衆院本会議で3月15日、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷提言事業活動の促進等に関する法律案(略称・みどり戦略法案)」についての質疑が行われ、神谷裕議員は(1)輸入小麦の政府売り渡し価格の改定(2)従来の農政に対する反省(3)「食料・農業・農村基本計画」と「みどりの食料戦略」の関係(4)有機農業の取り組み(5)化学農薬の使用低減(6)技術開発の支援(7)生産者が利益を確保する方策――等について質問しました。
(1)輸入小麦の政府売り渡し価格の改定
3月9日の輸入小麦の政府売り渡し価格改定により、昨年10月期に比べ17.3パーセントの引き上げとなることを神谷議員は取り上げました。小麦輸出の世界シェア3割を占めるロシアとウクライナの緊迫した情勢がさらなる価格上昇を懸念すると指摘し、政府の対応をただしました。金子農水大臣は、「今後の国際相場の動向は、本年10月期の政府売り渡し価格に反映されるため輸出国の動向とともにさらに注視する」と説明しました。
(2)従来の農政に対する反省
神谷議員は、みどりの食料システム戦略でCO2ゼロエミッション化、化学農薬や化学肥料の使用低減という目標を掲げ、これまでの効率的で競争力強化を図る農業、化学農薬や化学肥料の依存につながる農業から転換することになることを指摘。これまでの農政の延長線上で環境負荷低減をうたっても信頼されないので、従来農政に対する政府の反省を求めました。金子農水大臣は、「農林漁業に起因する一定割合の温室効果ガスの排出削減など環境への負荷の低減にも配慮しながら、農林漁業を将来にわたり持続可能なものとしていく必要が生じている」等と答えるのみでした。
(3)「食料・農業・農村基本計画」と「みどりの食料戦略」の関係
神谷議員は、2020年3月に閣議決定され、政府が2030年までの農政の柱としている「食料・農業・農村基本計画」に対し、「唐突に出てきた『みどりの食料戦略』の考え方が入っているとは思えない」と指摘。二つの関係性について大臣に答弁を求めました。金子農水大臣は「基本計画がSDGsに貢献する環境に配慮した施策の展開として、環境負荷低減の取り組みを進める旨について記載しています。これを踏まえ、生産力向上と持続性の両立を実現するため、検討を重ねたうえで、みどりの食料システム戦略は、翌年の令和3年5月に作成した」と説明しました。
(4)有機農業の取り組み
政府が耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を100万ヘクタール、25パーセントに拡大する目標を掲げていることについて、「世界の中で有機農地面積比率の高いEUでも現在は8.5パーセントであり、驚くべき目標だ」と述べ、どのような施策を実施するのか質問しました。金子農水大臣は、「コメやニンジンなど有機栽培で安定的な生産が可能となってきた品目から、先進的な取り組みを横展開していくとともに、有機農業に取り組みやすくするさまざまなイノベーションを創出し、普通の農家が選択して有機農業に取り組むことができる環境を作る」と答えました。
(5)化学農薬の使用低減
政府が2050年までに化学農薬の使用量をリスク換算で50パーセント低減する目標を掲げていることについて、実現に向けての道筋を質問しました。金子大臣は、「環境負荷を低減し、持続的な農業生産を実現していくためには病害虫が発生しにくい生産条件の整備や病害虫の発生予測も組み合わせた総合的病害虫管理の取り組みの推進、化学農薬を使用しない有機農業の面的拡大、リスクのより低い化学農薬等の改悪等を推進していく必要がある」などと説明しました。
(6)技術開発の支援
みどりの食料システム戦略では、カーボンニュートラル等の環境負荷軽減のイノベーションを推進することとしており、予算等を含めた支援策は用意されているのかを質問しました。金子農水大臣は「化学農薬を低減するために雑草抑制や病害虫など現場への導入に改良が必要な技術につきましては、そのための予算を確保するとともに、牛からのメタンの大幅削減など技術開発に時間を要する者はムーンショット型農林水産研究開発事業を活用して着実に技術開発を進めていく」等と答えました。
(7)生産者が利益を確保する方策
最後に神谷議員は、「本法律案が、国民全体の利益のためのものであるとしても、最も汗をかくことになる農業者がメリットをしっかり確保できなければ、そもそもこの戦略は現実のものとはならず、生産者と消費者の好循環も生まれることはありません」と述べ、農業者・生産者が利益を確保できる方策をただしました。(1)食品事業者や消費者も含めた関係者すべての行動変容を促すための基本理念の法定化、(2)流通対策や消費対策を明記、(3)技術の開発普及と当面考えられる措置を講じる――これらを通じて生産者から消費者に食料システムの好循環を促し、「環境負荷低減に取り組む生産者が利益を確保できるように取り組みを進める」と金子大臣は答えました。