「共同親権」の導入を柱とした「民法等の一部を改正する法律案」が4月19日、参院本会議で審議入りしました。「立憲民主・社民」を代表して石川大我議員が質問に立ち、(1)意に反する共同親権は憲法24条に反しないか(2)養育の多様化と親権の所在の関係(3)離婚後共同親権がDV・虐待加害者に拒否権や介入権、支配権を与える危険性(4)いかにしてDV・虐待ケースを除外するか(5)監護者を指定の必要性(6)共同親権とするか単独親権とするかの明確な基準――等について小泉法務大臣の見解をただしました。

 石川議員は冒頭、「DV 被害者やシングルマザーの支援をしている団体の声が切り捨てられた。検討が不十分であり、国民の理解を得られているとは言い難い状態」だと、本法律案が国会に提出された経緯を問題視。16日の衆院本会議での採決では自民党議員から反対者が出るなど審議が尽くされていないとの声が多く上がっていると述べました。

 一方、 同じく民法改正で対応すべき課題の選択的夫婦別姓に関しては、1996年2月に法制審議会がこれを認める要綱を答申したにもかかわらず、28年間以上の長期にわたり、政府は法案を提出していないとして、「民間の調査で6、7割の国民が賛成し、経団連等、財界からも要望が出ている。選択的夫婦別姓制度こそ、法案提出し、審議を行うべきではないか」と主張。また、同じく国民的コンセンサスが積み上がっている同性婚についても、これを可能とする法案を提出しない理由を尋ねました。

 その上で、本改正案については「家庭の中でDVや虐待に苦しんでいる人たちに希望を与える法案であると断言できるのか」「旧統一教会をはじめとする特定の宗教や支援団体の方向や、『家族に対する支配を固定化しようとする家父長制的な価値観を有する人々』の方向ばかりを向いて政策立案や法案提出をしているのではないか」などと迫り、離婚後共同親権がDV・虐待加害者に拒否権、介入権、支配権を与えてしまう危険性を指摘。特に、身体的な暴力を伴うDVや、経済的・精神的なDVなどさまざまなDVの可能性がある場合 、何がDVに当たるのかを認識していない人が多数見られるとして、「離婚後共同親権は『DV・虐待ケースは除外』とされているが、『DV・虐待ケース』に当たるかの判断は難しく、すり抜けて共同親権が適用されることが強く危惧される。いかにしてDV・虐待ケースを除外するか、具体的に示してほしい」と求めました。

 離婚後の共同親権がDV・虐待加害者に支配検討を与えてしまう危険性については、小泉大臣は「父母双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められる時は裁判所が必ず単独親権を定めなければならないとするなど虐待の恐れがある事案にも適切に対応できる内容となっている。別居親が親権を有することで虐待の危険性が高まるといった調査結果があるとは承知していない」などと強弁。石川議員はこれに関連し、婚姻中にDVに気づくのが困難だという事例が多数報告されていることを踏まえ、結婚前にDVを防ぐため、DVや虐待があった場合の告発・被害届・相談等の対処をできるようにする結婚前のDV講習のような支援の制度化も子の利益に資すると考えると提案。これに対し小泉大臣は「子の利益を確保するためにはDV等を防止して安全安心を確保することが重要。円滑な施行に必要な環境整備等について関係府省庁と連携して適切に検討していく」と応じました。

 石川議員はまた、「子の養育の在り方の多様化」の観点からも、「政府は、同性婚の法制化や同性カップルが子育てしやすい法整備や環境を作ることにも、早急に取り組むべきでないか」と提起。最後に、「本法案がどれだけ多くの当事者に影響を与えるのか、真に当事者が求めているものであるのか、今一度立ち止まって審議を行うべきであると確信している。本院の法務委における審議は、さらに充実したものとなるよう強く求める」と述べ、質問を締めくくりました。