衆院厚生労働委員会は4月24日、立憲民主党等提出の「訪問介護事業者緊急支援法案」「介護等従事者人材確保法案」と、政府提出の「育児介護休業法等改正案」の審議を行いました。

 吉田統彦議員は立憲民主党等案に対して、政府案との一括審議を希望した理由を質問しました。

 筆頭提出者である柚木道義議員は「閣法の目的は仕事と育児介護の両立支援をはかり、育児介護を理由に辞職せざるを得ない人を減らすことであると理解。このような目的を達成するためには、閣法のように、労働者の職場環境を改善することに加えて、保育サービスや介護サービスの提供体制を確保し、必要な方が必要なサービスを利用できるようにすることが重要である。介護をしながら働く人が増加しているなかで、これらはいわば車の両輪として進めていく必要がある」と述べました。

 昨日の厚労委員会での参考人が述べた「仕事と介護の両立について子育てとは異なる点として、介護はいつ終わるか分からないこと」「結局介護離職につながってしまう可能性があること、そのため介護休業は仕事に復帰するために介護サービスの利用をマネジメントするための休業であること」等を指摘しました。

 経済的な面として、「現在でも全産業平均と月収で約6万円もある給与格差が更に拡大し、その人手不足が更に深刻化するおそれがある。介護離職者が増えれば、2030年時点で約9兆円に迫ると推計されるビジネスケアラー発生による経済損失が更に拡大することになる」こと、また「『介護離職により労働力を失うことは企業にとっても大きな損失』であり、介護離職者への調査で『仕事を辞めなければよかった』という回答がほとんどであった」との指摘に言及し、「介護離職による損失は大きい」と述べました。

 「介護サービスの提供体制を確保することにより、介護崩壊、介護離職を防止し、全ての家庭における仕事と介護の両立を支援するため、この2法案を提出し、閣法との一括審議をお願いした」と一括審議の趣旨を述べました。

 吉田議員は、「昨日の厚労委員会で、参考人から今回の訪問介護に関する基本報酬引下げを受け、倒産する事業所の増加や今後の人材確保への懸念が示されたこと」と、一方で「先週の本委員会での議論で、報酬の引上げだけで、現在の介護・障害福祉に関する問題が全て解決される訳ではないとされたこと」を取り上げました。「人手不足が指摘されて久しい介護・障害福祉分野の現在の窮状について、どのような課題があると衆法提出者は考えているのか、見解を伺うとともに、そのような課題に対し、今回の法案が対応できているのか、できているのであれば、どのように対応しているのか」と質問しました。

 立憲民主党等案の提出者の井坂信彦議員は、「介護・障害福祉分野の課題はさまざまあるが、人手不足は特に深刻。例えば、訪問介護事業においては、2023年の倒産件数は過去最多となり、訪問介護事業の有効求人倍率は15倍超えと深刻な状況にある」と答弁。人手不足の要因としては、「セクハラやパワハラの問題など給与以外の面もあることは承知しているが、他業種の従事者との賃金の格差が最大の要因」と指摘しました。そこで、「他業種との賃金格差を埋める第一歩として、わが党は、賃金を改善するための措置を講ずる介護・障害福祉事業者等に対する助成金の支給と介護・障害福祉従事者等の賃金を他業種の平均的な賃金と同程度のものにするための方策について検討することを内容とする『処遇改善法案』を提出した」と提出の目的を述べました。

 セクハラ・パワハラ問題への対応については、「本処遇改善法案において、事業者に介護従事者の適切な就業環境を維持する努力義務と、国と地方公共団体にこの就業環境の維持に関する国民の理解を深める努力義務も定めたところ。昨日の参考人の発言では、令和6年度介護報酬改定で訪問介護事業の基本報酬が引き下げられたことにより、事業所の統廃合や、給与の引下げも視野に入れなければいけないという法人の紹介があった。そこで、わが党は『訪問介護緊急支援法案』を提出し、訪問介護事業者に対し、支援金を支給することで、これ以上の介護崩壊を防止し、労働者が家族の介護に直面しても離職することなく、介護保険サービスを十分に活用して、仕事を続けられるようにする」とわが党のスタンスを説明しました。