立憲民主党は10月21日、止まらない円安への当面の対策について、財務省及び日本銀行に申し入れを行いました。
 申し入れには、階猛ネクスト財務金融大臣、末松義規ネクスト財務金融副大臣、櫻井周財務金融部門会議事務局長が参加し、財務省では秋野公造財務副大臣、日本銀行では内田眞一理事が申し入れに応じました。
 20日には32年ぶりに1ドル150円を超える円安を記録し、21日に発表された9月の消費者物価指数は31年ぶりに3%上昇(前年同月比)するなど、円安と物価高はますます進んでおり、国民生活に大きな影響を与えています。政府はこれまで巨額の物価高騰対策を講じてきましたが、円安を放置したまま対策を行っても砂漠に水を撒くようなものであり、早急に円安を是正する必要があることから、下記の対策を取るように財務省及び日本銀行に提言しました。

1.実質賃金の引き上げを政府と日銀の共同目標に

 日銀が「異次元の金融緩和」を始めた約10年前の黒田総裁の説明と異なり、消費者物価の上昇率が2%を超えても賃金は伸び悩み、景気が低迷している。もはや2%の物価安定目標にこだわる理由はなく、政府と日銀は実質賃金の引き上げを目標とすべきである。
 すなわち、(1)政府及び日銀は、実質賃金について、コロナ禍以前の水準を回復した上で、労働生産性の向上に見合う伸び率を実現すべく、一体となって取り組む、(2)政府は、機動的なマクロ経済政策運営による需要の創出、競争力と成長力の強化により、労働生産性を引き上げ、それを実質賃金の上昇につなげることを目指す、(3)日銀は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率でプラスの領域とするとともに、上記の政府の施策との調和を図る―ことを公表し、政府と日銀の連携を強固にすべきである。
 なお、実質賃金の引き上げが格差拡大を招くことのないよう、政府は最低賃金の引き上げも併せて行うべきである。

2.長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化

 日銀は長期の10年物国債金利の上限を0.25%、短期の政策金利をマイナス0.1%とする国際的に異例な長短金利操作を続けている。内外金利差を縮小させる姿勢を示すため、上記金利に固執することなく、長短金利操作に柔軟性を持たせるべきである。その際、国家財政、日銀財務および融資等の金融取引への影響も十分に考慮すべきである。

3.為替介入の実効性を高めるための外交努力

 9月22日の為替介入の結果が示す通り、わが国単独で行う為替介入では、効果が限定的かつ一時的である。岸田首相は、「G7の共同声明で為替について連携をすることを確認した」と国会で答弁したが、具体的な行動については何も合意していない。政府はさらなる外交努力を続け、適時適切に為替の協調介入を実行できる環境を整えるべきである。

4.内外金利差の拡大を防ぐための外交努力

 FRBによる急速な利上げも円安を加速させる原因となっている。G7の共同声明では、「金融政策の引き締めペースを適切に調整する」と合意されている。米国を含む世界経済の減速を防ぐという見地から、米国の金融引き締めペースが行き過ぎたものとならないよう、米国の金融当局とのコミュニケーションを一層強化するべきである。
 なお、これらは当面の対策であり、中長期的には、構造的に貿易赤字が拡大しやすい傾向にあることに鑑み、輸入に依存しているエネルギーや食料などの自給率を高めるなど、必要な対策を講じることを求めました。
 財務省への申し入れ後、記者団の取材に応じた階ネクスト財務金融大臣は「われわれはアベノミクスの弊害を国会で訴え続けてきた。今日は期せずして、為替は32年ぶりに1ドル150円台、そして物価は31年ぶりに3%台に達した。今日を節目として、政府・日銀の経済・金融政策の姿勢を転換してほしい」と述べました。

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