参院予算委員会で3月9日、「外交・安全保障」をテーマに2023年度(令和5年度)総予算に関する公聴会が開かれました。石垣のりこ議員は、(1)防衛費倍増が米中対立に与える影響(2)防衛費増額の議論の前提となる情報開示の在り方(3)現下の経済状況での防衛政策の捉え方――等について、公述人の東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人さん、防衛ジャーナリストの半田茂さんにそれぞれ見解をただしました。

 石垣議員は、日本が抑止力の向上という大義を持って防衛費を倍増することが、ある意味米中対立に対して火に油を注ぐようなことになりうるとは考えられないかと提起。鈴木公述人は、「中国から見ると、日本だけが増やしているだけでなく米国の国防費の増額、中国的に対して攻撃的な、いろいろな形で圧力をかけていくことが問題。防衛費の増額は今まで少なかったものが増えた、中国の水準にも満たないというレベルの増え方に見えるのではないか」と述べました。

 石垣議員はまた、2023年度からの5年間で総額43兆円、27年度にはGDP比で2%程度に増額するにあたり、それが適切か否かを判断する、議論をする前提となる情報の開示が不足していると指摘。予算審議に必要な情報開示のラインを尋ねました。

 鈴木口述人は、「情報開示は国会で審議する上で重要なこと」とした上で、「同時に防衛に関することは特定情報、機密情報にもなる。どこまで開示できるかは具体的な技術、納入先など含めて公開できるものとできないものがある。判断する立場ではないが、今出ている情報でも十分議論できるのではないかと理解している」と発言。半田公述人は、安倍政権下での平和安全法制の議論と比較し、「例えば反撃能力の行使は着手で可能だという政府見解があるが、何が着手かについて全く触れられていない」と、今国会では運用面における情報開示がまったくなされていないと問題視。「安全保障関連3文書に書かれていない以上、この国会で開示を求める以外に国民が理解と協力を得る方法はないのに、そこに触れられていないのは極めて残念」「費用対効果についても、どのような状況が想定されて必要なのかという説明がなく、今年度比1.4兆円も増額する理由が見えない。国民の理解と協力を得る機会を自ら放棄している」などと述べました。

 石垣議員の「今の経済状況の中で今の防衛政策をどう捉えるべきか」との質問には、半田公述人は「防衛費は積み上げ方式でなければいけない。掴み金のような、『枠を与えるからすきにしなさい』ということでは到底国民の協力と理解は得られない」とあらためて指摘しました。