参議院決算委員会で6月13日、2020年度(令和2年度)決算外2件に関する締めくくり総括質疑が行われ、杉尾秀哉議員は(1)物価上昇についての認識と、欧米との物価上昇率の差(2)日銀・黒田総裁の「値上げ許容」発言(3)物価高に伴う国民の痛みを緩和する政策と、アベノミクスの弊害(4)骨太方針の安全保障をめぐる記述(5)安全保障をめぐる財源(6)新しい資本主義の変質――等について、岸田総理ら政府の見解をただしました。

〇物価上昇対策について

 杉尾議員は、岸田総理が「欧米諸国は物価高騰が7~8%の中、日本は2%台を維持している。わが国(の対策)は間違いなく価格に効果が出ている」と、政府の手柄のように発言したことを問題視。企業が仕入れ価格の上昇を小売価格に反映できず、その分人件費が上がっていないと指摘しました。光熱費が払えない家庭には缶詰や生野菜を届けているという長野県内のフードバンクの話を紹介し、物価が上がると負担が増える消費税の引き下げなど、あらゆる政策を取るべきだと主張。「アベノミクスは大企業、富裕層にはいい政策だったかもしれないが、多くの庶民は恩恵を受けずに取り残されたまま物価高の影響を受けている。強者のための政治であり、理不尽だ」と訴えました。

〇骨太方針の安全保障をめぐる記述

 政府の経済財政運営の指針(骨太方針)には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国内総生産(GDP)比2%以上の国防予算を目指していることを紹介した上、新たに「国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」とあることから、杉尾議員は、5年以内に防衛力を強化し、国防費をGDP比2%以上(10兆円規模)に上げると宣言しているに等しいと指摘。参院選挙前に国民には判断材料がないとして、防衛力強化策として具体的に何が必要だと考えるのか、財源確保にあたっては、増税なのか他の予算を削るのか、借金をするのか、どう考えているのかと迫りましたが、岸田総理は「これから具体的に、冷静に議論を積み上げていきたい」などと答えるにとどまりました。

〇新しい資本主義の変質

 杉尾議員は、財政健全化目標について、今回の骨太の方針には、これまで「2025年度」としてきた、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標年度の記載がないことを問題視。総裁選挙で掲げていた「令和版所得倍増」も消え、代わりに「資産所得倍増プラン」が出てきたことについて、当初掲げていた金融所得課税の強化と矛盾すると指摘。多くの国民は投資ができる環境にないと述べ、格差を広げたアベノミクスを追随、強化するものだと断じました。