立憲民主党は6月21日、一刻も早い水俣病問題の解決を求め、滝沢求環境副大臣に申し入れを行いました。
環境省は、本年5月1日、主催した水俣病被害者と環境大臣との懇談会の場で、長年、水俣病で苦しんで来られ、全面解決を求めておられる方々の声を十分に聞くことなく、一方的にマイクの音を切り、発言の制止を行いました。環境省の前身である環境庁設置の原点でもある水俣病問題への対応として、あまりにも不誠実であり、苦しみを抱える方々の心を深く傷つけることとなりました。
立憲民主党は改めて熊本県水俣市と新潟県新潟市を訪問し、水俣病被害者の方々から意見を伺いました。主な意見として、被害の実態解明と水俣病被害者の支援に向けた被害地域の健康調査の速やかな実施、最高裁判決を踏まえた認定基準の見直し、そして、メチル水銀が蓄積した水俣湾及び阿賀野川の魚介類を摂取した経験があり、水俣病の症状がある人々を水俣病患者として認めるよう求めることを確認しました。
政府は、水俣特措法で明記され、現地で必要とされている疫学を含む健康調査を行わず、MRIを使用した調査研究にすり替えるなどして信頼関係を大きく棄損させています。また、原因企業の責任に固執し、本来、最優先で考えるべき被害者救済が滞っています。地域での差別などをおそれ、水俣特措法の申請ができなかった水俣病被害者がいまだ数多く存在することを認識すべきです。そして、公健法や特措法の制度の維持を理由として、多くの水俣病の症状を有する被害者を切り捨て、被害者を分断し、半世紀以上も水俣病被害者を困難な状況に置いていることを国として反省すべきです。
以上の問題意識から、立憲民主党は水俣病問題の解決に向けて前進させるために政府に要望しました。
【要望】
1. 半世紀以上にわたって救済措置の対象から外れ、困難な状況に置かれた水俣病被害者の存在を認め、十分な対応ができていなかったことを反省するとともに、本当の意味での対話を開始し、信頼構築のために全力を尽くすこと。
2. 水俣特措法の申請を再開し、水俣病被害者が安心して申請ができるよう措置すること。
3. 水俣病被害者が望む疫学を含めた健康調査を直ちに実施すること。
4. 公健法に基づく認定制度の在り方について、上記の健康調査の結果も踏まえながら見直しを行うこと。合わせて認定審査会などの委員等の選任においては、水俣病患者の臨床経験のある医師及び法律に関する識見を有する者を必置とすること。
5. 通院などにかかる費用は水俣病被害者にとって負荷が高いことから、安心して医療及び介護サービスを受けることができるよう、医療費や療養費等の上乗せを検討すること。また、胎児性水俣病患者が安心して生活できるよう、患者の症状に即した柔軟な認定ランクの変更などを含め、介護・福祉の充実化を図ること。
6. 環境汚染の原因企業が債務超過の場合など、汚染者負担の原則に委ねていては被害者が不利益を被ることになる場合の救済の在り方について、早急に検討を行うこと。
7. 環境省は熊本県、鹿児島県及び新潟県に現地事務所を設け、水俣病被害者との信頼関係の醸成に努めること。
8. 差別や偏見のない社会を目指し、公害問題について学ぶ機会を充実させるとともに、公害に関する資料の保管又は展示を行う研究機関及び民間団体等に対し、継続的支援を行うこと。
申し入れ後に記者団の取材に応じた環境部門長の近藤昭一衆院議員は、「伊藤信太郎環境大臣が環境委員会で、特措法は議員立法なので、法案が出されたら、吟味し、成立に向けて支援したいと発言し、5月1日のことを受けて現地に改めて向かうとのことなので、その前に私たちの提出した法案について意見交換をしたかったが、残念ながらそれはかなわなかった」と経緯を報告しました。そのうえで、「新法が必要な手当てだけでなく、今あるスキームでもできることがあると考え、今回の要請を行った」と緊急要請の主旨を述べました。
また、記者から「副大臣から何かお答えがあったか」との問いに対し、野間健衆議院議員からは、「今までのお答えとあまり変わらなかった。申し訳なかったとはおっしゃっていた」と回答しました。
今回の申し入れには他に、阿部知子、山井和則、篠原孝、菊田真紀子、川内博史、松木けんこう、大河原まさこ、野間健、森田俊和、屋良朝博、馬場雄基各衆院議員が参加しました。