衆院政治改革特別委員会で5月23日、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正の各党案および立憲民主党が単独で提出したパーティー開催禁止法案の実質的な審議が始まりました。
質疑に立った柚木道義議員は、(1)政策活動費(2)企業団体献金(3)「連座制」――等について質問。政策活動費については、「自民党案では政治団体ではなく、本人(個人)が受け取るため、そもそも監査の対象外で本人が党に報告するのも項目別の金額だけでよいとなっている」と述べ、例えば選挙関係費の陣中見舞いとして誰にいくら支出したか、組織活動費の交際費として銀座のどの店でいくら使ったかは公表されないと問題視しました。「こういったことが明らかにならない自民党案は透明度が低く国民から理解をされないと思わざるを得ない。その透明度を高めるためには、領収書(明細書)の公開が重要だ」と強調。野党のみならず公明党も求めている領収書の公開について、せめて検討を約束するよう迫りましたが、自民党は応じませんでした。
企業団体献金をめぐっては、小林製薬の「紅麹」問題に言及し、小林製薬が安倍総理や、自民党の国民政治協会に長年にわたり多額の献金をしていること、機能性表示食品上位5社で10年間で約3.5億円を自民党の国民政治協会に献金していることと、機能性表示食品の制度が骨抜きになっていることとの関連性を指摘。「健康被害があっても報告義務もなければ罰則規定もない。だから今回われわれは健康被害防止法案を提出し、政府もそれを受けて議論している。政策が歪めてきたと見られている。河野元衆院議長も『公費助成が実現したのだから企業団体献金は廃止しないと絶対におかしい』と発言されている。企業団体献金廃止のハの字も検討しないのはあんまりだ」と訴えましたが、自民党は「政策決定が歪められた足跡も実態もない。透明性の向上は当然のことだが、同時に企業団体献金を禁じるという結論にはならない」と、消極的な発言にとどまりました。
柚木議員はまた、「岸田総理がパーティー券購入者の公開基準を寄付と同額の5万円にする必然性はない」と答弁していることに、公開基準を下げる方が透明性は高まると主張。自民党はこれについても「政治資金の透明性確保と、収支報告書に個人の氏名や住所等が記載されることによる個人情報プライバシー保護の要請との双方のバランスをどのように適切に考えるかが重要」などと応じず、柚木議員は「ここで歩み寄れなかったら政治改革特別委員会は最低限の国民の負託にも応えられない」と断じました。
「連座制」については、自民案は「会計責任者が虚偽の説明、代表者による確認を妨げた」場合は連座の対象外で、会計責任者が嘘をついたことにすれば逃れることができ、安倍派議員のような責任転嫁を助長しかねないと指摘。立憲・国民・有志の会の法案では抜け穴を防ぐ内容になっているのかを問うと、法案提出者の本庄議員は「会計責任者をかませることで本人が責任逃れをすることに非常に厳しい目が今向けられている。この点において自民党案は本質的な部分では変わっていないと考えている」と述べ、これに対し立憲などの法案は「政治資金収支報告書、政党交付金の使途等報告書について会計責任者だけでなく、政治団体の代表者つまり政治家本人が直接記載・提出に対して義務を負わせ、不記載や虚偽記入については刑事罰や公民権停止の対象とすることで明確に議員本人の責任を明らかにしている。自民党案のような抜け穴をきちんとふさぐ内容になっている」と答えました。
今回の裏金問題ではそもそも「3千万円の不記載」が立件ラインであり、自民党案では「会計責任者が不記載・虚偽記載していた場合」とあるが、3千万円未満ではそもそも会計責任者が処罰されないのではないかと問題視。自民党は「犯罪として処罰される行為を定めることが立法者の任務。具体的にどのようなときに起訴されるか、3千万円がどうかは起訴便宜主義に基づいて法律を執行する検察官が判断するもの」と、無責任な答弁に終始しました。