岡田克也幹事長は1月11日、石川県金沢市内で「教育において日本に足りていないもの」をテーマに学生らと意見交換。学生寮や夜間中学、ヤングケアラー、フリースクールといった課題について当事者の声を受け止め、学びたい若者があきらめることがないよう引き続き取り組んでいく決意を述べました。司会進行は、喜成清恵金沢市議が務めました。

 地元・金沢大学の泉学寮、白梅寮の両学生寮は、2019年に老朽化などを理由に大学が廃寮を通告、今年度末で廃止することが決定。寮生らは廃止撤回を求める署名活動を大学構内外で展開、寮生のほか、大学職員や学生、超党派の市県議らも参加し廃寮反対の活動をしています。

 冒頭、2021年の衆院選挙で石川1区から当時27歳で挑戦した、石川県連の荒井淳志青年局長が「政治にチャレンジする原点の1つが教育の問題だった。生まれた家や地域に左右されない社会を作りたい」とあいさつ。「現場の問題、忌憚のない声を聞かせてほしい。有意義な意見交換の場にしていきたい」と呼びかけました。

 金沢大学の卒業生で、泉学寮出身でもある岡野定隆志県議は、「30年前、私が入学した時の授業料から今は20万円弱上がっているが、可処分所得は400万円ちょっとでほぼ上がっていない。高等教育が贅沢なものになってしまったと身につまされる思いだ」と発言。アパート家賃が上がる中、コロナ禍でアルバイトもできず一段と厳しい状況に置かれている学生の声を聞くことなく、一方的に廃寮を進めていることに強い憤りを感じていると述べました。

 次に「当事者の願い」として、学生寮、夜間中学、ヤングケアラー、フリースクールの課題について参加者がそれぞれ発言。金沢大学の学生で「石川に夜間中学を作る会」のメンバーの木下さんは、夜間中学について経済的支援や、広く周知してもらえるよう後押しを求めるとともに、「本当に若者の声、ニーズを聞いているのか疑問。不登校は本当にダメなのか。もっといろいろな学び方があっていいのではないか」と提起。多くの人の声を聞いてほしいと述べました。

 夜間中学やフリースクール、発達障害の子どもたちのための放課後等デイサービスなど広く携わっている南手さんは、フリースクールに通う子どもを持つ家庭への財政支援や、通信制高校に対する理解の促進の必要性に言及。「『もっと個性を認め合う社会に』と思うが、四半世紀こういうことをやっていると国や行政にそんなに期待していない。民間でできることをやってきた。ただ、国を挙げてみんなでそういう方向に向かっていけると世の中がもっと良くなるかなと思っている」と期待を寄せました。

 親のケアラーを経験したという、石川工業高等専門学校生の北村さんは、ヤングケアラー支援に関し提案。教員は実態を把握しても個人情報保護の観点からそれを外部に伝えるのが難しい状況にあるとして、学校現場から教育委員会への報告や、当該家庭への介入を可能にする法整備、また支援が必要なヤングケアラーの定義付けが要るとも述べました。

 金沢大学の学生で、泉学寮廃寮反対運動代表者の冨樫さんは、「本来国立大学における学生寮は、教育の機会均等の原則に則り経済的に困窮している学生たちが安心して学校に通うことができるために必要な施設だが、全国的に減少の傾向にある。大学側は廃寮の理由として、老朽化や採算性の問題に加え、民業への圧迫、周辺の不動産業への配慮を挙げている。学生よりも民間に配慮していることを如実に表すもので、教育の機会を保障していく体制を築くためには国としてお金を出してもらいたい。大学側の対応は冷たく、政治の力をお借りしたい。教育行政を含め、学生の声をもっと声を聞いてもらいたい」などと訴えました。

 4人の発言を受けてのフリートークでは、シングルマザーの小松さんが「叶えたい夢を娘は持っている。応援できる世の中であってほしい」と切望、金沢大学の教授は、廃寮が教授会にも諮らず大学当局により強引に進められたと話し、勉強の時間を確保するためにも、自治を育む意味でも学生寮の意義を強調、金沢大学白梅寮卒寮生で署名活動に参加している高木さんは「なぜ教育にお金をかけるべきか。それは日本のため。日本の未来のことを考えたら人材を育てるのが一番」だと述べました。

 ヤングケアラーの問題について岡田幹事長は、「介護保険制度のヘルパーさんを利用できる部分もあるとは思うが、社会的に関心を持たれてルートができて、子どもたちが声を上げなくても周りが気づける仕組みが必要なのかなと思った」と発言。挙げられたさまざまな課題を受け、「基本は、学生たちが学べる奨学金制度。学びたい若者があきらめることがないように国としてどうやって仕組みを整えていくか。予算をどう配分していくか」「(岸田総理の『子ども予算の将来的な倍増』発言に)倍にするのは大変なこと。現実的に限られた財源の中で子ども・若者支援策としてどこにより優先度を置いて対応していくかの議論をしっかりして国民的な合意を取り付けていかないといけない」と述べました。

 喜成市議は、「今日お話ししてもらった夜間中学、フリースクール、ヤングケアラーといった課題は、私が子ども食堂を運営した中で出会ったお子さんが、一人ですべて抱えていたもの。複数の問題を抱えていても社会がつながっていれば困難を一気に解決することもできるかもしれない。一つひとつの問題を切り分けというより、総合的に考えられる社会にしていきたい」「私自身、議員に興味はなかったけれどいろいろな民間的な動きをする中、いろいろな思いを聞く中、『これ、届ける人がおらんやないか』というのがきっかけで市議会議員になった。予算の中で『できない』と言われたとしても、皆さんからお聞きする言葉を集めて届けるつなぎ役をこれからも立憲民主党としてやっていきたい」などと述べました。