衆院予算委員会で4日、令和4年度総予算(新型コロナウイルス感染症対策等)に関する参考人質疑が行われ、国立感染研究所長の脇田隆字さん、日本労働組合総連合会(連合)副事務局長の村上陽子さん、国立大学法人長崎大学学長の河野茂さん、一般社団法人「反貧困ネットワーク」事務局長の瀬戸大作さんがそれぞれ参考人として意見を陳述。その後の質疑で、立憲民主党・無所属からは道下大樹議員が質問に立ちました。
道下議員は、政府が今国会で提出予定の雇用保険法改正案について、「雇用調整助成金が雇用や企業の経営を下支えしている。財源が枯渇しているときになぜ法改正までして国庫負担を引き下げようとするのか。遺憾だ」と発言。意見陳述でもこの件に触れた連合の村上さんに「このような状況の中で国庫負担割合が見直されることについて連合としてどう考えるのか」と尋ねました。
村上さんは、「国庫負担は国の雇用施策に対する責任を示すもの」だと述べ、雇用保険の財政が豊かであったときに本則の4分の1に10分の1をかけて40分の1(2.5%)に抑えてきたことは「やむを得ない」と対応してきたが、「コロナ禍で雇用情勢が厳しくなっているなかで今こそ国の責任を示してほしい」と注文。改善を求めました。
雇用保険は、雇用調整助成金などを支給する雇用安定事業と、失業手当を出す失業事業が柱。雇用安定事業は使用者の保険料で賄い、失業事業は労使が折半する保険料と国庫負担で賄っています。
道下議員はまた、コロナ禍での特に深刻な影響を受けている女性について、現状の認識と必要な支援策について質問。
村上さんは、今回あらためて顕在化した女性の貧困問題に対しては、非正規雇用をはじめとする処遇の見直しに加えて、公的な相談体制の整備やNPOなど民間支援団体への財政的な支援、新型コロナウイルス感染症対策で民間委託されているところへの雇用を創出する工夫が必要だと答えました。
道下議員は、「女性が厳しいところに置かれていたことが今回如実に表れた。これから変えていく、政策として支援していくことにつなげていきたい」と表明。困窮者支援に取り組む瀬戸さんに対しては、感謝と敬意を表した上で、本来は行政が担うべきとの認識を示し、特に女性や若者の貧困に対し「行政に何を求めるのか、行政は何をすべきか」と見解を尋ねました。
瀬戸さんは、第2のセーフティネットの生活困窮者自立支援と、第3のセーフティネットの生活保護とが分かれていることを課題に挙げ、例えば「ガスや水が止められた」といった緊急の、即日の支援が必要な時に問い合わせが分かれていてワンストップサービスになっていないことに、そこを具体的につなげる役割が重要だと指摘。「今の制度設計が具体的に若者や女性たちを想定していない制度になっている」とも述べ、具体的にどうアプローチしていくのか、制度設計を見直す必要があると求めました。加えて、若者の支援にかけつけるとその親のほとんどは貧困だとして、学生時代から具体的な支援をしていかないと18歳、19歳になったときの格差が大きく、非正規雇用でしか働けず住居がないという状況に陥っているケースが多いと警鐘を鳴らしました。女性の支援に関しては、DVをはじめ相談に行ったときに保護施設が少ないと指摘しました。
瀬戸さんの発言を受け、「制度と制度の隙間をつながる仕組みが必要だと感じた」と述べた道下議員。第5波以後、感染状況が落ち着いていた11月以降3カ月間もコロナ分科会が開かれなかったことについて、政府は専門家の提言を聞いてこなかったのではないかと問題視。現在主流のオミクロン株BA.1系統から、感染力のより大きいBA.2系統が広がりつつあることにも触れ、今後の見立てを尋ねました。
脇田さんは、第6波は今までと違う様相であり、素早い対応を求められているなか、コロナ分科会での議論は必要だと発言。BA.2系統については、これまでより15%程度感染伝播力が高いとの分析が出ているとした上で、感染状況についてはしっかり見ていく必要があると述べました。
道下議員は最後に、「医療や命を守るものは国産化すべき。研究開発予算について政府府の予算を拡充すべき」との考えを表明。「パンデミック対策は国防」だと述べた河野さんは、基礎研究の重要性を強調し、「産学官の連携をしっかりすること。利益だけにとらわれるのではなく国策としての対応が必要ではないか」などと述べました。