衆院本会議で6月20日、立憲民主党が提出した岸田内閣への不信任決議案が議題となり、泉健太代表が趣旨弁明、長妻昭政務調査会長が賛成討論を行いました。各党の討論、採決が行われ、賛成少数で否決されました。
◆泉健太代表
泉代表は「本院は、岸田内閣を信任せず」と決議案の案文を朗読し、理由を述べました。
泉代表は、「総理の対応は、考え方や方針も見えず、決断もないため、なにかにつけ後手後手、そして出てきた中身はどれも空疎」と批判しました。
まず能登半島地震に触れ、現在もなお倒壊した建物が多く残され、他の地域と比べても復興に時間がかかっていること、補正予算を組まずに予備費の小出しで対応している点などを指摘し、総理の震災対応に「疑問がある」と述べました。
自民党の裏金問題への対応については、泉代表は「大量の裏金議員が判明したにもかかわらず、半年以上が経っても、いまだ裏金問題の発生の経緯、裏金の使途は、明らかにはならず、裏金議員の弁明も、処分も、不十分」。自民党主導の今回の政治資金規正法改正についても「抜本的な政治改革に踏み込めない、検討項目ばかりのやったふりでしかない」。自民党の裏金問題でこれだけ高まった政治不信に対して、「岸田総理では、正しい処方箋を示すことができない。昨日の党首討論においても、それが明らかになった。改革もできない、誰の言うことも聞かない、(衆院の)解散もできない総理には、退陣いただくべき」と訴えました。
泉代表は、「政治とカネ」に関わる不信任の理由を具体的に述べました。
自民党派閥の裏金問題とそれに対する自民党の対応は、国民の政治に対する信頼を根本から失わせる、極めて深刻な事態。まさに日本の政治そのものが瀬戸際に立たされているという、強い危機感を持って対応しなければならないが、総理にその自覚がない。
1.裏金問題の真相究明
岸田内閣の最大の問題点は、自民党の裏金問題をまったく解決できていないこと。そもそも裏金問題の全貌は現在も明らかになっていない。
政治倫理審査会では、口裏合わせをしたかのように出席議員が「私は知らなかった」を繰り返し、実態解明には至らなかった。衆参の政治倫理審査会では衆議院44人、参議院29人の国会議員に出席を求める議決を行ったにも関わらず、その後1人も出席することはなく説明責任は全く果たされていない。
裏金問題における安倍派のキーパーソンとされる森元総理からの聞き取りも記録すらせず、真相究明は進むはずもなく、裏金の還流をいつ誰が始め、安倍元総理の死後、誰が還流を決定したのか、現在も明らかになっていない。
それどころか、総理自身においても、内閣の大臣規範を無視し、大規模政治資金パーティーを何度も開催。いわゆる「岸田方式」まで明らかになった。
総理自身に政治改革を進める資格はなかったと言わざるを得ない。
2.裏金の処理
裏金発覚を踏まえて訂正された政治資金収支報告書には幾度も「不明」という文字が並び、実際の使途は隠されたまま。毎年、日本中の企業や国民が1円単位で確定申告を行い、特に今年からはインボイス制度に基づく申告が始まっている中で、自民党議員は収支報告書に後で「不明」と書けば、税を納めなくて良い。裏金議員は脱税、国民には増税。国民は怒っている。
3.政治改革案
自民党の政治改革案は、根本問題には触れない弥縫策ばかり。立憲民主党案について(1)連座制の導入(2)デジタル化、透明化(3)企業団体献金、政治資金パーティーの禁止――等を説明しました。
泉代表は「総理、そして自民党の皆さん」と呼びかけ、「選挙の時に、政策活動費を持った党幹部が権力を見せつけるように札束を置いていく、そんな幹部にいつかなりたいのか。そんな政治に本当に誇りを感じているのか」と問いかけました。
泉代表は「政治改革に関する議論は全議員に関係するもの。だからこそ皆でルールを作れば、金のかからない政治は可能」そして「自己資金に乏しくても、バイタリティとビジョンがある若者が、果敢に挑戦できる政界にしよう」と力強く訴えました。岸田総理に対しても「価値観を変える時」と強調しました。
