衆院予算委員会で2022年度総予算の基本的質疑2日目となる25日、立憲民主党・無所属の1番手として質問に立った階猛議員は、(1)物価上昇への対応(2)行政・司法の質の低下――について取り上げ、岸田総理らの見解をただしました。

 予算委員会では冒頭、総務省に続き新たに文部科学省、法務省、国土交通が所管する予算案の関連資料に計4項目の誤りが明らかになったことを受け、鈴木財務大臣と、それに続き末松文科大臣、古川法務大臣、斉藤国交大臣が陳謝。階議員は「予算審議は国民の大切な税金の1円たりとも無駄にしないでしっかりその使いみちを精査する場。過去の事例について平成以降調べたところ、平成の全期間を通じて6つの役所、5国会しかなかった。それが1つの国会だけで4つというのはどういうことなのか。役所の姿勢が、たがが緩んでいるとしか思えない。特に国交省では統計不正が問題になったばかり。細心の注意を払って予算書を作らなければいけないはずなのにここでも数字の誤りが出ている」と政府の対応を問題視しました。

 関連して、国交省の基幹統計「建設工事受注動態統計」の二重計上問題をめぐり、昨年12月の臨時国会で岸田総理が「改善された」と述べた2019年以降も4兆円もの上振れがあったのではないかとの報道があることにも触れ、「全体で約80兆円の年間受注額のうちの5%に当たり、統計の信用性に大きな影響を与える」と指摘。岸田総理は、このたびのミスを陳謝した上で、総務省が設置した第三者検証委員会で過去の数字の復元の検討を進めているとして、この作業を急がせる考えを示しました。

■物価上昇への対応

 階議員は、総務省が21日に発表した12月の消費者物価指数が、生鮮食品を除いた指数が前の年の同じ月を0.5%上回り4カ月連続で上昇、原油価格の高止まりを背景にガソリンは前年同月比22.4%、灯油は36%上昇など「エネルギー」全体では16.4%の上昇と13年4カ月ぶりの大幅な上昇となっていることに言及。「直近で8、9%の生産者段階の物価動向に対し消費者物価動向は約0.5%の上昇。仕入れ価格が消費者物価(小売価格)に十分に反映されず、中小企業が細っていく状況で、従業員の賃金も上げにくくなっている。名目賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金上昇率と、消費者物価を比較するとマイナスになってきた。物価の上昇には2種類あるが、賃金の増加や需要の拡大を伴わない単なる物価上昇であり悪い物価上昇だ」と指摘しました。

 また、輸入物価の高騰に加え、異次元の金融緩和がこのまま続くと金利の低い円から運用上有利なドルなどの外貨にお金が流れて円安が加速しかねないとして、「輸入に頼るエネルギーや原材料がますます値上がりする。異次元の金融緩和を続けて悪い物価上昇を阻止できるのか」と日本銀行の黒田東彦総裁に迫りました。

 黒田総裁は、中小企業への影響や、賃金が上がる前に物価が大きく上がっていくことには警戒感を示す一方、「金融緩和を続けて景気の回復、企業収益の回復が賃金の上昇につながり、そのもとで消費者物価が上がっていくことを目指している」と継続していく考えを表明。階議員は、黒田総裁が9年前に就任したときに「2年間で2%の物価安定目標を実現」を掲げながら、まったく実現できないまま悪い物価上昇の懸念が生じていると指摘し、「今の価格転嫁のパッケージではまったく役に立たず、消費者物価を上げなければいけない。中小企業が価格を上げるためには環境を整える必要がある。よい物価上昇に転換するまで、実質賃金が上がってくるまでのあいだ消費税を一時的な減税すべき」だと提案、岸田総理の見解と尋ねました。

 これに対し岸田総理は、「消費税はわが国の社会保障を支える重要な安定財源として重視している。引き下げは政策の手段としてはとらない」と答弁。階議員は、「私も消費税の重要性は理解しており覚悟をもって言っている。今のままでは賃金は上がらず、物価上昇だけがだらだら上がっていくことは何としても避けなければいけない。良い物価上昇が実現するまでの過渡的なあいだ下げてもいいのではないかという思いに至った。ぜひ考えてほしい」と求めました。

 階議員は年金生活者の問題にも触れ、現行制度では物価以上に賃金が下がった場合には受給額が下がること、また将来賃金が上がってきた場合も物価の上昇に見合う程には上がらず、長生きすればするほど生活は苦しくなると指摘。現役世代の負担をなるべく増やさず、かつ老後の安心を確保する持続可能な制度にするために、75歳以上の高齢者への最低保障年金を創設し、そのために追加で必要になる財源については、亡くなったときに余った金融資産を国に返して次の世代の年金財政に与えるという、年金財源のリサイクルを提案、岸田総理に積極的な議論をと呼びかけました。

■行政・司法の質の低下

 階議員は、行政の隠ぺい体質の1例として森友学園問題を取り上げ、公文書改ざんを命じられ、自殺した財務省近畿財務局の赤木俊夫さんの妻・雅子さんが国などに損害賠償を求めた訴訟で、国が賠償請求を全面的に受け入れ「認諾」したことについて、赤木さんの自殺と改ざん作業との因果関係、これを指示した佐川元理財局長の責任を認めるのであれば、国家賠償法に基づき佐川元理財局長に対して求償権を行使すべきだと主張。佐川元理財局長は国会での証人喚問では刑事訴追の恐れがあるとの理由で30回近くもの答弁拒否を行ったとして、刑事訴追の恐れのなくなった今こそ説明責任を果たすべきだと述べました。

 階議員はまた、相次ぐ隠ぺい問題は、国家公務員が何のために仕事をするかという目的を失っているからだと述べ、「国家公務員倫理カード」にある倫理行動規準を徹底されなければいけないと指摘。「このカードを肌身離さず持っていた赤木さんがなぜ命を落とさなければいけなかったのか。しっかりと行政の責任として真相解明しなければいけない」と訴え、第三者委員会による再調査もあわせて求めました。

 岸田総理は「引き続きこの事案に対する説明はしっかり行っていきたい」と答弁。階議員は最後に佐川元理事罪局長の証人喚問を求め、質問を締めくくりました。