参院本会議で5月10日、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案」の討論・採決が行われ、会派を代表して塩村あやか議員が賛成の立場から討論に立ちました。本法案は、自民、公明両党、立憲民主党などの賛成多数で可決・成立しました。
塩村議員は、国際競争力ランキングで、日本が1980年代後半からトップを走っていたものの1990年代後半の金融危機以降の長引く不況で一気に低下、その後も下落傾向が続き2023年には35位まで落ちたこと、アジア地域でも台湾・香港・中国、韓国、タイ、インドネシアの後塵を拝している状態だと指摘。その理由として半導体産業などの不振、中国や韓国への技術流出の問題などに有効な政策が打てなかったこと、セキュリティ・クリアランスの不備が長く続き、日本の研究者が国際的な共同研究にも入れてもらえず、科学技術の発展などに大きなマイナスを被ってきた問題も影響していると述べました。
その上で、参院内閣委員会の附帯決議で「大企業のみならず、中小企業やスタートアップ等が適合事業者として認定され、国際共同研究開発に参加すること等を通じて、わが国の産業競争力を維持、強化できるよう、官民の協力体制の構築や必要な支援を行うこと」との項目が追加されたことから、新たなセキュリティ・クリアランス制度がスタートアップなどにも幅広く活用されることを、国際共同研究を進め、さらに自国産業の国際競争力の強化を実現させる一つの契機とすべきと言及しました。
審議を通じて法案の問題点も明らかになってきたと述べ、制度設計の重要な部分の多くが運用基準に委ねられており、法案審議の段階では重要経済安保情報に指定される情報の範囲すら明確になったとは言い難いと指摘。鬼木誠議員が岸田総理への質疑で指摘した、企業団体献金を行う企業が「望む情報を指定することすらできる」仕組みだと改めて述べ、特定秘密保護法施行後の検証を踏まえた秘密保全制度全体の一層の改善が求められると述べました。
また、国民の権利・利益に関わる運用基準の不透明さなど、制度全体に対する懸念が払拭された訳ではないと述べ、適正な運用、知る権利、人権、適性評価を受ける本人や家族等のプライバシーが不当に侵害されることが無く、また、国民の不安が解消されるよう、今後の運用を注視していくことが重要だと述べました。
経済安全保障推進法改正案については、(1)2年前にも港湾を基幹インフラに追加すべきとの議論があったにもかかわらず、国土交通省は港湾へのサイバー攻撃を過小評価し追加されなかったところ、2023年7月に名古屋港でサイバー攻撃事案が発生したことは猛省すべき(2)内閣委員会・経済産業委員会の連合審査会で医療機関がサイバー攻撃の対象となることを危惧する意見が多く出たことから、医療DXの進展も踏まえつつ基幹インフラへの追加が後追いにならないようにすべき――と指摘しました。