衆院本会議で8日、「地方税法等の一部を改正する法律案並びに地方交付税法等の一部を改正する法律案」の趣旨説明・質疑が行われ、立憲民主党・無所属の岡本あき子議員が会派を代表し質問に立ちました。

 岡本議員は(1)国土交通省統計不正問題の解明と統計監理官や統計人材の確保・育成(2)地方交付税率の引き上げと臨時財政対策債の廃止(3)給与関係経費の減少及び保健所の体制強化(4)デジタルデバイド対策(5)固定資産税――等について取り上げ、総務大臣の見解をただしました。

■政府統計

 岡本議員は、「政府統計は、本法案においても、地方財政計画、税の再分配、歳入見込みなど、政策判断するための基礎の基礎となるもの」だとその重要性を強調。国交省の「建設工事受注動態統計」の不正をめぐり、統計をつかさどる総務省においても引き続き解明の努力を求めるとともに、公的統計の整備に向けた第三期基本計画にある「統計監理官」を新たに採用した上での各府省への派遣についても、日常の統計作業プロセスまで目が届くのかと疑問視しました。

 また、統計リソースの充実が建議される一方、実態では、各府省及び地方自治体でも統計専門の職員数が減少し、総務省でも新年度予算は233.5億円余と十分とは言えない額だと指摘。「立憲民主党は統計人材の確保・育成に予算の増額が必要と求めている」と述べました。

■地方交付税

 岡本議員は、税収は増えているのに、不安や困窮の生活者が増えていることから、今まさに適正な再分配が求められていると主張。直接的な行政サービスを担う自治体の必要経費として、地方交付税を18.1兆円と増額したことは評価した上で、国民が負担する租税収入の配分が、国税と地方税とで6対4であるのに対して、国と地方の歳出は4対6、と比率が逆転したままであることから、地方交付税の法定率の引き上げを含め抜本的な見直しとともに、臨時と言いながら22年間、地方自治体に借金をさせ続ける、臨時財政対策債を廃止するよう求めました。

 これに対し金子大臣は、「地方交付税18.1兆円の確保に加え、地方税の増収などにより財源不足を大幅に縮小し、臨時財政対策債の発行額を2021年度(令和3年度)から3.7兆円抑制し、残高を2.1兆円縮減することとしている。今後も『経済あっての財政』の考え方のもと、経済を立て直し、地方税などの歳入の増加に努めていく」などと答弁。交付税率の引き上げについては、厳しい財政状況のなか容易ではないが安定的に確保できるよう粘り強く交渉すると述べるにとどまりました。

 岡本議員はまた、地方財政計画の支出で、給与関係経費が0.2兆円減額となっていることを取り上げ、地方公務員数を前年比で約5千人増員という見積もりにもかかわらず、なぜ給与関係経費が減るのかと迫りました。特に保健所数は、1996年の800カ所超から、現在は500カ所を下回り、今なお統合が進行中だとして、新型コロナの第5波で少なくとも202名が自宅で死亡しているなか、この検証をするためにも職員や拠点、十分な予算の確保を求めました。

 金子大臣は、給与関係費の減少については、期末手当の引き下げなど給与改定による減少を見込んだものだと答弁。保健所の体制強化への取り組みを自治体に求めるとともに、厚労省とも連携して必要な支援に努めていくと述べました。

 岡本議員は、デジタルデバイド対策について加速強化の必要性を訴え、具体的には公民館などを活用した講習や、専門の方々の力を借りたアウトリーチや伴走型の施策も含め、誰も置き去りにしないデジタル社会の実現のため、実効ある施策をと求めました。

■地方税

 岡本議員は、固定資産税や不動産取得税減税、法人事業税、森林環境譲与税を取り上げ、地域医療構想の不動産取得税減税については、医療機関の統廃合を加速させるための誘導策に他ならないと問題視。地元の宮城県では、昨年秋に公立公的4病院の合築・統合検討の動きがあり、コロナ禍なのに、患者さんはもちろん、地域と連携してきた実績の崩壊や、働く医療関係者にも説明のないままの混乱が起きていると指摘し、「公立病院経営強化ガイドラインを、再編ありきではなく、地域に必要な医療提供体制を確保するために見直すのであれば、税の制度もそれに合わせて、病床を減らさず建て替えや改修による機能強化でも対象とするような運用をしてはどうか」と求めました。

 法人事業税に対する、賃上げ促進税制に合わせた特例措置については、「前払い退職金制度や、M&Aに利用されるなど、一人ひとりの賃金が上がるはずの目的からの逸脱や、脱法しても税制優遇が受けられるなどがあってはならない」として、適用ルールを設けるべきだと述べました。

■地方創生

 岸田政権が特に力を入れて取り組みたい政策として掲げる「デジタル田園都市国家構想」の位置づけを尋ねた岡本議員は、本気で地方創生を図ろうとするなら、「第二住民登録制度や子どもの教育支援のための『区域外就学制度』の柔軟な対応、2拠点居住者への住まいの確保・移動に係る負担軽減など、地方と連携して2拠点居住を進める」「子ども・若者・医療・大学等教育・移動・デジタル環境整備を地方に徹底優遇」「地域社会のデジタル化推進事業、まち・ひと・しごと創生事業、地域社会創生事業費を安定財源として、複数年度での活用を見越した経常経費化」「地方一括交付金として、地方自治の裁量に任せる」等の方が長期的な視点で持続可能な地方創生になるのではないかと提起しました。

 岡本議員は最後に、地方制度調査会の活動について、その答申が本当に地方創生になるかと問いかけ、「軌道修正の提言など、金子総務大臣には地方自治体の味方になって『もの申す大臣』になっていただきたい」と求め、質問を締めくくりました。