参院本会議で4月15日、「ロシア経済制裁関連2法案(「関税暫定措置法の一部を改正する法律案」及び「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案)」についての趣旨説明と質疑が行われ、熊谷裕人議員が質問に立ちました。

(1)安倍元総理を外交特使に

 ロシアのプーチン大統領と安倍晋三元総理は、「ウラジーミル」「シンゾー」と呼び合う親密な関係であり、安倍政権下で11回の訪露、プーチン大統領とは27回の首脳会談を行っており、豊富な外交経験を生かし、外交特使として派遣しプーチン大統領の真意を確かめ、これ以上の軍事行動をすぐさま止めるように働きかけてはどうかと提案しました。
 岸田総理は、派遣する考えはないと答え、その理由として、欧州の各国が直接働きかけを行っているもののプーチン大統領が歩み寄ろうとする兆しは見えないとして、国際社会の声に耳を傾け侵略を止めるよう強い制裁措置を講じていくことが必要だと述べました。

(2)日本の外交戦略について

 中国は、国連総会の「ロシア軍の即時撤退を求めた決議」(2月2日)、「ウクライナでの人道状況の改善を求めた決議」(同24日)を棄権、今月7日の国連人権理事会での「ロシアの資格停止を決めた決議」では反対しているなか、林外務大臣は「中国に対して責任ある活動を呼びかけている」と発言していることから、呼びかけるだけでなく、首脳会談や外相会談を開催し、国際社会と協調しロシアへ厳しい対応を取るように直接働きかける必要があるのではないかと提案しました。
 岸田総理は、「G7をはじめとする関係国と緊密に連携し中国に対して直接訴えかけていきたい」と述べるものの具体的な話はありませんでした。

(3)ウクライナ避難民支援と難民認定

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の「国際的保護に関するガイドライン21」にある難民認定申請に従えば、ウクライナからの避難民は、難民条約上の「難民」として認定・保護される人がほとんどであると述べ、岸田総理は準難民制度の創設を目指すと表明しているが、難民政策を抜本的に転換するべきではないかと問いました。
 岸田総理は、「難民条約に従い難民と認定すべきものを適切に認定している」「難民に準じた保護の仕組みの創設など制度のあり方も含め検討をしている」と述べるにとどまりました。

(4)物価高対策について

 ウクライナ危機の影響などで、1ドル126円という20年ぶりの急速な円安水準に達し、原油高、鉱物資源・食料価格の高騰により、国民生活を損なう物価高が到来していると述べ、立憲民主党が8日に発表した総額21兆円規模の緊急経済対策を取り入れるよう求め、早急に補正予算を組み、大胆な政策を打ち出すべきだと述べました。
 岸田総理は、総合緊急対策を4月中に取りまとめ、まずは予備費を活用すると述べました。

(5)関税暫定措置法改正案

 ロシアに特化した特別措置法ということも考えられたはずだが、関税暫定措置法を改正し一般的な制度を創設することとしたのはどういう理由か。また具体的な対象国や対象物品、適用期間については政令で定めることとしているため、国会であらかじめ決定手続に関与することができないと指摘。また何をもって「国際関係の緊急時」とするのかの判断基準も明確ではないとして、野放図に拡大するなど不適当な政令が決定されないよう政府としてはどのような立法府への対応を考えているのか質問しました。岸田総理からは明確な答弁はありませんでした。