衆参両院の正副議長が主催する「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する各政党・各会派からの個別の意見聴取」が6月14日午後、衆院議長公邸で行われました。これまで全体会議が2回行われていましたが、各党・各会派からの意見を個別に丁寧に聞くことが重要であるとして、13党・会派の意見聴取が始まりました。立憲民主党が最初の意見聴取であり、野田佳彦・党安定的な皇位継承に関する検討委員会委員長(党最高顧問)、馬淵澄夫・同委員会事務局長、田名部匡代・党参議院幹事長(党幹事長代理)、野田国義・同委員会副委員長が出席しました。

 冒頭、額賀衆院議長は、「第1回目の全体会議でお示しした各論点について、また、今後の全体会議について、ご意見があればお伺いしたい」と述べるとともに、各党・会派からの意見聴取を30分程度で行う計画であること、意見聴取の内容は非公開であること、議事録は取りまとめの参考として作成すること、各党・各会派が本日述べた意見について、プレス等を通じても明らかにすることが可能であることなど、会議の進行や情報の取り扱いについて説明しました。

 野田委員長は、すでに党としてまとめた「論点整理」があり、全体会議でも述べたことから、新たな意見よりも議論の運びに関して話したいとの意向を示しました。特に、国会会期が終盤に差し掛かり、時間的に厳しい状況である認識を示し、個別の意見聴取の終了後にもう一回全体会議でまとめるのは困難であることを指摘しました。一方、女性皇族の婚姻後の問題を含む議題について、悠長に構える話ではなく、国会が閉じた後でも、精力的に意見交換を行う意欲を表明しました。また、自分たちの意見を述べてもそれに対する反論がわからないままでは議論が深まらないことから、意見交換の場でルールを明確に定めて建設的な議論ができるようにする必要があると主張しました。

 馬淵事務局長は、議論の内容について、第1案の女性皇族の婚姻後の身分保持については、配偶者や子を皇族とする案について、女系天皇につながる可能性を懸念する意見もあるが、皇位継承資格に直結する話ではないこと、第2案の皇統に属する男系男子を養子に迎えることは、対象となり得る方がおられるのか、その意思とともに確認することが必要で、憲法上の課題も含め、丁寧に議論を進めるべきであること、また皇族となられる方、配偶者や子の皇位継承資格については慎重に検討すべきことについて改めて強調するとともに、第3案の皇統に属する男系男子を法律により直接皇族とすることについては結論を急ぐべき課題ではないことを述べました。
 
 田名部参院幹事長や野田副委員長は、議論のスケジュール感や時間的制約、議論の複雑さについて言及しつつ、積極的な議論を進める姿勢を示しました。

 額賀議長から、「附帯決議には、皇位継承については皇嗣殿下から悠仁親王殿下までの継承順位をゆるがせにしてはならないと書いてある。この問題は、お互いに共通の認識としていいのかどうか。その上で、問題提起されている皇族数の拡大等について議論をするのかどうか」との発言がありました。馬淵事務局長が「附帯決議ではなく、有識者会議報告書である」旨指摘し、野田委員長から「元々報告書の整理が、皇位の安定期な継承の本質的な問題を先送りして、皇族数の減少についてどう歯止めをかけるかという、絞った報告書になっている」が、「有識者会議報告書を差し戻すことができないので、報告書を前提に議論を進めるしかなく、やむを得ない立場から論点整理を行った」との立場を明らかにしました。

 また、額賀議長は、女性皇族の減少について立憲民主党もさまざまな議論をすべきとしていることに触れ、皇族数の拡大について「意見がまとまれば、法的な形で裏づけをして、政府に求めるということでいいですよね」との確認の発言がありました。これについて野田委員長からは、「各党が女性皇族が結婚後も皇籍にとどまることについては一致している」としたうえで、配偶者と子の扱いについて丁寧な議論を進める必要性を強調しました。とりわけ、女性皇族には摂政の可能性があるが、配偶者も子も国民のままで職業選択の自由や政治活動の自由があるようなファミリーでいいのかという懸念があることを紹介し、女系につながるかもしれないおそれの話だけを言われては、具体的な話は進まないので、(法的な裏付けをどうするよりも)説明を尽くすのが先だとの認識を示しました。馬淵事務局長も「女性皇族が結婚後も皇籍にとどまることに異論がない」との前提に基づいて論点整理をしたが、一方、旧宮家男系男子の皇籍復帰については憲法適合性に疑義があることを論点として提示しており「一致がない」としました。

 さらに額賀議長が、どのような形になるかは別として、皇族数を確保するための法的措置をとることをとりまとめの前提としていいのかと述べたことから、法的措置について意見交換しました。野田委員長は、退位特例法の際も典範本則の改正か特例法の制定かは、生前退位に関する大きな議論の中で最後に出された結論であったことを引き合いに出し、法的措置は「相当議論が煮詰まってからの話だ」として、まずは「女性皇族に関することが一番の論点」であり、「突っ込んだ丁寧な議論をして、それで合意形成したい」と述べました。

 額賀議長は、立憲民主党の論点整理では、養子制度を設計する前に、現実的に養子の対象となり得る方が存在するか、その方の意思を慎重に確認する必要があるとしていることについて、調査や意思確認は、個人のプライバシーの問題や報道による混乱を招く可能性があるとの疑問を呈しました。野田委員長は、直接お聞きしにくいということはよくわかるし、サウンドの仕方が難しいが、「実は女性皇族も結婚したら残りたいとは思っていなかったとか、養子になりたいという人がいなかった」「結局この議論は全く意味がなかった、ではいけない」と述べました。

 最後に、野田委員長が「国民の総意に基づく立場に関わることは、野党第1党と、与党、特に自民党が向き合って、一致点をどうやって見出すかが大事である」と強調したのに対し、額賀議長も「第1党と第2党がきちっと意見をちゃんと丁々発止やって、どれが国民の負託にこたえるものか、そして、この国の根幹に関わる問題をどういうふうにしていくのが今と将来に対して責任を果たすのかということについて、しっかりやっていただきたい」と応じました。

 終了後、記者団に対し、意見聴取の内容について報告を行いました。野田委員長から、会期末だからヒアリングが終わったら1回全体会議をやってすぐ何か決めてしまうということではなく、特に女性皇族の問題などについては丁寧な議論を通じて早く結論を出さなければいけないという思いを持っているので、「国会会期が終わった後でも夏休み返上で精力的に議論する覚悟」があることを伝えたことが紹介されました。また馬淵事務局長からは、額賀議長から「共通点を見出せば、それに対する法的な措置ということの検討も前に進めなければならない」との話があったことについて、女性皇族が婚姻後も皇族として残るという部分は一致をしているところではないかということは申し上げたうえで、その後、子と配偶者が皇族となるか、ならないか、また、旧11宮家から男系男子を養子に迎える案に関しても、立法事実があるかなしやということも含めて、確認がなされないと前になかなか進めないので、今後も中身に関わる議論をしっかりとさせていただきたい旨発言したこと、さらに退位特例法の際には個別のヒアリングを行いながら、全体会議、あるいは、その手前での意見の修正集約などが、水面下も含めて複数回行われてきたことから、今後も立法府の代表である衆参の正副両議長がそろってのヒアリングの頻度を高めていただきたいとの思いを述べたことが披歴されました。
20240614退位特例法案附帯決議に基づく検討結果報告を受けた立法府の対応に関する各政党・各会派からの個別の意見聴取.pdf