衆院本会議で4月9日、「放送法の一部を改正する法律案」に対する趣旨説明と質疑が行われ、立憲民主党・無所属を代表して藤岡隆雄議員が質問に立ちました。
藤岡議員は、(1)ネットの必須業務化(2)ネット受信料の理由(3)受信契約や視聴者数の増加(4)理解増進情報制度の廃止(5)ローカル局支援(6)NHK共聴(7)NHK、民放、新聞の連携・協力(8)NHKの信頼・理解・共感――等について取り上げ、所管大臣の認識をただしました。
藤岡議員は冒頭、「放送法に関連し、放送事業者には政治的に公平な立場で放送番組の編集にあたって頂くことが重要だが、先日、いわゆる自民党派閥の政治資金パーティーに関する裏金問題を巡り、自民党内の処分が発表された」「明後日の本会議において倫選特が政治改革特別委員会に改組されるが、法改正の議論の前に、まず岸田総理に特別委員会に来ていただき、森元総理の関与、処分の具体的な基準、岸田総裁自身と二階俊博議員を処分の対象外とした理由などを国民に説明することから始めて頂く必要がある」と、岸田総理の姿勢について問題提起しました。
■ネットの必須業務化の理由
総務省の調査では2020年度、平日におけるネットの平均利用時間が初めてテレビを上回り、その後、差が開き、テレビを持たない世帯が増加。国民が情報を入手する主な手段は、ネットへ移行しつつあるとの認識を示し、こうした中で、現行制度下においても「インターネット活用業務」として配信されているNHKの放送番組について、放送法改正案においてインターネット配信を必須業務化することとしているが、その積極的な理由は何か」「一方で民業にどんな影響が及ぶのか」等について質問しました。松本大臣は「放送をめぐる受信環境が急速に変化するなか、NHKの放送番組をテレビ等を設置しない者にも提供するため」だと述べるとともに、「また他の放送事業者等への悪影響が生じないよう仕組みを共有する」などと述べました。
■ネット受信料
「テレビを持っていない人も受信料をとられるのか」「パソコンやスマホを持っているだけで受信料を払わなければならなくなるのか」といった疑念や不安を抱かれる方も多いことを踏まえ、藤岡議員は質問。「スマホやパソコンを保持しただけでこの負担を求める対象とみなすのではなく、視聴する意思が明らかになるような行為を前提とするとして、アプリのダウンロードや利用約款への同意等の行為などが考えられる」と問題提起し、受信料支払い発生要件の詳細について質問。松本総務大臣は「アプリのダウンロードや ID の入力等の一定の操作等を行うことにより、受信契約の対象となるインターネット配信の実施を開始したものを受信契約締結事務の対象とする」と答えました。
■受信契約や視聴者数の増加
「今後一層テレビ離れが進む中、受信料収入はこれまで以上に厳しい状況に陥っていくことは目に見えている」との見方を示した藤岡議員は、本改正案によってスマートフォン等での視聴者向けの契約が創設されることにより、テレビを所有せずに相応の負担のもとでNHKを視聴する意思がある人たちがどのくらい出てくるのか、受信契約や視聴者の増加見込みについて大臣に質問しました。松本大臣は「具体的な手続については、法案成立後に NHK が受信契約において定めることとなる」旨を述べるに留まりました。
■理解増進情報制度の廃止
今回、放送番組の関連情報の提供として「NHK政治マガジン」などの独自情報を配信していた理解増進情報制度が廃止されることになったことで、既に「NHK政治マガジン」など6サイトは本年3月に更新が終了される点も取り上げました。「新聞離れ・テレビ離れの若者にとって、テキスト・文字ニュースはNHKの報道に触れる可能性があるもの。『メディアの多元性』が重要といいながら、なぜネットの独自コンテンツが廃止されるのか。理解増進情報制度を廃止することは『情報の多様性』を減ずることにならないか」と問題視しました。
また、良質な文章によるテキスト・文字情報は、聴覚障がい者はもとより、昨今の自動音声読上の実用化により、視覚障がい者にとっても非常に重要なものと考えられます。新聞が購読できず、しっかりした記事を実はNHKのネットサービスでしか読めない経済環境にある方もおります。理解増進情報として提供してきたNHKのコンテンツの廃止が、障がい者や低所得者に及ぼす不利益についても注目し、問題提起しました。
藤岡議員は最後に、「公共放送が災害時や、今回のコロナ禍のような緊急事態に社会インフラとして果たす役割は小さくない。良質のドキュメンタリーは多くが評価するところだ」「何より必要なのは、公正中立な報道姿勢であり、NHKが受信料を負担する国民・視聴者共有の財産である」と指摘し、この点を自覚し、国民・視聴者の信頼・理解・共感などの向上に務めることを期待すると求めました。さらに、「一方、信頼を大きく失墜し、信頼の回復が求められるのは、日本の政治」だと指摘し、「岸田総理は、自らの責任を問われ、国民に判断してもらうと発言した。総理自らが判断できないのだから、国民の皆様の判断で、政権交代をして、政治の信頼を取り戻していこうじゃありませんか」と表明し、質問を終えました。
20240409【衆院本会議】放送法改正案質疑原稿 藤岡隆雄議員.pdf