衆院本会議で3月30日、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法案)の趣旨説明・質疑が行われ、立憲民主・無所属を代表してネクスト経済産業大臣の田嶋要衆院議員が質疑に立ちました。

 本法案は、60年を超える原子力発電所の運転延長を可能とする法案など、5つの法改正案を束ねたものです。田嶋議員は(1)電気料金の値上げ(2)化石資源値上がりの局面での再エネ賦課金の引き下げが起きる仕組みと今後の見通し(3)原子力規制委員会の独立性および電気事業法の改正(4)原発回帰・原発の新創設(5)再エネの社会実装の加速――等について、政府の見解をただしました。

 「政府の危機感のなさに強い危機感を覚えながら質問する」と切り出した田嶋議員は冒頭、大手電力7社が申請している家庭向けの電気料金の値上げについて、カルテル行為や新電力の顧客情報の不正閲覧など違法行為が続発しているなかで国民の理解が得られるはずがないと指摘。「原因究明や再発防止策、また罰則強化のないままの値上げは認めない、ということでよいか」と岸田総理、河野消費者担当大臣それぞれに尋ねました。

 岸田総理は、「国民の理解を得るため真に必要な費用のみ織り込まれているか、経営効率化が徹底されているかなど期限ありきではなく厳正に審査していく」、河野大臣は「消費者への信頼が損なわれている。事案が料金へ与える影響の検証、これら事案の発生を許してきた体制・仕組みをどう改めていくか経済産業省で検討してもらいたいと考えている。検討を踏まえ協議に対応していく」とそれぞれ答えました。

 田嶋議員は、本法案の目的であり、既存の原発を60年以上動かすことは、原子力規制委員会の石渡委員が反対意見で的確に指摘された通り、安全審査を丁寧に行えば行うほど古い原発を動かせることになってしまうと指摘。「炉規法の改正の点に話をすり替えず、この電気事業法改正の部分については、紛れもなく安全規制を緩める方向への改正(改悪)だと正直にお認めください」と迫りました。

 岸田総理は、「原子力規制委員会が令和2年(2020年)、原子力の利用政策は(同委で)意見を述べる事柄ではないとの決定したことを受け、今般の制度改正では、電気事業法と原子炉等規制法の2つに再整理するもの。原発事故の反省の趣旨を徹底するもの。安全規制を緩める方向に改悪するとの指摘は当たらない」と反論。「原子力規制委員会が厳格な安全審査を行い、規制基準への適合性が確認できなければ運転は一切認められない大前提に変わりはない」と述べました。

 田嶋議員は、再エネの「失われた10年」として、世界に大きく遅れて2012年の民主党政権下でスタートした再エネ買取制度は、その後の自民党政権で失速したと指摘。国の総力を挙げて再エネの社会実装を加速させるべきではないかと提起し、「住宅の断熱強化、そして道路脇や線路脇のソーラー発電や営農型発電など、他省庁にまたがる分野にも政府が動かないか。全国の自治体を本気にさせる支援策を導入し、それぞれの地域で地産地消のエネルギーを創り出すためのゾーニングを行い、地域の共同組合や、小規模事業者、個人もステークホルダーとして格段に増やすなど、ドイツやデンマークなどの先進事例に学びながら推進すべきではないか。カギは地域社会との共生だ」と主張しました。

 田嶋議員は「私たち立憲民主党は、雇用の公正な移行をしっかり果たしながら、2050年のカーボンニュートラルという国際公約を達成し、化石燃料にも原発にも依存しない分散型自然エネルギー社会を創り上げていく。また、食料と並んで、暮らしや産業、そしてわが国の安全保障に不可欠のエネルギーの自給率を高め、わが国の産業競争力を強化し、新たな経済成長を目指し、そのための官民の取り組みを最大限後押ししていく」と表明し、質問を締めくくりました。