立憲民主党は4月9日、「訪問介護緊急支援法案」と「介護・障害福祉従事者処遇改善法案」を衆院に提出しました。

 政府が今年4月から訪問介護の基本報酬を引き下げたことにより、小規模な訪問介護事業所の倒産や人手不足に拍車がかかり、在宅介護が受けられなくなる要介護者や介護離職が増大するおそれがあります。小規模の訪問介護事業所を中心に悲鳴があがっており、地域の介護が崩壊してしまうのではないかとの危機感が高まっています。立憲民主党は引き下げ前の2月に、厚生労働大臣に対して引き下げ方針の撤回を強く要請しましたが、政府は「聞く耳」を持ちませんでした。

 そこで立憲民主党は、訪問介護の基本報酬引き下げの実質的な撤回・見直しの効果を持つ「訪問介護緊急支援法案」を提出しました。内容は、(1)できる限り速やかに訪問介護事業者に訪問介護事業支援金を支給すること((2)の改定までの間)、(2)次回の改定(令和9年度)を待たずに、できる限り早い時期に訪問介護の介護報酬基準を改定することです。

 また、訪問介護以外の介護サービスにおいても、全産業平均と比べて賃金が大幅に低く、深刻な人手不足であることから、立憲民主党は「介護・障害福祉従事者処遇改善法案」をバージョンアップさせて再提出しました。政府の新たな処遇改善策の上乗せ措置として、全ての介護・障害福祉事業所で働く全ての職員に対し、月額1万円の処遇改善を行う内容です。法案には、新たに介護・障害福祉従事者等の賃金水準を他業種の従事者の平均的な賃金水準と同程度のものにするための方策について検討することも規定しています。

訪問介護緊急支援法案の背景と目的・ポイント.pdf

 法案提出後の記者会見で筆頭提出者の柚木道義衆院議員は、訪問介護緊急支援法案のポイントの一つは財政支援だと強調。さらにもう一つのポイントとして、報酬の期中改定であり、「次の訪問介護の改定は3年後で、それに向けて政府は今年度中に実態調査をして、来年度以降ぐらいから対応すると悠長なことを言っている。それでは小規模事業者が倒産、ヘルパー離職が激増する。われわれはそれを待たずにただちに4月の影響をサンプル調査などで把握する。6月に処遇改善加算が増えても収支全体で基本報酬削減でマイナスになって倒産・失業が増えるため、本法案はただちに手当するという内容になっている。本法案成立によって、本当の意味での世の中全体の賃上げを行う。介護離職で9兆円の経済損失と言われている。それを防ぐために取り組んでいく」と説明しました。

 また、「明後日から政府提出の育児介護休業法改正案が審議される。政府は介護休業を取りやすくすると言っている。今の状況では、介護離職しなければならなくなる。政府がやろうとしていることからも逆行する」と政府の対応の矛盾を指摘しました。

 障がい・難病PT座長の横沢高徳参院議員は、「地方はただでさえ人材が不足している中で、これ以上人材が不足すると、我々のような介護を必要としている人たちの生活が成り立たなくなってしまうという懸念がある。スピード感を持って対処しなければならない。今回の法案は利用者にとっても非常に有用である」と述べました。

 大河原まさこ衆院議員は、自身が訪問介護の利用者であることを述べた上で「小さな事業所ほど人のやり繰りに大変困っている状況を見てきた。人がどんどん変わっていく現状を肌身に感じている」と現場の実態を説明しました。その上で、「訪問介護緊急支援法案でしっかりと介護従事者に直接プラスになる手当をして、地域密着型の小さな事業者も守れるようにする。国民の本当に頼りになる公共サービスとしての介護を確実に持続可能にしていく大きな支えになると確信している」と法案の意義を語りました。

 法案提出者は、柚木道義(筆頭提出者)、山井和則、逢坂誠二、中島克仁、大河原まさこ、井坂信彦、早稲田ゆき、森田俊和、道下大樹各衆院議員です。また、厚生労働部門長の高木真理、厚生労働部門長代理の打越さく良、障がい・難病PT座長の横沢高徳各参院議員も出席しました。

訪問介護緊急支援法案.pdf
介護・障害福祉従事者処遇改善法案.pdf