参院予算委員会で11月27日、今年度補正予算案の総括質疑が始まり、「立憲民主・社民」の1番手として辻元清美議員、2番手として小沼巧議員が質問に立ちました。

辻󠄀元清美議員

 辻元議員は、(1)憲法改正(2)防衛費倍増とトマホーク(3)大阪・関西万博(4)ライドシェア――について取り上げ、政府の見解をただしました。 

 辻元議員は冒頭、「緊急性を要する問題」として、イスラエル政府とイスラム組織ハマスとの4日間にわたるパレスチナ自治区ガザでの戦闘休止が本日までであることに言及。「各国がこの機会に休止から恒久的な休戦に向けて外交努力している。今日はタイムリミット。総理として行動していただきたい」と要請しました。

 その上で、岸田総理が憲法改正に積極的な姿勢である一方で、これまで国会での憲法論議には1回も委員として参加してこなかったことにも触れ、「違和感がある」と懸念を表明。「総裁選の再選のために改憲に熱心な右派をつなぎとめたいからではないか」と述べました。岸田総理が必要な課題として挙げる教育の無償化や災害緊急事態への対応等は憲法を変えなくても法律と予算でできるとも指摘し、「法律でできることをやってから言ってください。『議会のことは議会で決める』でいいですね」と念を押しました。

 防衛増税をめぐっては、中期防衛力整備計画で予算を計上したときと比べると物価高騰や円安等により防衛装備品の価格が上昇し、43兆円をはるかに超えていると問題視。「閣議決定した数字であり、この範囲内で防衛力を強化していく方針に変わりはない。為替の動向も見ながら一層の効率化合理化を徹底しながら具体化していく」などと苦しい答弁を繰り返す岸田総理に、「無駄があったということを白状したことになる」「購入する装備品の数を減らすのか大増税しかない」と迫りました。

 大阪・関西万博については、会場建設費の増額に加え、日本政府館や、発展途上国の出展支援、警備費、全国の機運醸成等の予算の合計で839億円プラス増額になる可能性があること、アクションプラン93事業の予算についても、ゴミ処理場として埋め立てられた夢洲を会場にしたことからインフラ整備に費用が膨らんでいることを確認。大阪に建設関係の業務が集中して公共工事が止まったり、災害対策が進められず、全国的な恩恵の享受どころか地方にとっては逆効果になっていると述べました。

 関西2府4県の名目域内総生産の合計が全国に占める割合にも言及、「1970年の大阪万博以後、関西は全国シェアが落ちていった。過去のノスタルジーにすがりつくのは持続的な国の発展を阻害する。政府と維新の知事や市長、万博協会の見通しの詰めの甘さが大噴出して、そのツケが今国民に回されようとしている」と批判しました。こうした状況のなか、総理の責任として、万博全体の経費を納税者、国民に示すことが必要だと主張。経費を含めて全体像が分かる形でを示すよう求めると、岸田総理も「経費も含めて国としてどのような負担が求められるのかを示すことは重要」と応じました。

小沼巧議員

 小沼巧議員は、政府提出の補正予算案の問題点として4兆3千億円計上の「基金」と2兆円計上の「予備費」(新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費)を挙げました。基金について小沼議員は、「基金に頼りすぎる。そんな補正予算ばかり組んでいることが、年度内に政府の目標、政府の経済見通しを達成できない大きな要因の一つではないか」と指摘しました。岸田総理は基金について、「今回の経済対策の最も大きな柱である賃上げの原資となる企業の稼ぐ力、供給力を強化していくために必要な政策として基金を用意した」と答弁。小沼議員は、「基金自体は否定しないが、補正予算で積むことの説明にはなっていない」と指摘。基金に関わる事業が当初予算作成後に生じた事由であり、財政法上の観点で問題がないことを示す資料を理事会に提出することを求め、その資料を見て判断すると述べました。

 閣議決定で使途を決定できる予備費についても、年度をまたいで全額繰り越しが続き予備費を計上した2年後に執行した事例があることを指摘する小沼議員は、なぜ当初予算や補正予算で具体的な項目として計上し直さなかったのかを疑問視しました。小沼議員は、「国民は本当に苦しんでいる。そういった苦難に寄り添わず予備費という形でとりあえず見せびらかすものは積んでおいて、具体の予算は積まないで年度末に余ったからちょろっと執行することが状態化している」と指摘。「予備費に頼り切る姿勢は問題だと思うし、政府における予算編成能力が劣化していると言われても仕方がない」と述べました。