衆院予算委員会で10月18日、基本的質疑が行われ、階猛衆院議員が、(1)国葬の岸田総理の弔辞、(2)円安物価高への対応――等について岸田総理と黒田日銀総裁に質問しました。

■国葬における岸田総理の弔事
 階議員は、岸田総理が安倍元総理の国葬での弔辞において新渡戸稲造の言葉を引用したことを取り上げました。新渡戸稲造の著作「武士道」の内容に当時のルーズベルト米国大統領が感銘を受け日露戦争終結のきっかけになったというエピソードを紹介し、「歴史に学んで『武士道』のように(外国から)日本に敬意や親しみ、信頼や共感を持ってもらうためのソフトパワーの強化にもっと力を入れるべきではないか」と総理の考えを求めました。岸田総理は、「自らの安全保障の備えと安保面での連携の充実、抑止力・対処力を高めるうえでこうした努力も合わせて行うことが、その国民の命や暮らしを守るうえで、大変重要な取り組みだ」等と答えました。階議員は、岸田総理には「あまり響いていない」と述べ、「過去の歴史をよく研究していただいて、日本が誤った道を歩むことないようにお願いしたい」と求めました。

■円安物価高への対応
 階議員は、ここ1年日米の金利差が拡大するにつれ、円安ドル高になっている傾向があることを説明。政府が円安対策で為替介入を行っても、日本銀行が金利差を拡大する政策を続けていては「円安は止まらない」と主張し総理の見解を求めました。岸田総理は「何をもって為替が動くのか、これを断定的に申し上げるのは難しい」等と質問をかわす答弁に終始しました。「円安を放置したまま物価高対策をやっても意味がない」と再三にわたり円安対策を優先すべきと階議員は追及するも、岸田総理は「G7との連携の中で為替問題について共同歩調をとっていく。重要性にかんがみ共同声明を発出している」と具体的な円安対策には触れませんでした。

 また階議員は、外貨建ての輸入物価指数のグラフ等を示し、「円安要因だけで38%くらい物価が上がっている」と指摘。来年になれば物価上昇は落ち着いていくると話す黒田日銀総裁に対し、「仮に輸入物価が下がっても、円安が続き消費者物価の転嫁がこれから進めば、来年にかけて物価が上がってくるのではないか」と迫りました。黒田総裁は、「コストプッシュ要因の押し上げにより上昇率を高めたのち、年明け以降はその押し上げ寄与が減衰することでプラス幅は徐々に縮小していくと考える。こうしたもとで年度ベースの前年比は来年度以降2%を下回ると予想」と答弁。階議員は、政府が価格転嫁を進め企業のマージンを広げ賃上げを主張しているのに対し、日銀が価格転嫁が進まない前提で物価が伸び悩むという考えであることが「矛盾していないか」と指摘しました。岸田総理も「最大の問題点は価格高騰に伴う賃上げ、これが実現できていないということであります。それを実現するためには価格転嫁が必要であると問題意識を持って政策を用意している」と答弁し、政府と日銀の政策の矛盾が明らかになりました。

 さらに階議員は、黒田総裁が就任以来、異次元金融緩和や国債買い入れ額の拡大、マイナス金利政策等の政策を導入する際に掲げてきた見通しがことごとく外れてきたことを指摘。「経営者だったら失格だ」と指摘する階議員は、「政府と日銀は食い違うばかり。金融政策を正常化したり柔軟化したりするためにも今すぐ退くべきだ」と黒田総裁に辞任を求めました。黒田総裁は「量的金融緩和がまったく失敗したというのは事実に反する。やめるつもりはありません」と答えました。階議員は、「反省もせず同じことを漫然と繰り返している。そして、今は円安による物価高で国民生活を苦しめている。本当にこれで通貨の番人か。中央銀行の総裁として日本の金融機関を指導する立場なのか。はなはだ疑問だ」と述べました。