立憲民主党など野党は11月14日、旧統一教会問題に関する第27回目となる国対ヒアリングを実施しました。今回は、合同結婚式で韓国人と結婚し、その後日本に帰国した旧統一教会被害者の女性2人から話を聞き、関係省庁と意見交換を行いました。

■ふゆきさん(仮名)

ふゆきさん(プライバシー保護のため首より下のみ撮影)

 ふゆきさん(仮名)は30代の女性。ふゆきさんが保育園の時、母親が信者に。ご自身も2000年代に合同結婚式で韓国人と結婚。結婚後は韓国で過ごしていたものの、統一教会が近くにない田舎で、自然と信仰心は無くなったと語りました。数年前に子どもと共に帰国。母親は今でも熱心な信者とのこと。

 ふゆきさんは、子どもの頃、父が単身赴任で母は毎晩宗教活動で遅くならないと帰宅せず、夕食も作ってもらえず放置されていたと語りました。また、サタンの子どもと付き合うなと言われ友だちができなかったことなどを説明しました。

 さらに、1990年頃、合同結婚式が社会問題になり教会はマスコミに叩かれていたが生き残り、そのためこの30年の間に多くの被害者が生まれたと指摘。教会へ解散請求を行い、請求する以上は必ず解散させて欲しいと訴えました。このまま解散しなければ、国からのお墨付きを得てますます教会が強いものになると警鐘を鳴らしました。

 あわせて、(1)献金が減れば教団が弱まり被害者が減るとして「献金規制」(2)韓国に残された推定約7000人の日本人妻の「帰国支援」(3)親と絶縁した場合などに対応する「帰国後の滞在設備の整備」(4)韓国の学校に通っていた子どもたちの「教育支援」と「日本語教育支援」――などを求め、教会の日本人妻を帰国させる気が日本政府にあるのであれば、「子どもと一緒に、着のみ着のままで、日本に戻ってきても大丈夫ですよ」と言って欲しいと訴えました。

 また、絶縁状態の母から来た久しぶりの連絡は、投票依頼だったと述べ、今年7月に行われた参院議員選挙で投票用紙の2枚目(比例代表選挙)に、ある候補者の具体的な名前とその候補者の動画のリンクがLINEで送られてきたことを説明しました。ふゆきさんは、「広告塔になり、ここまで被害者を増やした責任を国会議員は感じ、反省し、被害者救済に取り組んでほしい」と訴えました。

■冠木結心さん

冠木さん(プライバシー保護のため膝より下のみ撮影)

 冠木結心(かぶらぎけいこ)さんは、母が統一教会系の仏教団体(天地正教)に伝道され入信。ご自身も高校2年生の時から教会のビデオセンターに通い始め、その後、合同結婚式で結婚を2度行いました。各家庭でそれぞれ子どもをもうけたものの、DVとアルコール依存・借金などでそれぞれ離婚。2013年に脱会し、現在は、change.orgで教会の宗教法人解散(法人格取消)を求める署名活動をしており、また11月9日に「カルトの花嫁」(合同出版)を刊行しました。

 冠木さんは、(1)一家離散の深刻な家族被害(2)未成年(当時19歳)の時にも50万円の絵画など献金をしているなど未成年期からの金銭搾取・財産被害(3)合同結婚式による人生破壊――など教会から被害を受けたと訴えました。

 韓国の教会では結婚目的の伝道が行われており、信仰のない見ず知らずの韓国人男性と1度目の結婚をさせられたと語り、その際、「日本人はメシアの国である韓国の女性たちを、従軍慰安婦として蹂躙(じゅうりん)した過去があるから、どんな相手が与えられても感謝しなければならない」とされ、夫が「教育だ」と言っては暴力を振るっていたが耐えていたと話しました。しかし暴力がおさまることはなく、子どもに矛先が向かう懸念から、教会ではいけないこととされている「離婚」を選択したと語りました。

 いわゆるマインドコントロール下にあった冠木さんは、「夫婦でなければ天国にいけない」と言われていたため、再祝福(再婚)をしたものの2度目の結婚相手の韓国人は、アルコール中毒で、ほとんど仕事をしない人で、結婚目的で統一教会に入信した人だったと説明。後に、相手の「年齢」「学歴」「職業」等が全て詐称されていたことが判明したと話しました。

 非常に貧乏で劣悪な環境の中で生活をした経験もあり、日本に帰国したくてもお金がなく、結婚生活の10年間で、自費で日本に帰れたのは日本に完全に帰国した時を含めて2回だけ。実の父が亡くなった時も、日本に帰ることは叶わず「今ではそれが一番の心残り」だと説明しました。

 冠木さんは、子どもを連れて日本に避難したのが、ハーグ条約(国境を越えた子どもの不法な連れ去りなどの紛争対応のための国際的な枠組みを定めた条約)締結前だったが、現在ではハーグ条約が大きな壁となり帰国することを断念する方たちもいると指摘。また、宗教2世の場合、日本に帰ろうとしても、親や親戚がまだ教会に所属していることが多く、日本に滞在先がない場合や、親が既に亡くなっているなど帰る場所がなく帰国を断念している方がいると説明しました。

 こうしたことから、(1)帰国後の安定的な生活を送るための就業サポート(2)教会の指示により韓国籍に変えてしまった方の日本帰化申請(3)日本語のできない子どもたちの支援――などを求めました。

 さらに、一人で抱え込むケースがあることから宗教的虐待や夫による虐待を受けている外国在住の被害者が相談できる場所の設置を求めました。現在外務省では、相談窓口を在外公館に設置しているものの周知が行き届いていなかったり、9月に行われた国の相談窓口は、日本国内のフリーダイヤルであり、外国からは通じず意見を寄せることができなかったと言う声もあったと指摘しました。

 冠木さんは、オウム真理教により家族とともに命を奪われた坂本堤弁護士が、教団幹部から「信教の自由がある」と言われ、「人を不幸にする自由は許されない」と述べたとされる話を引用し、「被害に遭った方はもちろんのこと、これから被害に遭うかもしれない方々を守るためにも、統一教会の解散命令は必要なものだ」と指摘しました。また、高額献金被害救済のため早期の新法成立を求め、本人がマインドコントロール下にあっても、被害者家族が「取消権」を請求することができることは重要だと話しました。

 さまざまな方面からの支援が必要であるため、日本政府に、内閣に統一教会問題担当大臣を置いたり、もしくはタスクフォース等、省庁を横断した組織作りなどを行い「、被害者救済がスムーズに行われるようにしていただきたい」と求めました。

■省庁との意見交換

 省庁との意見交換では、(1)所轄庁である文部科学大臣として、旧統一教会に対し報告徴収・質問権を行使するため、できるだけ速やかに、宗教法人審議会に諮問することなどの永岡文科大臣の談話(2)教会の問題相談の窓口として設置された政府の合同電話相談窓口を引き継ぎ、同日運用が始まった日本司法支援センター(法テラス)の「霊感商法等対応ダイヤル」――などについて省庁から情報が共有されました。