衆院本会議で3月21日、政府提出の「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」について趣旨説明・質疑が行われました。立憲民主党・無所属会派を代表して質問に立った神津たけし議員は、(1)トラックドライバーの賃上げに向けた取り組み目標年と計画(2)2024年問題に対する政府の取り組み(3)トラックドライバーの賃上げ(4)標準的運賃の改正(5)トラック事業者の最低運賃と下請け手数料の取扱い(6)荷待ち・荷役等の有料化と「トラックGメン」の活動内容(7)高速道路の料金割引(8)高速道路のミッシングリンクの解消 (9) トラックの積載率(10)中小企業における労働時間遵守、適正運賃周知――等ついて取り上げ、政府の見解をただしました。

 本改正案は、物流の「2024年問題」への対応と物流の持続的成長を図るため、「荷主・物流事業者に対する規制」(流通業務総合効率化法)「トラック事業者の取引に対する規制」「軽トラック事業者に対する規制」(貨物自動車運送事業法)の3つを柱とするものです。

 神津議員は冒頭、自民党の裏金問題をめぐり、裏金衆院議員51人のうち派閥幹部6人が政治倫理審査会(政倫審)に出席したものの、国民の約9割がその説明を不十分と回答していると指摘。実態解明のためには証人喚問が不可欠であり、残り45人の裏金議員も説明するよう、政倫審での申立ての議決を強く求めました。

 その上で、本改正案については、過剰に物流コストを引き下げようと法制度を変えた結果、ドライバーの給与が大きく減少し、物流は仕事がきついのに稼げない仕事」になってしまったと、この30年の失政を批判。生産性向上のための物流DXなどの取り組みを通じて「労働集約型の物流」から「資本集約型の物流」へと大きく変わるなか、トラックドライバーの賃上げに向けた取り組みの目標年と計画をどう考えているかを尋ねました。斉藤国土交通大臣は、「初年度10%賃上げ効果を見込んでいる」「デジタル技術の活用により2030年度までに1人当たり荷待ち200時間を年間125時間以上削減することなどのロードマップを示している」などと答えました。

 神津議員はまた、本年4月1日から始まるトラックドライバーの残業時間規制により、2030年には輸送能力が34.1%、ドライバーは34万人相当が不足すると予測されていると指摘。働き方改革関連法に伴う労働基準法改正から5年以上もの間、なぜ諸課題に対応してこなかったのかと、政府の後手後手の対応を批判しました。

 トラック事業者の運賃をめぐっては、下請け構造が多層化することにより、実際の運送を行うトラック事業者が適切な標準的運賃を受け取ることが難しくなっているとして、トラック事業者が適切な運賃を受け取るためには、100%の標準的運賃を最低運賃として受け取り、多重下請け分の手数料は元請け事業者が荷主と交渉するように制度設計をすべきだと主張。斉藤国交大臣は「(元請け事業者に対する)実運送体制管理簿の作成義務付けと、義務付けることによる運送体制の可視化や、契約条件の明確化、トラックGメンによる悪質な荷主元請け事業者等への是正指導の強化により、実運送事業者の適正運賃収受とトラックドライバーの賃上げに向けてしっかりと取り組んていく」と述べました。

 斉藤国交大臣は、全国各地に点在する高速道路のミッシングリンクについては、神津議員が指摘した中部横断自動車道を含め高速道路のミッシングリンクの早期解消に向けてしっかり取り組んでいくと答えました。

 神津議員は最後に、「残業時間や拘束時間が規制されることにより始まる『物流2024年問題』は、人材不足をどのように補っていくのか、物流の生産性向上を未来に向けてどのように引き上げて行くのかの分岐点となる」と強調。立憲民主党は物流プロジェクト・チームを中心に、将来の物流の諸課題を荷主・物流事業者・国民の皆さんとともに解決していくことを約束すると表明し、質問を締めくくりました。

【衆院本会議】「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」 神津たけし議員(2024年3月21日).pdf