衆院予算委員会で11月25日、2022年度補正予算案に関する基本的質疑で立憲民主党の4番手として質問に立った石川香織議員は、農業の課題を中心に(1)肥料高騰対策(2)酪農(3)カレントアクセス(4)余剰乳製品の食糧支援(5)砂糖(6)運送・物流業界の「2024年問題」――について取り上げ、政府の見解をただしました。

 石川議員は、「物価が高いことを日常生活のさまざまな場面で実感する。日々スーパーで買い物をするが、何が食べたいかよりも、何が安いか、値引き商品をもとに献立を組み立てることを無意識にやるような日常生活だ」と述べ、しかしながら食料品が値上がりしても、供給側の生産者も物価高の影響を受けて収入が上っているわけではないと訴えました。

 生産者側の課題としてまず、788億円がすでに投じられている政府の肥料価格高騰対策事業について、例年20万円で買っていた飼料が1.5倍に上昇して30万円で購入した場合を例に、化学肥料の2割低減に取り組む農業者に対して肥料コスト上昇分の7割を支援するとあるものの、実際に支援金算定式に当てはめると4万3400円と、7割補てんにはならないと指摘。「あまりにも誇大広告過ぎる」と述べました。

 石川議員は、家畜のえさについても前年度から3割も上がっているものが多いなか、前の年よりも15%高い時に発動する仕組みのため、国や生産者、メーカーなどが積み上げた基金が発動しないと指摘。「ダメージが長期化するときにマッチした仕組みかどうか、しっかりチェックしていく必要がある」と提起しました。

 酪農の現場に関しては、牛乳がだぶつき「生産抑制」だったものが「減産」という表現を使う深刻な状況で、資源の少ない日本で飲む牛乳は自給率100%を誇っていたが、今回の補正予算では生産者が自ら牛を選んで食肉加工所に出すと奨励金を出す政策が上がっていると問題視。「生産基盤を強める政策が中心にあったはずが、生産基盤を弱体化することに予算をつけることに現場からは『二度と生産現場は立ち直れない』という声が上がっている」と述べ、野村農林水産大臣に政策の評価を尋ねました。

 野村農水大臣は、酪農経営改善緊急支援事業について「需給ギャップの解消と、乳製品、特に脱脂粉乳の在庫が積み上っているので長期保管、隔離することを考えている」と答弁。石川議員は「需給ギャップの解消というのは、牛を手放す、処分するということ。現場にとってどれだけ負担なことか想像していただきたい」と訴えました。

 その上で、「自民党がこれまで進めてきた政策の方向性そのものが間違えだったのではないか。安倍政権以来、農業現場を国内外の過度な競争にさらし、効率重視でとにかく増産、大規模一辺倒の政策を推し進めてきた。政策の方向性に沿って自ら多額の投資をしてきた酪農家たちは、今回減産となり数十年単位の償還の見通しが立たないまま、完全に梯子を外されてしまった。方向性が間違いだったという証明ではないか」と指摘。「立憲民主党は、規模経営だけでなく、家族経営も大切にするべきだと訴えてきた。これからは現状維持や、規模を縮小してでも経営を継続することこそが価値であり、これを政策にどう反映させていくか、評価していくかが必要。その意味で戸別所得補償制度が求められていると思っている」と力を込めしました。

 石川議員は、国内酪農家には減産を強いる一方、国内の消費量に対して輸入量が5%以上あるものを維持していく、カレントアクセスにより毎年乳製品を輸入している現状について、「義務ではないものを輸入し続けるのはおかしいのではないか」と問題視。これに対し岸田総理は、「国内需給に悪影響を与えないよう、国家貿易により需給動向を踏まえながら脱脂粉乳やバター等を輸入していると承知している。制度を活用しながら適切に対応していくことが重要」などと答えるにとどまりました。

 石川議員は今のように生産が過剰になったことをきっかけに、当時の小泉純一郎総理、中川昭一農水大臣当が2006年、ウズベキスタンの障害児施設に100トン脱脂粉乳を送ったことにを評価。「前例にとらわれない政治決断だった。農水大臣の熱意と総理大臣の決断力で突破できると思う」と検討を求めました。