衆院本会議で3月14日、民法などの改正案の趣旨説明・質疑が行われ、立憲民主党・無所属会派を代表して米山隆一議員が登壇。(1)本改正案が共同親権を原則とするものかどうか(2)親権の共同行使が必要な具体例(3)子の利益のため急迫の事情があるときの具体例(4)改正後の広報のあり方(5)裁判所が必ず単独親権とすべき事例及びその周知のあり方(6)家庭裁判所の体制(7)親権者変更の手続き――等について、小泉法務大臣の見解をただしました。

 本改正案は、離婚後の父親と母親の双方に親権を認める「共同親権」の導入が柱。現行法では、離婚後の子どもの親権者は父母の一方に限る「単独親権」のみを規定していますが、共同親権も選択できるようにするものです。

 米山議員は冒頭、「親子関係の規律に大きな変化をもたらすこの法律は、多くの国民の生活に直接影響を与え、社会に大きな変化をもたらし得る」と強調。「本法案の審議は特に、さまざまな国民の要望に丁寧に耳を傾け、多くの専門家の意見を参考にし、立法事実を詳細に確認して制度趣旨を確かめ、法案が成立した場合に意図した制度趣旨が実現できるかを十分に検討し、議論が熟さなければ決してその成立を急ぐべきものではない」と述べ、委員会での丁寧な審議の徹底を要請しました。

 その上で、さまざまな家族があるなかで本改正案が共同親権を原則とするものではないかを小泉法務大臣に確認。小泉法務大臣は「一義的に答えることは困難」とした上で、「個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきであるとの考えに沿ったものだ」と述べました。

 米山議員は、身体の傷害に至らない様な精神的DVや経済的DV、あるいは一方配偶者の不倫の様な、配偶者間の感情的問題に基づいて共同親権の行使が困難な場合が必要的単独親権の理由になるのかを質問。小泉法務大臣はこうした事例も含めて「事案によっては裁判所が必ず単独親権としなければならないことがあり得る」と答えました。

 米山議員はまた、今迄単独親権だったところから共同親権が可能になれば、離婚後親権を得られなかったことに納得せず、不満を抱いている一方の親が、現在親権をもって子を養育している親に対して、親権変更の調停を申し立てることが予想されると問題視。例えばDV等を受けて離婚し、隠れるようにして生きているシングルマザー、シングルファザーにとっては悪夢になると大臣の見解を尋ねました。

 これに対し小泉大臣は「新たな規律の適用により、子の利益が害されないようにする必要がある。親権者変更の申し立てが認められるのは、子の利益のために必要な場合に限っており、かつDVや虐待の場合のほか、父母が共同して親権を行うことが困難である場合には親権者を双方とする変更ができないこととしている。本改正案が成立した場合は、その趣旨が正しく理解されるよう適切かつ十分に周知することにより、子の利益を害するような親権者変更の申し立てを可及的に防ぐことができると考えている」と答えるにとどまりました。

 米山議員は最後に、本法案は法制審議会が1月30日に要綱案を答申したわずか38日後に衆院に提出され、本日審議に付されている一方、同じく民法改正案の選択的夫婦別姓については、1996年2月に法制審議会が要綱案を答申してから28年以上経ち、世論調査等でも6、7割が賛成、財界もその実現を求めているにもかかわらず、政府は放置し、2022年に立憲民主党など野党が提出した選択的夫婦別姓を可能とする民法改正案も審議に付されていないことを問題視。「政府・自民党は、多くの国民が求める必要な変化を頑強に阻みながら、求める求めない以前に多くの国民がその内容を理解しておらず、当事者と社会に大きな影響を及ぼす懸念がある法案を十分な議論もないまま押し通そうとする、不合理な存在ではないかとの疑念を提起せざるを得ない」と断じました。