衆院予算委員会で5月20日、「政治とカネ」をテーマとする衆院予算委員会の集中審議が行われ、立憲民主党・無所属の野田佳彦、落合貴之両議員が質疑に立ちました。

■野田佳彦議員

 野田議員は、(1)裏金事件の真相解明(2)自民党の政治資金規正法改正案(3)岸田総理の政治資金パーティー開催――等について、岸田総理に迫りました。冒頭、論語で孔子は為政者の心構えを問われた際に「食と兵と信」と説いていることを取り上げたうえで、「あえて一番大事なものは何かというと信だ」として、民衆の政治に対する信頼の重要性を述べ、岸田総理も「信なくば立たず」「火の玉になって政治改革の先頭に立つ」と宣言したことに言及。そうした総理発言があったにも関わらず、自民党の裏金問題が昨年12月に発覚して以降、自民党内での実態把握・真相解明が不十分なままであったことから政治倫理審査会(政倫審)を26年ぶりに開かざるを得なくなったと野田議員は説明。さらには、政倫審への出席を求めた自民党の裏金議員は衆院側で51人だったが出席したのは6人、参院側は対象32人中出席に応じたのは3人に過ぎなかったと問題視。自民党は事態解明に前向きと言えるかと野田議員が問うたのに対し、岸田総理は「実態解明に向けて説明責任を果たすことは重要」と述べたが、「弁明を行うか否かは議員の意思が尊重される」などと述べるにとどまりました。

 野田議員はまた、裏金づくりの経緯などについて、岸田総理は森元総理に対して「話を聞いた」としているが、「体調うかがいのあいさつ程度」であった旨を森元総理自身が雑誌のインタビューで語り、岸田総理の手元に聴取記録もない状況であることから、きちんとした再聴取を野田議員は求めました。岸田総理は「雑誌報道についてコメントすることは控える」と述べるとともに、「私自身、直接森総理に伺い、その上で森総理の具体的な関与は確認できなかった。再聴取等は考えていない」と答弁。野田議員は「総理自身が再聴取する方が望ましい」との考えを重ねて示したうえで、森元総理の参考人招致を求めました。

 政治資金規正法改正の自民党案について野田議員は「(取りまとめが)一番遅い上に、中身が一番薄っぺらい」と指摘しましたが、岸田総理は「諸外国の状況や他の制度との均衡などさまざまな観点から議論を行い、条文をまとめた。実効的な案を提示することができた」との見解を示しました。野田議員は衆院政治改革特別委員会が4月11日に設置された段階で、「私は志願して特別委員会に入ったが、ずっと開店休業だった。この短い首を長くして待っているのに、連休が明けても開かれなかった」と述べ、自民案が5月17日になってやっと決定したことを問題視。「他の党は考え方をまとめている。一番遅かったのが自民だ。いち早く一番シャープな案をまとめて、他党の皆さんご理解・ご協力くださいというのが筋ではないか。反省がない。顔を洗って出直してこいと啖呵(たんか)を切りたくなる」と述べました。

 野田議員はまた、岸田総理が2月29日の政倫審で「総理在任中はパーティーを開かない」と明言したことを踏まえ、昨年12月8日に開催予定だった「第37回新政治経済塾広島」同15日開催予定だった「岸田文雄と国政を語る会」のパーティー券購入者にどう周知し、収支報告書にどう記載したかを確認しました。岸田総理は「開催しないということを伝えながら、どう対応するかについては個別に相談させていただいている」などとする答弁を繰り返すとともに、収支報告書の提出もまだであり、記載内容についても明言を避けました。

■落合貴之議員

 落合議員は、最初に、本日衆院に立憲民主党会派が国民民主党と「政治資金規正法等一部改正案」を共同提出、単独で「政治資金パーティーの開催の禁止に関する法律案」を提出したと報告しました。その上で、これまでにも「旧文通費使途報告・公開法案」「企業・団体献金禁止法案」を国民民主党と共同提出したとして、法案4つを軸に今後の特別委員会での議論に臨む予定だと述べました。

 落合議員は、自民党が15日に示した政治資金パーティー券購入者の公開基準を10万円超に引き下げる案について、「政治資金を集めるためにするパーティーは政治献金と(性質が)似ているため、本来であれば献金と同じ公開水準を定めるべき」と指摘しました。政治献金は公開基準が年間で5万円を超えると寄附者名・寄附者の住所、寄付額が公開される一方で、自民党案の政治資金パーティー10万円超での公開では、「年間ではなく、1回あたり」であることについて、「年12回行ったとしたら、120万円まで年間でパーティー券を購入でき、氏名も不要」といった例を挙げ、透明性が高まったと言えるのかと岸田総理に迫りました。岸田総理は「寄附とは対価性のないもの。政治資金パーティーとは性格が違うもの。透明性・公開基準は同じ額にしなければならないとした必要性はない」と答えました。落合議員は、政治資金パーティーの対価性について、「パーティーに来ないことが前提でパーティー券を購入することが当たり前になっているため、利益率は9割くらいになる。利益率10割の寄附とほぼ一緒」と指摘しました。

 また、政治献金では外国人は寄付が禁じられているが、資金パーティー券は外国人も購入が可能とされていることにも言及し、現在の制度において誰がいくら購入しているのか判断できない状況に「わが国の政治の主権を保っていくためにも、放置していいのか」と問題視し、あらためて政治献金と同じ開示基準にするよう求めました。

 一方で落合議員は、パーティーの開示基準の問題を議論したとしても、「『岸田方式』のパーティーをこのまま続けていたら、骨抜きになってしまう」と指摘。岸田総理に「岸田方式」といった脱法の疑いがあるパーティーをやめるよう訴えました。「地元の政財界の方々が発起人となって開催した純粋な祝賀会。法律に従い開催したもの」「今後は疑念を持たれかねない会合が開かれることがないようにする」との岸田総理の答弁に、「透明度ゼロのパーティーを総理が率先してやっている。今回の指摘で気付いたから、『やめます』くらいは言ってほしい」と批判しました。

 落合議員は政策活動費を50万円超から公開とした自民党の案についても言及しました。「領収書を取らず、支払いを受けた者が定められた項目に従って収支報告書に記載する」と自民党案を説明した岸田総理に対し、落合議員は「領収書を取らないのに、国民がどうやって使途を判断するのか」と苦言を呈しました。

 最後に落合議員は政治資金規正法改正について「国民に言えないようなことをやってきた人たちに厳しい案などをつくることはできない。われわれの案をベースに議論するべき」だとして質問を締めくくりました。