立憲民主党は4月12日、「国境離島みんながJR運賃並法案」(正式名称:有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法の一部を改正する法律案)を衆院に提出しました。

 「離島航路は海の国道であり、島民に適用されている低料金を島民以外にも適用し、人が集まる島へ」を政策として訴える山田勝彦衆院議員(党島政策PT事務局長)が中心となって、立憲民主党内閣部門会議(杉尾秀哉部門長)と島政策PT(野間健座長)が合同で検討を進め法案を作成しました。

 現行の有人国境離島法の下で行われている航路及び航空路の運賃割引制度は、事実上、対象を有人国境離島の島民等に限定しています。島民限定で離島航路を安く利用できていることは負担軽減の面で評価できますが、島民の料金だけを安くすると島に住んでいる親や祖父母が島外に出る方が交通費がかからないことから、島の消費が外に流れてしまう問題があり、結果的に、島民の島外での消費を促すだけとなり、有人国境離島の経済にかえって悪影響を与えることが懸念されています。

 そこで、今回の法改正によって、旅行者など島民以外の者も対象とした航路及び航空路の運賃割引の導入を促し、JR運賃並みに低料金化していくことで、交流人口の増加を図り、島内の消費を伸ばし、有人国境離島経済の活性化を図ろうとするものです。地域にお金が回り経済が循環すれば、若い人たちの雇用にもつながります。

 改正案は、(1)割引運賃の対象者の拡大、(2)国の負担割合の引き上げ、(3)検討条項――の3点からなっています。

 (1)は「旅客」に島民以外の者が含まれることを明確に書き込むことで、現状では島民・準島民のみを対象とする割引運賃制度について、全ての人を割引運賃の対象とするよう、基本方針等の変更を方向付けるものです。(2)は割引運賃の対象拡大により自治体の負担が増えないよう配慮するもので、国の負担割合を現状の55%程度から90%程度に引き上げる内容となっています。(3)は他の離島等への施策の拡大を期待し、改正法の施行状況を踏まえて所要の措置を講ずることとしています。

 法案提出後の記者会見で、筆頭提出者の山田勝彦衆院議員は、改正案の趣旨、ポイントについて説明し、「3月の対馬での対話集会で、この政策を次の衆院選の党の公約に掲げてほしいと要望され、島民の声を法案の形で提出させていただいた」「離島航路は、島民にとって生きるために大切な『海の国道』であり、他の島へ広げる横展開を目指している」と説明しました。

 野間健衆院議員(島政策PT座長)は「離島の方からすると住んでいるところが本土であり、離島対策PTを島政策PTに改めて議論してきた。島に住む当事者の思いで法案を提出した」と強調しました。

 選挙区に初島がある渡辺周衆院議員は、「グローカル人材」の育成を目指している隠岐島前高校では「島留学」として、日本全国から生徒を募集していることを紹介し、この法案が実現すれば「若い人が住んで定着し、島の人口を増やして島を守ることにも寄与できる」と指摘しました。

 小宮山泰子衆院議員は「観光振興に加え、島外から日常物資を運ぶ事業者や営業で通う方も対象になれば、島民の生活を支える糧になる」と法案の意義を語り、「島の声を国政に生かすため実現していきたい」と強調しました。

 佐渡島を抱える西村智奈美衆院議員は「佐渡金山の世界遺産登録がかなえられれば、観光に訪れる皆さんの起爆剤になる」と強い期待感を示しました。

 神谷裕衆院議員は「多くの皆さんに島に来ていただいて交流が進むことが大事だ」と述べました。

 最後に山田勝彦衆院議員は、「財源としてあと120億円が必要だ。国境の島に人が住み続けられない限り国防はないし、漁業によって領海も守られる。岸田政権は43兆円の防衛費確保を目指しているが、新しい島のための政策はほんのわずかな予算で実現できる」と、改正案の実現に向けた意気込みを語りました。

 法案提出者は、山田勝彦(筆頭提出者)、野間健、渡辺周、小宮山泰子、西村智奈美、逢坂誠二、森山浩行(欠席)、近藤和也(欠席)、神谷裕各衆院議員です。

国境離島みんながJR運賃並法案( 有人国境離島法改正案)_概要・要綱・法案・新旧.pdf