衆院予算委員会で5月24日、「G7広島サミットなど内外の諸課題」に関する集中審議が行われ、泉健太代表が岸田総理に対し質疑に立ちました。

 泉代表は冒頭、前日に発表された毎月勤労統計を踏まえ「実質賃金が低下したのは12か月連続」だと指摘。ホスト国として苦心した岸田総理に慰労を伝えた上で、「サミット熱から頭を切り替えていただい」として、「政治の基礎というのは国民の生活が第一だ」と強調しました。

■広島サミット

 「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」について泉代表は、「核抑止力というのが大前提」になっており、「被爆者の皆さまから失望の声が上がっている」と指摘。その上で、「広島ビジョン」に核兵器禁止条約の記載がなかったことについて、締約国会議に「せめてオブザーバー参加すべきだ」と提案しました。

■中国によるプルトニウム増産体制

 核兵器不拡散条約(NPT)下で中国がプルトニウムを増産し、国際原子力機関(IAEA)に保有量を報告していないことについて泉代表は、岸田総理に対し「主張すべきことは主張する」と言うのであれば、「日中首脳会談」で報告の再開を主張すべきと提案しました。岸田総理は中国と考え方を共有すべく「働きかけを行いたいと思います」と答弁しました。

■防衛増税

 「イージス艦」が自衛隊が努力した結果、「現行の8隻体制」になったが、10年後には12隻体制になることについて泉代表は、国会で議論されたこともなく「国民に対して説明もされていない」と指摘。結局は、防衛費を「5年間で43兆円」とすることありきで、「今まで一生懸命、熟慮に熟慮を重ねて組んできた防衛予算と大きく異なっている」と強調。その上で、「そのうち1兆円の防衛増税をやらなくとも、わが国の防衛は機能する」と岸田総理に迫りました。

 さらに泉代表は、決算剰余金の10年間の推移を示しながら、「コロナ対策」という異常値を含めて平均を出し、防衛財源として確保することの問題点も指摘しました。

■政府の言う「歳出改革」は「マジックワード」

 泉代表は岸田総理が「財源確保」のために言う「歳出改革」という言葉は「マジックワード」と断じ、「補助金を削った」「交付金を削った」という話はなく、「中身がない」と批判しました。

 3兆円の「異次元の少子化対策」の財源として「歳出改革で2兆円」としていることについても疑問視するとともに、残り1兆円を医療保険制度を利用し上乗せ徴収することについても問題視。社会保険料を上げることは、「会社側からすれば賃上げを止めかねない、経費節減のために正社員の採用が抑制されかねない」「個人においても現役世代の負担が上がる」と指摘し、「ステルス増税だ」との声もあると岸田総理に迫りました。

 さらに、高校生に児童手当を1万円支給するために扶養控除を見直すことについても、家計が「マイナスになる家庭も出てくる」と指摘し、「国全体の予算のバランスは防衛費だけが高まっている」「国の活力を失う」と追及。「武器が増えても自衛隊員が集まらない時代」であるとして、実質賃金の増加や生産性向上のためには「人に対して力を入れていかなければならない」と述べ、「教育やリスキリングのための投資を増やさなければならない」と訴えました。

 予算委員会での岸田総理との質疑後、泉代表は記者団から取材に応じ、「核兵器禁止条約について、核保有国が禁止条約に参加していないからと言って、日本政府までもが同じ動きを取る理由はない」「防衛増税については、私たちは防衛増税は必要が無いという立場だ。加えて現在の防衛費確保の在り方は極めていい加減なものであるということを、国民の皆さんに伝えられたと思う」「少子化対策、子育て支援については、防衛費ばかりに予算を使う国ではなく、教育費などにも予算をバランスよく配分していくそういう国であるべきだ」などと感想を述べた上で、「岸田総理はまだサミットに頭が向いているようであり、実のある答弁は少なかった」と指摘しました。