衆議院予算委員会は18日、「社会経済情勢・外交等内外の諸課題」に関する集中審議を開き、立憲民主・無所属の2番手として玄葉光一郎議員が質疑を行いました。玄葉議員は、(1)アフターコロナを見据えた新しい分散型社会の創造(2)ウクライナ情勢(3)いわゆる敵基地攻撃論(4)福島の復興――について岸田総理らと議論しました。

■アフターコロナを見据えた新しい分散型社会の創造
 「地方分散といった空間的な分散だけではなくて、住まい方、働き方、もっと言えば、生き方も含めた分散、そういう意味では新しく多様な分散型社会というものを作り上げていかなくてはいけない」と述べた玄葉議員は、昨年東京23区が転出超過になったことを取り上げました。地方創生担当大臣を設置した時は、転出と転入を均衡させるのが大きな目標であったにもかかわらず、新型コロナ前は転入超過が続き、政策ではなく新型コロナウイルスにより転出超過になったことには反省が必要ではないか岸田総理に迫りました。岸田総理は、「転入超過になってきたことは、ご指摘の通り」と認め、「地方の創生、地方の活性化について考えていかないといけない」と答弁しました。
 玄葉議員は、東京のインフラ整備よりも地方からインフラ整備をすることが必要だと主張。次世代移動通信システム6Gを地方から普及させることや私立大学を学部レベルで地方に設置すること、企業本社の大胆な移転税制を推進することを提案しました。岸田総理は、「大学、企業、さらには政府機関の地方移転。これについては、政府としてもしっかりと取り組んでいきたい」「企業版ふるさと納税の制度も活用し、令和6年度中に1000地方自治体がサテライトオフィスの整備等に取り組む目標を掲げ、地方での雇用創出や地方での人の流れを加速していきたい」等と応じました。玄葉議員は、「転換点になるかもしれない大チャンス。この機をとらえてぜひ仕掛けてください」と地方の活性化策の推進を求めました。


■ウクライナ情勢
 玄葉議員は、ロシアがウクライナに侵攻した場合に、経済制裁をすると昨日のプーチン露大統領との電話会談で伝えたのかを岸田総理に確認しました。明確に答えない岸田総理に玄葉議員は、「日本側が出すメッセージが少々あいまいになってるのではないか」と懸念しました。岸田総理は、「国際社会に間違ったメッセージが伝わらないように、わが国の立場をしっかりとはっきりと相手に伝えることは重要だ」と答えました。
 2014年にロシアがクリミアを併合した際の日本の対応が「形ばかりの制裁で終わっている」と指摘する玄葉議員は、今のウクライナ情勢はクリミア併合時と何が違うのかをただしました。岸田総理は、「当時と今の国際情勢はずいぶんと変化をしていることは、基本的に強く感じています。わが国をとりまく安全保障環境も当時と比べましても一段と厳しさを増していると認識をしています」と違いを協調。玄葉議員は、「2014年の状況とは違うので、仮にロシアが軍をウクライナに進めるようなことがあれば、クリミア併合とは違った厳しい対応をとるのか」と質問しました。岸田総理は、「状況の変化に応じてG7をはじめとする国際社会との連携をしっかり大切にしながら、対応を考えていかなければならない」等のあいまいな答弁に終始しました。

■敵基地攻撃論
 他国領域内からミサイルを撃たれる前に発射拠点や司令部を攻撃するいわゆる敵基地攻撃について、どのような議論を進めようとしているのか岸田総理に問いました。岸田総理は、「国民の命、暮らしを守るために何が求められるのか。こうした冷徹な、現実的な、そして冷静な議論を行っていかなければいけない。これが本質だと思う。その一つの選択肢としていわゆる敵基地攻撃能力の議論があると認識している」等と述べました。玄葉議員は、「抑止力の強化が私は本質だと思っているので、抑止力たりうる装備体系とかオペレーションは日本側はどの程度持つのか。アメリカと合わせて全体の抑止力をどの程度のレベルにしていくのか。当然、お金はかかります、そういうことも含めてトータルとして本当に冷静に熟議をしていかないといけない問題だ」と指摘しました。

■福島の復興
 玄葉議員は、福島の復興の問題を取り上げ、「福島の復興の大前提というのは、福島第一原発の着実そして安定した廃炉だ」と述べました。廃炉は何十年もかかるかもしれないと指摘し、岸田総理の認識を尋ねました。岸田総理は、「福島の復興のために必ず廃炉は成し遂げるという強い決意のもと、国が前面に立って中長期ロードマップに基づき取り組みを進めていかなければならない」と応じました。さらに玄葉議員は、アルプス処理水の海洋放出問題について、「なかなか解決しないのが風評被害の問題だ」と述べ、風評被害を解決するために「福島以外でも(処理水を)処分をするか、トリチウムとの分離を本気で考えるかどっちかだ」と述べました。「トリチウムの分離技術は、専門家の間で実証できる段階にある技術は確認されなかった評価がされている」と答える岸田総理に、玄葉議員は、「(貯水タンクの)スペースをあけるためにも分離できれば(処理水を)薄めなくていいんですよ。のちのち質疑が生きる可能性があるので覚えておいてほしい」等と求めました。