衆院憲法審査会が6月8日に開かれ、立憲民主党の奥野総一郎、城井崇、吉田はるみの3議員が国民投票法改正について見解を表明しました。

奥野総一郎衆院議員

 奥野議員は、2021年に成立した改正国民投票法が衆院で審議された際、修正案の提出者として「CMの扇情的な影響力や、インターネット広告も含めCMに投じる資金の多寡が投票結果に与える影響等を踏まえると、CMや運動資金などについて一定の規制が設けられなければ、公正公平な国民投票の実施は期待できない」との発言に触れ、一定の結論を得るべきと述べました。

 運動資金規制に関して、「CMへの支出も抑制されることになり、間接的にCM規制にもなる。また外国政府の干渉も防ぐことができる。運動資金規制こそ最優先に導入すべき」と述べ、運動資金規制について集中討議及び参考人質疑を求めました。

 CM規制に関して、民放連が量的な自主規制をできないと明言したことについて、「国民投票法第104条に触れる可能性がある」と指摘しました。国民投票法第104条は、放送事業者が国民投票に関する放送について、放送番組の政治的公平性を定めている放送法第4条第1項の趣旨に留意することを定めているため、「(憲法改正案の)発議後全ての期間において放送の量的な公平性が求められていると解することができる」からだと述べました。

 民放連が自主規制ができないのであれば、「放送の政治的な公平性を維持するため、われわれの案にあるように国民投票運動の全ての期間について『賛否勧誘のためのCM』を禁止し、また、『意見表明CM』についても政党は全期間禁止をして、全て『国民投票広報協議会』の広報放送に委ねるべきではないか」と提案しました。

城井崇議員 

 城井議員は、国民投票におけるインターネット広告規制について、諸外国の実例を紹介しつつ、「我が国の国民投票法においても導入する必要がある」と強調しました。規制の内容は国によって幅はあるものの、概ね「透明性表示」「アーカイブ設置」「支出規制」「外国人等規制」「偽情報等拡散規制」「ターゲティング等規制」「商業広告禁止」といったものがあると説明しました。留意点として、「各国では、国民投票と選挙で一体の規制となっている」と言及しました。

 透明性の確保を目的とした表示義務はネット広告規制の手段として一般的なものだとし、「ネット広告の適正利用を確保するために非常に効果的な規制手段であり、我が国においても導入すべき」と提案しました。公平性の確保を目的とする支出規制は、「支出金額の上限を設定し、報告等の義務を課すという手法は、合理的なものと評価されている」「我が国においても、是非、国民投票法に支出規制を盛り込むべき」と提案しました。

 さらにいわゆるフェイクニュース対策である偽情報・誤情報などの拡散規制は、「言論の自由と密接に関わるものであり、単に公権力が直接的に規制すればよいというものではない。しかし、何ら手立てを講ずることなくそのまま放置してよい問題でないことは明らかだ」と述べ、集中的な議論を求めました。商業広告規制は、外国の例を踏まえると、「政党等によるネット有料広告を禁止するという立憲民主党の提案は、ネット広告規制の手法として合理的なもの」と述べました。衆憲審配付資料_諸外国の国民投票運動におけるオンライン広告規制.pdf

吉田はるみ議員 

 吉田議員は、国民投票の意義について「国民が分かりやすく、賛否を表明するもの」と述べました。ところが、国会法第68条の3項で「内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」と規定されていることについて、事項が複数になると、論点が多すぎて判断が難しくなると指摘しました。例えば、憲法改正案に9条とそれ以外の複数の項目が含まれている場合、9条の改憲案の広告に注目が集中し、それ以外の項目に目が向かないことに懸念を示しました。

 また、国民投票法によると、関連する事項ごとに1枚ずつ、投票用紙に賛成か反対を表明していくため、事項が複数になれば、その都度、賛否表明の手続きを行うことから、混乱する人も多く発生するのではないかと指摘しました。「1回の国民投票の機会に賛否を判断する事項の数の制限について論点を整理すべき」と提案しました。

 前述の「内容において関連する事項」に関して、1度の投票しか許されないことを問題視しました。例えば、緊急事態条項に関する憲法改正案が議員任期延長や緊急政令、自由権の制限など、改正事項をたくさん含んでいても、国民投票ではその改正案全体への賛否を問われることから、「国民の意思が十分に反映されなくなり極めて問題だ。国会法68条の3の『内容において関連する事項』が過度に広がらないよう、その明確な定義を設けるべき」と提案しました。