小企業の事業再生や整理を円滑に進めるために、年度内に策定する中小企業の私的整理等のガイドラインに寄り、支援に万全を期していきたい」と答弁しました。

■資本性資金の必要性

 これ以上借り入れを増やしたくない企業が多くなり、融資の代わりに資本性資金のニーズがあると階議員は説明。資本性資金を入れることで財務が健全化し民間金融機関の融資も呼び込みやすくなるとして、資本性資金の供給を積極的にすべきだと提案しました。岸田総理は「さらなる活用を含めて、事業者の資金繰りには万全を期してまいりたい」と答弁しました。

■2%物価安定目標の必要性

 景気が上がらないのに物価が上昇しつつあることを懸念し、「スタグフレーション的な物価上昇の下で物価が2%恒常的に超える状況になったら、異次元の金融緩和は終了するか」と日本銀行の黒田東彦総裁に質問しました。黒田総裁は、「経済は回復軌道に乗りつつあると思い、スタグフレーションになっていると思いませんが、賃金・物価が好循環で上がっていくような経済を実現するべく、金融緩和を粘り強く続けていきたい」と金融緩和の終了には触れませんでした。

■入管のあり方

 階議員は、名古屋入管のウィシュマさんの事件を念頭に「入管の問題は古川法務大臣も真剣に取り組んでおられると思う、ぜひ名古屋入管の問題については真相解明し、責任を取るべきは取って、再発防止に取り組むことをお願いする」と強く求め、質疑を終えました。