党旧統一教会被害対策本部は7月12日、国会内で会議を開き、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する損害賠償請求(念書無効を求める訴訟)判決について、原告の中野容子さん(仮名)および全国霊感商法対策弁護士連絡会からヒアリングをしました。会議にはジャーナリストの鈴木エイトさんも出席しました。

 最高裁は11日、教団側勝訴の二審判決を破棄、差し戻した上で、「損害賠償請求など一切行わない」とする念書は「無効」との判断を示しました。また、献金勧誘行為の違法性については、「審理が尽くされていない」として、教団側勝訴の2審判決を取り消し、審理のやり直しを命じました。

 冒頭あいさつに立った同対策本部長の西村智奈美衆院議員は、最高裁判決を受け、「心よりお慶び申し上げます」と発言。その上で、「多くの議員が国会で質問し岸田総理から答弁を勝ち取ったことが今回の『念書無効』という最高判決につながったのではないか。野党だとはいえ、立法府が果たせることはこんなにあるとあらためて今かみしめている。今回の判決を契機に中野さんのお母さまの救済はもちろんのこと、それ以外の被害者の皆さんも戦いやすく、あるいは声を上げやすくなったのではないかと期待している。政府は、この状況の変化をしっかりキャッチしていただき、後の相談体制などもさらに強化してほしい」と述べました。

 中野さんは、今回の最高裁判決を「全体として、私たちが求めていた細部をゆるがせにしない丁寧な審理の必要性を説くもので、非常に納得のいく内容だった」と評価。(1)念書無効(2)献金の勧誘の違法性(3)問題が広く社会に共有され議論されることの重要性――について、「憲法で保障され、国民すべてが持つ裁判を受ける権利は簡単に放棄させられてはならないとの判決は大変意味のあること。これまで念書(合意書、誓約書)が妨げとなって被害回復に踏み出せなかった被害者の助けになることと思う」「『諸事情を総合的に考慮』(判決文6頁)『多角的な観点から検討することが求められる』(同7頁)との判断が示された。そうあるべき素晴らしい判断だと思う」「判決文に不当寄附勧誘防止法への言及があった。問題が広く社会に共有され、国会で議論され、法律の形になることの意味を実感した」とそれぞれ述べました。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会の木村壮弁護士は「想像を超える画期的な判決だった。従前の裁判例では、個々の出金について不安をあおるような例があったかどうかを問題にし、それを実証できないと認められなかったが、統一教会の場合は長い期間で覚えていない、支配下に置かれていて何も言えずに出してしまうケースもあった。そうした事例についても救済できる判断方法を示してくれたことは非常に大きい」、阿部克臣弁護士は「想像を超える素晴らしい判決だった。献金の勧誘の違法行為について積極的に判断を示すと思っていたので、これでどれくらい被害救済が広がるかとびっくりした。念書を書かされた人以外の被害救済についても大きく広がり得る判決だと感じた。素晴らしい判決を出してもらい、どう生かし被害救済を図っていくかはわれわれ弁護士に課された明日からの課題だと認識した」とそれぞれ発言。特に、本人から被害が語れなくても、家族や周辺が把握しうる情報で違法性が認められる余地が出てきたと意義を強調しました。

 鈴木エイトさんは、高額献金をした高齢者で念書を取られている信者が現役のなかにもまだ多数いることや、中野さんへの誹謗中傷が酷いことなどを指摘。「教団側にまったく反省がない。判決を受けても全く変わらずまだまだ戦いは続いていくと思う」と述べました。

 出席議員からは、今後の教団の動きや山上さんの裁判、解散命令請求への影響などについて質問が上がりました。

 同日は、対策本部の会議に続き、第66回「統一教会」国対ヒアリングを国会内で開催。安倍元総理銃撃事件から2年が経つなか、全く救済が進まず放置されている宗教2世の被害に関して、宗教2世の方々が取りまとめた要望書を当事者からヒアリングしました。

 座長の山井和則衆院議員は冒頭のあいさつで、高額献金問題が大きく前進する一方で残されているのが「宗教2世問題」だとして、車の両輪として解決に向け取り組んでいくと力を込めました。

 「宗教二世バー」という、宗教の垣根を越えて情報交換ができる場所をつくっているという宗教2世の被害者まっきーさん(仮名)は、「子どもたちを守ってほしい」と訴え、宗教2世への社会福祉に関する要望書について説明。具体的には、「未成年者を追い詰めるような忌避」「両親が幼い子どもを残し宣教のために日本を離れるなどのネグレクト」「輸血や投薬など医療行為を禁じる行為」「過度な献金により基本的な生活もままならない状況」「信仰を理由にした過度な体罰や断食」のような事態がより一層過激になることを恐れていると述べ、「学校や病院など身近な大人が意見に気が付き福祉につながるようにしてほしい」「カウンセリングの金銭的な支援や、カウンセラーへの教団ごとの基本的な情報の共有が行われることで、治療への第一歩が踏み出しやすくなることを望んでいる」などと求めました。

 2世元信者で、両親は今も旧統一教会の現役信者で1億円以上の献金をしているという田村一朗さん(仮名)は、事件後は加害意識にさいなまれ精神的に混乱したと話し、「家庭・親子の隙間に入り込んだ宗教による負の影響こそが『宗教2世問題』の一番のポイントだと強調。今後は具体的な支援体制の構築が課題となるとの認識を示し、統一教会2世有志による被害者支援に関する提言として、支援にあたる専門支援者の確保および養成(特に未成年の被害救済・防止にはスクールカウンセラーの役割が極めて重要)と誹謗中傷対策を求めました。

 統一教会対策弁護団で、2世支援担当の久保内浩嗣弁護士は、子どもの自由な意思決定をいかに確保するかだと述べ、未成年が問題だと気づきをもらえる、声を上げられる環境づくり、人権教育の必要性を説きました。