参院本会議で6月14日、出入国管理法案・外国人技能実習法案の討論・採決が行われ、牧山ひろえ参院議員が反対討論を行いました。討論後、賛成多数で本法案は成立しました。
牧山議員は冒頭、永住資格の取消しをはじめとした今回の法案について、「わが国が育もうとしている共生社会の目を摘もうとする岸田内閣の象徴とも言うべき完全なる人災」だと指摘し、「目的ばかりではなくその手段も虚偽・ごまかし・騙しなどによってその場をやり過ごす誠意のかけらもないお得意の手法ばかり」だと強く批判しました。
その上で、外国人技能実習制度の導入から30年が経ち、人権侵害などの問題から同制度が国内外から「現代の奴隷制度」・「実質的な人身売買」と指摘を受けているにもかかわらず、政府がまとめた各種提案では抜本改革とはほど遠く、制度に関わるステークホルダーの利権を中心とする関係性が見事なまでに温存されており、「看板の架け替えにしか過ぎない」と問題視しました。
本2法案には多くの問題点があるとして、牧山議員は、(1)在留カード等とマイナンバーカードの一体化に関する入管法等改正案は、プライバシー保護の観点から懸念があること(2)育成就労法案ではあらたに派遣労働が解禁となることにより、低賃金が問題視されているなか、さらなる貧困に陥る可能性があること(3)永住権剥奪条項――の3つを挙げました。
国会審議での問題点としては、 (1) 永住権の剥奪条項では法的措置の必要性を裏付けるはずの「立法事実」が質疑の終局に至っても全く示されなかったこと (2) 「永住資格の取消」の必要性について約75%が賛成と答えた2019年の「基本的法制度に関する調査」については「恣意的・誘導的な質問と選択」だと有識者等から指摘されているにもかかわらず、政府がここに至るまでの経緯を正当化する論拠の1つとしていること ――等を指摘しました。
その上で、永住資格の取消制度については、立法事実が曖昧な点に加え、制度の根幹である重要事項の大半が極めて幅広く解釈できる曖昧な文言で規定されていることにも言及。「法文を曖昧に作っておけば、入管がさらに巨大なフリーハンドとも言うべき無制限の権力を得る。徹底的な支配管理体制を構築するために都合が良いからとしか思えない」と政府の姿勢を問題視しました。
また、政府が「日本が外国人労働者に選ばれる国になるように」と繰り返し国会での答弁したことを取り上げ、「わが国は何を売りにするのか」という日本の強みについて岸田総理に見解を求めたところ、「安心・安全に働くことができる共生社会」だと答えたことについて、牧山議員は「誰が考えても永住資格の取り消し制度は数十万人の永住者の安心・安全を奪うものであり、共生社会の理想と真逆の方向にある制度」だと厳しく批判しました。
さらに、小泉法務大臣が「日本人と比べて不公平だという議論もあるが、日本人と永住者とでは、もともとスタートが違う」と発言したことについて、牧山議員は「元々日本に居る日本人は外国籍永住者と同じ罰則を受ける必要はない」と捉えているとし、法案の差別的意味合いを理解していないのではないかと問題視しました。
最後に、牧山議員は、「この法案が成立すれば、外国人に『日本はあなたを労働力としてしか見ていない。あなたがいかに日本社会に貢献しようと、日本はあなたの生活基盤を奪うことができる』というメッセージを送ることになる」とした芥川賞を受賞した永住者である「李 琴美」氏の発言を取り上げ、「今、私たちに突きつけられているのは、多種多様な要素を柔らかく包み込んだ持続可能な将来を選ぶか、自分たちに都合の良い他者しか受け入れない閉鎖的で内向きな社会を選ぶのか、という選択。決して外国籍の永住者のみに関係する他人ごとではない」と指摘し、政府案への反対討論を終えました。
【牧山ひろえ】入管法及び技能実習法の改正.本会議討論.pdf