参院法務委員会では6月6日、岸田総理出席で出入国管理法案・外国人技能実習法案の質疑が行われ、牧山ひろえ議員が質問に立ちました。

 牧山議員は冒頭、育成就労制度の導入に際し、永住許可を得る外国人の増加が見込まれるため、故意に税金や健康保険料などの未納や滞納を繰り返した場合等、永住許可を取り消すとした在留資格制度の見直しについて、参院でも引き続き政府へ撤回を求めていくと訴えました。

 牧山議員は、衆院の質疑において、国民健康保険料の滞納者が永住外国人よりも日本人が多いとした調査結果が示されたにもかかわらず、根拠を示さないまま永住権の取り消しを無理やり押し通そうとする政府の姿勢に、「納得のいく立法事実」を提示するよう岸田総理に迫りました。岸田総理は「永住許可後に在留期間を更新する在留審査の手続きがないため、一部が公的義務を履行しない場合があると聞く。これを容認したら適正に公的義務の履行をする大多数の移住者や地域住民との間で不公平感を助長するおそれがあるため、永住許可制度を適正化し、受け入れた外国人と日本人が互いを尊重し、共生社会の実現を目指すための改正をすることにした」と答弁し、これらの一連の状況が立法事実であるとしました。これに牧山議員は、「重要な立法事実がこのありさまでは不信感しかない」と述べました。

 また、永住権取り消し要件を加えるにあたり、政府が日本在住の外国人からヒアリングや意見交換をまったく行っていないことについて、「直接影響を受ける当事者の声をなぜ聞かないのか。残念ながら多くの永住者がこの事実を知らない」と政府の姿勢を問題視しました。

 さらに牧山議員は、永住権取消の3要件や永住資格取り消し後の在留資格の変更など制度根幹である重要事項のほとんどが幅広く解釈できる「あいまいな文言」で規定されていることについて懸念を示し、政府に質問をするも「該当する場合でも必ずしもすべてのケースで永住権が取り消されるわけではない」等の答弁があったとしました。その上で「法務省や入管庁の方針は時代や担当者が変わっても一時の担当者による口頭での説明が変わることがないと断言できるのか」と岸田総理に問いました。ガイドラインで公表することで、手続きの透明性、処分の公平性が確保されると答えた総理に対し、牧山議員は「法案が通った後ではガイドラインができるまで見届けられない」「法文を敢えて曖昧につくり、入管がさらに巨大なフリーハンドを得て徹底的な支配管理体制を構築しようとしているとしか思えない」と主張。「入管庁が絡む案件における広範すぎる裁量権の問題については去年の入管法審議においても私たちが散々指摘したが、まったく改善されていないどころか悪化している」と断じました。

 次に牧山議員は、現行の技能実習制度が、多くの人権侵害による悲惨な状況を生んでいることに言及しました。低賃金、劣悪な住環境、各種のハラスメントが日常茶飯事のなかで、自殺者や犯罪者、失踪者等が生じ、妊娠をすると強制帰国となるため、お腹の子を死なせるといった悲しい事案も起きているとして、「自公政権の長年にわたる先送りにより、人権侵害に起因する多くの犠牲を生んできた。そのことの認識・反省があるのか」岸田総理に問いました。岸田総理は「一部の受け入れ機関による技能実習生に対する人権侵害行為があったことは政府として重く受け止めている」とた上で、適正に外国人材の受け入れを図るための技能実習制度に代わる制度として育成就労制度を創設した」と答弁しました。これに牧山議員は、事実上、制度の名称を変更しただけの「現行と同じような法律をまた出してきた。まったく反省していない」と批判しました。

 加えて、政府が法案の審議で、「日本が外国人就労者に『選ばれる国』となるように」と答弁を繰り返していることについて、円安や日本での就業に伴う技術的な付加価値が低下しているなかで、「何を売りにするのか」という日本の強みについて岸田総理に見解を求めました。「外国人労働者の才能を生かし、安心・安全に働くことができる社会を示していくこと」とし、今回の法改正も共生社会を目指すための法案だと答えた総理に、牧山議員は「今回の法案では総理の言う法案の安定した社会にはならない」と指摘しました。