参院本会議で5月17日、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」の質疑が行われ、立憲民主・社民を代表して石垣のりこ議員が質問に立ち、(1) 政治倫理審査会に裏金議員が出席しないことについての認識(2)少子化に関する基本的な認識(3)若い世帯の所得を増やすことができなかった理由(4)固定的な性別役割分担意識(5)児童手当の所得制限(6)育児休業の取得(7)「子持ち様」言説(8)「子ども・子育て支援金」などの財源(9)「出産育児一時金」と後期高齢者医療制度の関係(10)保育人材の確保(11)学校給食の負担軽減――等について、岸田総理をはじめ関係大臣の認識について質問しました。

■政治倫理審査会に裏金議員が出席しないことについての認識

 石垣議員は冒頭、多くの裏金議員が審査会への出席を拒んでいることについて、どのように考えるか、議員としての説明責任は果たされているかについて、岸田総理に質問。岸田総理は政治倫理審査会への裏金議員の出席について「個々の判断によるもの」「国会がお決めになること」等と発言し、自民党総裁として裏金議員の出席を促す意思は示さないままでした。

 政治とカネの問題について、総理・自民党総裁として国民の中にある政治不信を払拭し、再発防止につながる実効性ある改正を強く指示すべきではないかと指摘しましたが、自民党・公明党間で与党案もまとまらないままであり、自民党案も実効性が疑わしい現状にあって岸田総理は明言を避けました。

■若い世代の所得を増やすことができなかった理由

 石垣議員は「若い世代の所得を増やすことができなかった理由」等についても総理に質問しました。1995 年から 2005 年にかけて正規労働者は404万人の減少、非正規労働者は633万人増加したこの時期は、 1993年から2005 年にかけてのいわゆる「就職氷河期」と重なる点を石垣議員は指摘。「非正規雇用の大幅な拡大は、政府が『日本経済再生への戦略』との狼煙をあげ、経済界とタッグを組んで『雇用の流動化』を進めてきた結果であり、若い世代の所得が増えなかったどころか減少した主たる理由でもあり、少子化理由の主要因」との認識を示しました。

■固定的な性別役割分担意識について

 石垣議員は、政府の「こども未来戦略」では、「子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境」があり、「今も根強い固定的な性別役割分担意識から脱却」することが少子化対策の課題として示されている点を指摘。また、結婚して姓を変える人は女性が圧倒的に多く、2022年時点で全体の約95%を占める実態を指摘し、「社会全体の意識改革や働き方改革を正面に据えた総合的対策」として、早期に「選択的夫婦別姓制度」を導入すべきではないかと問題提起し、岸田総理に答弁を求めました。

 岸田総理は固定的な性別役割分担意識からの脱却を踏まえて行動するよう努めている旨の答弁をしましたが、「選択的夫婦別姓制度」の導入については明言を避けました。

■児童手当の所得制限について

 石垣議員は全てのこども・子育て世帯への切れ目ない支援の一つとして、今回、児童手当の支給期間を中学生までから高校生年代までとし、支給要件から所得制限を撤廃したことについては「評価できる」との認識を示しました。その上で、「立憲民主党は、親の収入によって支援の対象から外されるということは『こどもまんなか』に反すると再三申し上げてきた」とも述べました。

 さらに、岸田総理に対し、「自民党は、所得制限なしの児童手当に頑なに反対されていた。かつての民主党政権下、所得制限なしの子ども手当を『ばらまきだ』と批判し、政権復帰後に所得制限がある児童手当を復活させたにもかかわらず、今回、所得制限を撤廃した理由」を確認しました。

■育児休業の取得について

 「共働き共育ての推進ということで、両親共に育児休業を取得した場合の給付の創設は、所得の減少を理由に育児休業取得を躊躇する状況を改善するためにも必要である」「一方で、育児休業の取得に関し代替要員の確保が困難であると回答した事業所が7割を超えるという東京都の調査結果もある」点を指摘し、所得の確保と、圧倒的な人手不足の中、 後顧の憂いなく育児休業を取得できるようにするための施策の重要性に言及し、岸田総理に対応を求めました。

■「子ども・子育て支援金」の財源について

 「子ども・子育て支援金」の財源について、「公的医療保険の仕組みを使って支援金を徴収するのは『目的外使用』であるとして、その制度設計の問題が指摘されている」と石垣議員は問題視。「公的医療保険制度の存立基盤である全世代、全経済主体を守る、存続させるという大義をもって、たとえば安全保障に係る財源を、公的医療保険制度を使って徴収することも可能になってしまう。本来の公的医療保険制度を歪める禁じ手であると考える」と述べ、岸田総理の認識を質問しました。岸田総理は、「安全保障予算は対象外」と答えましたが、子ども子育て支援金制度の財源とすることは妥当との認識を示しました。

■学校教育費の負担軽減について

 石垣議員は学校教育費の負担軽減についても取り上げ、「教育費はもちろん、経済的負担が大きい項目として、ランドセルや教材費、制服などの負担が挙げられる。こうした負担を軽減する施策について検討すべき」と指摘。また、岸田総理は、「こども未来戦略会議」において、学校給食費の無償化に向けて全国の実態調査を行った上で具体的方策を検討するとの方針を掲げている点を踏まえ、「『給食費無償化』こそ、真っ先に実施すべき子ども子育て政策」と述べ、政府の迅速な対応を求めました。

 石垣議員は「妊娠、出産という極めて私的な事柄は、同時に、国家や社会の成立基盤そのものに関わる公的な課題と交錯しています。政治ができること、すべきことは、結婚も出産も希望する人が希望する時に叶えられるような社会を実現することです。あくまで選択は個人に委ねられています。『こども未来戦略』における、『若い世代の所得を増やす』、『社会全体の構造・意識を変える』、『全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する』という3つのポイントに通底するのは、『基本的人権を守る』という一点に他なりません。選択的夫婦別姓も、同性婚もいつまで経っても認められない、外国人の人権も守れない、大勢の子どもや女性が虐殺されているガザでのジェノサイドに明確な抗議の声を上げられない、人権軽視の旧態依然とした政治に終止符を打ち、閉塞感に苛まれた社会に風穴を開けるべく全力を尽くすことをお誓い申し上げる」と表明し、質問を終えました。

20240517【参院本会議】石垣のりこ議員原稿.pdf