参院本会議で5月13日、「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が審議入りしました。同法律案は、2050年カーボンニュートラル及び2030年度の温室効果ガス排出量削減目標の実現に向けて、「脱炭素事業を支援する株式会社脱炭素化支援機構という新たな官民ファンドの創設」「脱炭素に取り組む自治体を国が財政支援する努力義務の規定」の2本を柱にした施策を定めることにより、わが国の脱炭素社会実現に向けた対策の強化を図ることとするものです。立憲民主・社民の会派を代表して質問に立った青木愛議員は、この2点を中心に、(1)法改正の意義(2)民間資金の呼び水効果(3)収益性の確保(4)地域との共生に係る支援(5)自治体への人的支援強化(6)ブルーカーボン(7)再生可能エネルギーの需給調整――等について取り上げ、政府の見解をただしました。
(1)法改正の意義について
青木議員は、新たな官民ファンドの創設について、現在、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構が、地域脱炭素投資促進ファンド事業を実施し、そこで一定の採算性・収益性が見込まれる地域の脱炭素化プロジェクトに対する出資が行われていることから、今回、財政投融資を活用し新たな官民ファンドを設立する意義と必要性について質問。また、今回法律を改正して、国による地域の脱炭素化に取り組む地方公共団体への財政支援等の努力義務を法律上明記した意義と、その効果について尋ねました。
山口環境大臣は、本法案により設立される脱炭素化支援機構は、脱炭素化に資する民間の意欲的な事業に対して率先して資金を供給し民間投資の一層の誘発を図るものだと説明。「財政投融資を活用することにより森林吸収源対策などエネルギー起源の削減以外の取り組みも含めてより幅広く資金供給することが可能になる」と答えました。地方公共団体への財政上の措置等を講ずる努力義務を規定したことについては、国の支援姿勢を明らかにしたものだとして、「必要となる所要額の確保に全力で取り組み、脱炭素先行地域をはじめとする地方公共団体の脱炭素の取り組みを支援していく」と述べました。
(2)ブルーカーボン
青木議員は、脱炭素に向けては、CO2を排出させないことと共に、CO2の吸収の視点も必要だと指摘。CO2の吸収に関して、地球規模で考えると、海域からは陸域での炭素吸収を上回る年間25 億トンを吸収、中でも日光が届く比較的浅い海域では、海藻や藻類が光合成によって10.7億トンもの炭素を吸収していると述べ、海の植物による吸収「ブルーカーボン」に関しても、脱炭素先行地域として選定し、地方公共団体の取り組みを支援するとともに、脱炭素化支援機構の支援対象とすべきだと主張しました。
(3)再生可能エネルギーの需給調整
再生可能エネルギーをめぐっては、発電量が気象状況などに左右されることが課題となっているとして、「脱炭素に資する再生可能エネルギーの拡大と並行して、需給バランスを調整するための電力の貯蔵、送電における再生可能エネルギーの優先、及び日本全域での電力調整などを進めることが極めて重要」だと指摘。具体的にどのような対策を検討しているのかを尋ねました。
山口環境大臣は、太陽光発電と合わせて蓄電池を導入する取り組みや、電気自動車等の導入、地域の再エネ由来の電力を水素として利用する取り組みへの支援も行っていると述べ、再生可能エネルギーの最大限の導入を図るべく関係省庁と連携して調整力の確保も進めていくと答弁。萩生田経済産業大臣は、「補助金により電力系統に直接接続する大規模蓄電池の導入を支援するほか、石炭火力などよりも再エネが優先的に電力系統を利用することができるようなルールの見直し、地域間連携先の増強に向けたマスタープランの策定などに取り組んでいく」と述べました。
青木議員は結びにあたって、「現在、人類が直面する気候変動問題は待ったなしの深刻な課題。経済活動や生活様式の根本的な変革が迫られている」と指摘。2050年カーボンニュートラルを実現するために、国、地方公共団体、事業者、及び国民が、各々に課せられた責務を自覚し行動することが求められていると述べました。