参院本会議で6月5日、「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案」について趣旨説明・質疑が行われ、岸真紀子議員が質疑に立ちました。

 冒頭、岸議員は、6月2日の参院本会議で成立した「マイナンバー法等改正案」について、参院で審議が始まった4月28日の本会議で質問した際、当時マイナンバーカードによるコンビニ交付での誤発行といったトラブルはあったものの、河野大臣が記者会見で問題ないといった発言などにより、問題が矮小化されていたことに気づくことができなかったと、自責の念を表明。マイナ保険証については、他人が紐づけられている事象が数多く発覚し、個人情報漏洩と命に係わる重大な問題であるにもかかわらず、法案の取り下げや修正もせず2024年秋の健康保険証廃止を含む法改正を推し進めたとして、国民の不安が払しょくされない中での一方的な押し付けに断固抗議するとともに、総点検を終えるまでマイナ保険証の運用を中止することと、健康保険証の廃止時期の見送りを強く求めました。

 本法案は、デジタルを活用したより良いサービスを享受できる社会を実現するために経済社会の仕組みをデジタル時代に合ったものに作り直していく必要があるとの観点から、2022年6月にデジタル臨時行政調査会が決定した「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」を踏まえ、デジタル技術の進展を踏まえた効果的な活用のための規制の見直しを推進するため、(1)デジタル社会形成基本法(2)デジタル手続法(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律)(3)アナログ規制を定める個別法の改正――を行うものです。(1)デジタル技術の進展等を踏まえた自律的・継続的な規制の見直しの推進(2)記録媒体による申請等のオンライン化(3)書面掲示規制の見直し――を本法案では柱としています。

 インターネット上の情報が信頼できるものか否かが分かりにくくなっていることから、どのように信頼性を向上させるのか質問。河野デジタル大臣は、総務省をはじめとする関係省庁で取り組みが行われており、デジタル庁でも今年度改定予定の重点計画に安全安心で便利なデジタル社会を実現するための取り組みを位置づけ、効果的な広報活動や情報発信に取り組むことを検討していると述べました。

 デジタル化により人手不足の解消や新しい産業の創出が期待される一方、研修機会があったとしても全員がデジタル人材となることは難しく、労働移動が公正なルールに基づいて行われるのかに懸念があると指摘。公正な労働移動に関する政府の見解を求めました。河野大臣は、リスクリングの強化とデジタル化による新産業の創出による雇用の拡大を目指すと述べ、希望者がスキルアップできるための研修等の機会や就職支援が十分に設けられることが重要との考えを示しました。

 地方自治体のデジタル化に伴うサイバーセキュリティ対策について松本総務大臣は、地方自治体のセキュリティポリシーガイドラインの改訂を行っていること、人材育成のため自治体職員を対象に実践的サイバー防御演習の実施、今年度からデジタル人材に要する経費の特別交付税措置を講じたことなどを挙げるとともに、自治体のシステム標準化を進めており連携を深めていくと述べました。

 国のシステムでインシデントが起きた時の責任の所在について河野大臣は、「デジタル庁を含め、情報システムを運用する各行政機関において責任を持って対応する」と述べ、「政府統一基準を作成するNISC(内閣サイバーセキュリティセンター)を中心に、デジタル庁を含めた情報システムを運用する行政機関が連携して対応する」として、明確な答弁はありませんでした。