泉代表は、不信任の理由となる岸田総理の政策についても言及しました。
(1)出生率・子育て支援
今国会の「子ども・子育て支援法等改正案」における、支援金負担は収入の多い現役世代に偏るため、子育て世代にも大きな負担となり、事業主負担も発生するため、子育て世代の勤労者の賃上げにもマイナスの影響を及ぼしかねない。
立憲民主党は、この負担金分の財源を国民に求めず、日銀保有ETFの分配金収入のうちの約1兆円を活用できると考え、法案を提出している。
(2)防衛費増・財源論先送り
防衛増税も、子ども子育て支援金と同様に、岸田政権はあたかも国民負担がないかのようにごまかしている。
(3)経済対策、物価高対策
物価高を放置し国民を苦しめている。アベノミクス依存から抜け出せず、国民を円安で苦しめ、かといって構造改革を進められていない岸田政権は、信任に値しない。「定額減税」は、現場の負担を増やしている。
最後に泉代表は「『今だけ、カネだけ、自分だけ』がはびこってしまった自民党政治、資金集め競争に血道を上げる自民党政治は、もうたくさん」「立憲民主党は、外交、日米関係、自国防衛、国民生活・経済、などにおいて国民にご安心いただける政策路線で新政権を運営する。日本の産業を伸ばし、成長軌道に乗せ、国民所得を向上させ、教育の無償化を進める」と決意を述べました。
立憲民主党・無所属を代表して「賛成」の立場から討論に立った長妻議員は、裏金問題で追及される場面で「信なくば立たず」を連呼する岸田総理に、「政治から信が失われた今、政治が成り立たない現実がある。国民の理解を得て、物事を前に進める力が政府・自民党から失われてしまった。『信なくば立たず』と繰り返すのであれば、即刻総辞職するか、解散・総選挙をして国民の意見を聞いてみるべきではないか」と迫りました。
長妻議員は、今回の裏金問題で自民党は、「裏金事件を起こしたこと」「実態解明を怠ったこと」「政治改革法案をザル法にしたこと」の3つの大罪を犯したと批判。「岸田総理は、国民が何に怒っているのか分かっているのか。今度こそ、カネに汚い政治を終わらせるというのが、多くの国民の願いだった」と述べ、今回の改正政治資金規正法では本質的な問題は何一つ解決されず、政治への信頼は地に落ちたままだと断じました。
その上で、「政治とカネ」の本質的問題は、企業や団体から献金や政治資金パーティーとして流れ込む莫大なカネが政治を歪めているという、カネに歪められる政治の問題だと指摘。「私は議員としてカネの集まらない分野が冷遇される現状をいやと言うほど見てきた」として、子ども・子育て政策や教育政策、非正規雇用・格差対策、新しい産業育成など、献金を集められない、パーティー券を購入できない、カネが集まらない分野の予算や税制、法律の手当が後回しになっているとの認識を示しました。
「私たちが目指すのは、カネの力で歪められず、真に必要なところに予算や法律の手当がなされる政治。これが、まっとうな政治だ」と表明。「わが党の法案のように、個人献金中心の政治活動への転換を目指し、税の優遇を大幅に拡充する個人献金促進策をとれば、相手と同じ土俵で、一定の資金の範囲内で政治活動は続けられる」と述べ、「国民の皆さん、本当に、カネに汚い政治を終わらせよう」と訴えました。
「永田町の常識が国民の非常識ならば、永田町を変えなければならない。その力は国民の皆さま、一人ひとりにある」と強調。与党からも岸田総理を公然と批判する議員が出てきていることに、「であれば、堂々とこの議場で意思を示し、岸田内閣不信任案に賛成していただきたい」と呼びかけました。
最後に「『明日の天気は変えられないが、明日の政治は変えられる』。私たちは決してあきらめず闘い続ける」と表明し、討論を締めくくりました。