立憲民主党は3月9日、国会内で「放送法」国対ヒアリングを開催しました。総務省が7日公表した放送法を巡る行政文書について国会で議論されるなか、第2回は、メディア研究者、元上智大学新聞学科教授、早稲田大学非常勤講師の田島泰彦さんから放送における公平原則と政治的公平の解釈についてヒアリングしました。

 田島さんは放送における公平原則は、(1)放送の自由を確保する観点から見た時に極めて重要な理念であり仕組み(2)放送の受け手としての視聴者のもの――であると説明しました。(1)については、「憲法が保障する表現の自由、それと憲法が予見する表現の自由、放送の自由に深く関わる形で公平原則が今もある」と述べ、多様な言論を公平の原則を通して放送することが非常に大事であると話しました。(2)については、市民社会にとって多様な番組を提供することであり、一方で「いろいろな条件とルールをきめ細かく見ていくなかで公平原則を作り上げないといけない」と述べました。公平原則は権力や政府がメディアをコントロールするものではなく、「むしろ距離を置いてこういうルールを形成してきた」と話しました。

 2015年5月に高市総務大臣(当時)が、政治的公平の解釈につき、放送事業者の「番組全体を見て判断する」としてきた従来の方法に、1つの番組だけでも判断できる旨の解釈を加えたこと、さらに2016年2月に高市総務大臣が放送局が政治的公平を欠くと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性を表明したことについて、どのような大きな問題が生じているか話しました。政治的公平の解釈を極端な場合は1つの番組だけでも判断できるとしたことは、「1つの番組の中で生き生きとした番組制作が可能か」「番組に携わる人が萎縮する効果を持たざるを得ない」と問題を指摘しました。また、テレビの報道で大事なことは権力や政府をチェックする役割であることに触れ、「1つの番組で公平性を判断するとなると、権力をチェックする役割がどこまでできるか疑わしい」と述べました。磯崎元総理補佐官が、総務省に対して政府解釈に補充的説明を提案したとされる事案について、田島さんは「1つの番組でも(判断が)可能なのは補充的説明をはるかに超えている。従来の解釈の枠をはみ出して、そういう意味では解釈変更そのものではないかというのが私の理解だ」と述べました。

 また、「電波停止をする時に番組全体で放送法違反と判断するのは難しく時間がかかる。1つの番組でも放送法違反、制裁措置を加えることになると、はるかに表現の自由の侵害余地を大きくする」と指摘。欧米では政府から距離を置いた独立機関が公平原則を判断して制裁を科しているが、日本では政府・総務省が直接管理しているため、「政治的公平と電波停止を連動して考えるのは非常に問題だ」と述べました。