農林水産キャラバン(田名部匡代隊長)が5月25日午後、茨城県水戸市で開催されました。今回は、立憲民主党茨城県第1区総支部第4回定期大会の記念講演会「食・農の問題と立憲民主党の政策」として実施。郡司彰前参院議員(農林水産再生本部名誉顧問)が講師を務め、小沼巧参院議員をはじめ、茨城1区の党員らが参加しました。

 農林水産キャラバンは、「農政の憲法」と言われる「食料・農業・農村基本法」の改正案が今国会で審議される予定であることを踏まえ、全国各地の農業現場を訪問し、各地で得た地域の声を党の政策に反映させ、地域と一緒に新しい農林水産政策を作っていく取り組みとして、昨年から実施しているものです。今回のキャラバンは、「食料・農業・農村基本法改正案」が、4月19日に衆議院を通過し、参議院における審議が大詰めを迎えようとしている中、実施されたものです。

■食料・農業・農村基本法改正案に対する考え方

 郡司名誉顧問は冒頭、食料・農業・農村基本法改正案の概要、立憲民主党が提出した修正案、法案に対する附帯決議、衆議院通過にあたって公表した談話を配付し、食料・農業・農村基本法改正案に対する党の考え方を示しました。

■価格高騰の背景

 次いで、消費者に身近な話題として、キャベツの価格が高騰している理由は、「天候不順による生育不良と産地リレーがうまく機能しなかったことによる」と述べ、「チョコレートの高騰が予想されるが、その要因は、カカオの主産地であるガーナにおいて金採掘が横行し、カカオ農園の廃園を招いていることにある」と解説しました。

■世界の食をめぐる問題は、飽食と飢餓の2つ

 「世界の食をめぐる問題は2つ、飽食と飢餓である」とし、「アフリカではプランテーションで換金作物を作らされ、自分たちの食料となる農作物が作られなかったため飢餓となった」と説明しました。また、「ガーナは児童労働が多く、カカオ農園で働いている子どもたちは、チョコレートを食べることがなく生涯を終える、チョコレートを食べるとき、こうした現状を思い起こしてほしい」と訴えました。

 また、「日本は飽食か飢餓かと問われたら、基本、飽食であるが、1日の食事が学校給食だけの1日1回という子どもたち、日々の食事に事欠く人たちがいるという現実があり、二極化している」と説明しました。

 さらに、かつて、わが国でナタデココが流行ったとき、アジア各地で、日本で高く売れるらしいということで、これまでの作物の作付をやめ、一斉にナタデココを栽培したが、日本でブームが終わり、買ってくれなくなり、飢えの原因となったことや、ベトナムなどでは日本で売れるから田んぼをつぶしてエビを養殖していることを紹介し、飽食と飢餓が共存している構造、豊かな食生活の背後にある飢餓の現実を明らかにしました。

 次いで、畜産物の生産には大量の穀物が必要となることを指摘し、これらの穀物を家畜の餌ではなく、人間が食べたら、どれだけの人が飢餓から救われるか、と問題提起をしました。

■旧農業基本法制定から食料・農業・農村基本法改正に至る背景

 さらに、郡司名誉顧問は、1961年の旧農業基本法制定は、わが国がGATTに加盟し、121品目の農産物の自由化を進めたことが背景であり、次いで、WTO体制が始動し、これに合わせる農業にするために食料・農業・農村基本法が制定されたという経緯を概観し、WTOで世界全体の貿易体制を構築しようとしたが、まとまらず、経済連携協定が締結されていると述べました。さらに、今回の食料・農業・農村基本法改正は、顕在化してきている食料安全保障に係るさまざまなリスクに対処しようとするものであると述べました。

■食料輸入は輸出国の土地、水、労働力を使い、輸送でCO2を大量排出する

 また、郡司名誉顧問は、わが国の食料自給率は38%で、6割は輸入であり、食料を輸入することは、輸出国の土地の栄養、水、労働力を使ってできた農産物をCO2を大量に排出しながら運んでくることを意味し、地力を回復しないと砂漠化することは歴史が教えているとした上で、食料自給力を高める必要性を訴えました。

 また、イギリスは食料自給率向上の取組を進めてきたのに対し、日本では、戦後、キッチンカーによるアメリカの小麦の普及とともに、お米を食べると馬鹿になるという宣伝がまことしやかに行われた歴史的経緯に言及し、お米の炭水化物は脳のエネルギーとなることも紹介しました。

■直接支払い・所得補償の意義

 郡司名誉顧問は、EU予算で一番大きいものは軍事費ではなく農業関連予算であり、農業は大事な産業だから保護していかなければならないという考え方から環境支払いや所得補償が行われていることを紹介した上で、「かつて民主党政権で実施した政策をこれからでもやらなければ、農業を守ることはできない。農業で生計を立てていくことができる収入がなければならない」と強調しました。さらに、「この30年間、農林水産省の予算が大きく削減された。一方で防衛予算が5年間で43兆円という。食料の主権の話をしないで、何が安全保障なのか」と述べました。

■ペナルティ農政は分断と対立をもたらす

 最後に、郡司名誉顧問は、「米の生産調整は、ペナルティ農政であり、国の方針に従わない農家には補助金を付けないというものであった」とし、こうした考え方は、今回の基本法改正の関連法案の底流にも見受けられるという見方を示唆し、こうした政策は分断と対立以外、何も生まないと断じ、こうした農政を続けていくことへの警鐘を鳴らしました。