衆院本会議で4月27日、「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案」に対する趣旨説明が行われ、立憲民主党・無所属を代表して緑川貴士議員が(1)安全性の担保(2)ChatGPTなどの生成AI(3)デジタル民主主義――などについて質問しました。
本法案は、デジタルを活用したより良いサービスを享受できる社会を実現するために経済社会の仕組みをデジタル時代に合ったものに作り直していく必要があるとの観点から、2022年6月にデジタル臨時行政調査会が決定した「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」を踏まえ、デジタル技術の進展を踏まえた効果的な活用のための規制の見直しを推進するため、(1)デジタル社会形成基本法(2)デジタル手続法(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律)(3)アナログ規制を定める個別法の改正――を行うものです。(1)デジタル技術の進展等を踏まえた自律的・継続的な規制の見直しの推進(2)記録媒体による申請等のオンライン化(3)書面掲示規制の見直し――を本法案では柱としています。
緑川議員は、政府が目視による確認や対面手続き、書面の掲示、人の常駐などを「アナログ規制」と位置づけて、法律や政省令、通達など合わせて9669項目の国レベルの規制を見直し、法改正が必要なものを本改正案に盛り込んでいることを前提に、「点検・検査などのデジタル化に関して、省力化を急ぐと安全性を損ねる懸念もあり、効率化と安全性をどう両立させるかが課題」と指摘。安全性の確保をどう担保するのかただしました。
河野デジタル大臣は、「人が点検などを行う場合と同等の安全性が確保できるよう必要に応じて技術検証を実施する」「規制の見直しに活用可能な技術を整理したテクノロジーマップを整備更新することで十分な安全性の確保に努める」と答弁しました。
安全性の担保に関連し緑川議員は、国土交通省近畿地方整備局が、管内に設置した河川の監視カメラが不正アクセスの被害を受けた可能性が高いとして今年1月から運用を休止、全国でその対策を進めていることに言及。また、保育所の運営状況をチェックする「実地検査」を国が自治体に義務付け、これもアナログ規制の見直し対象に含まれていることから、昨今のバスへの園児の置き去りや保育士による虐待など行政の施設に対する指導監督の責任と検査の重要性は増し、現場でなければ分からないことも多いとして、「検査の緩和という大人の都合が優先され、子どもを守る視点が欠けている」との懸念を示しました。
ChatGPTなどの生成AIについて緑川議員は、業務効率化に向けて利用を検討する省庁がある一方、情報の取り扱いなどをめぐる課題も指摘されているとして、今後どのような方向で検討していくのかただしました。
また、生成AIには、著作権の侵害や個人・企業情報の漏えい、人権侵害などのリスクがあることも懸念されヨーロッパでは規制の動きが出ていることから、一定のルール作りが不可避だと指摘。政府として、どのようなルール作りを目指していくのかただしました。
松本総務大臣は、開発の振興、利活用の推進、適切な規制の3つの観点のいずれもが重要との認識を示し、政府での活用では、「プラス面だけではなく、使い方によってはリスクも生じることを念頭に検討」してくと述べました。国際ルールの方向性についても、こうした考え方を基本とし、G7デジタル・技術大臣会合では、責任あるAIとAIガバナンスの推進を議題とすることとしており、各国・地域の意見を聞き議長国として各国との議論を主導していくと述べました。
また、「Decidim」や「Change.org」といったデジタルを活用した民意形成の新しい仕組みが生まれているとして、国民が行政や立法の意思決定プロセスに直接参加できる「シビックテック」により課題解決を進めていくことについて河野大臣の見解をただしました。
河野大臣は、「新しい政策や行政サービスを作るにあたり国民の声をよく聞き、常に改善していくことが重要」との認識を示した上で、「その手段としてデジタル技術は極めて有用」だと述べました。一部の地方公共団体では、シビックテックと連携した取り組みを進めていることも承知しており、デジタル庁でもアイデアボックスによる意見募集と議論の場の提供などをしていることから、「引き続き行政サービスや政策に国民の声を直接役立てる取り組みを進めていく」と述べました。