立憲民主党の自治体議員ネットワーク(NW)と女性議員ネットワーク(NW)は7月24、25日の両日、合同夏季研修会を開催しました。両NWの各都道府県世話人をつとめる自治体議員を中心に約170名(リアル150名、オンライン20名)が集まり、活発な議論が行われました。

 開会のあいさつで、自治体議員NW代表の遊佐美由紀宮城県県議会議員は同研修会について、議員としての先見性と持続性を高めるものと述べ、「まっとうな民主主義をつくるためにもこのネットワークを広げていきたい」と強調しました。女性議員NW代表の伊藤めぐみ神戸市会議員は、同NWが各議会で女性をもう1人増やしていく倍増計画に取り組んでいるとして、「男女が活躍できる社会を一緒に目指そう」と語り、同研修会においてもネットワークの拡大・信頼性を高めていきたいと述べました。

自治体議員NW代表 遊佐みゆき宮城県議会議員
女性議員NW代表 伊藤めぐみ神戸市会議員

 岡田克也幹事長は、9月に党代表選と自民党の総裁選を控える中、総選挙の可能性を示し、「われわれが第1党になれるのか、厳しい状況ではあるが十分に可能な状況」だと述べました。その上で、「どれだけ地道な活動をするかにより、3カ月後の総選挙の結果が変わる」「一緒になってこの国の政治を変えていこう」と力を込め、参加者に協力を求めました。

 泉代健太代表は「皆さんあっての立憲民主党だと誇りに思う。一緒にこの輪をさらに大きくしていこう」「国会議員と自治体議員は対等。党運営や政策にどんどん意見を言ってもらいたい」とあいさつしました。講演では、(1)立憲民主党による単独政権樹立を目指す(2)総選挙公示時点で過半数候補者の擁立が未達の場合は他党との連立政権も(3)連立を組むにあたり他党との共通政策を実現する「ミッション型内閣」(4)党の政策――等について語りました。その後の質疑応答では、党の体制の在り方、代表選挙、都知事選の総括、広報戦略など、参加者から幅広い意見が展開されました。

 1日目の後半では、防災について研修とグループワークを3部構成で実施しました。

 第1部は、今年1月に発生した能登半島地震における石川県の中長期的な視野に立った復興計画「石川県創造的復興プラン」について、オンラインで参加した荒井淳志石川1区総支部長から報告・説明がありました。同プランは、能登半島という特別な地形の問題、高齢化や人口減少などの大きな課題がある中で、元通りに戻すだけでは地域の活力を取り戻すことができないため、新たな付加価値も含めた復興を目的として策定されたもの。一方で、同プランでは人口流出がカバーできず、大きな課題となっているとして、「帰る場所をどのようにつくっていくのか」等、国政や県・市政等の場でしっかり議論していく必要があると荒井総支部長は述べました。

荒井淳志 石川1区総支部長

 第2部は、「東日本大震災から13年」が経過するなかで、3人のパネリストによるテーマに沿った基調報告が行われました。

■防災教育

 過去30年間以上教員を務められた山元町の元中浜小学校元校長の井上剛(たけし)氏から防災教育について、報告がありました。当時、被災時に校長をつとめていた小学校の様子などを振り返り、東日本大震災の3日前に起きた地震により、災害マニュアルを教員同士で共有や確認したことが、生徒・職員全員が無事だったことに繋がったと語りました。井上氏は日本が過去の災害の教訓を活かす取り組みがその場しのぎだと指摘。そして、現地に足を運んでもらうことを中心とした活動体験型防災教育の提案を元校長の経験を活かして行っていて、「未来を担う子どもたちに伝えていくことが大事」だと語りました。また、震災後は被災児の心のケアの取り組みとして年2回「花壇整備・おしゃべり会」も実施しており、「再会して話すことが大事」だと述べました。

旧山元町中浜小学校元校長 井上剛 氏

■子ども若者支援

 東洋大学名誉教授の森田明美氏は、震災復興における子どもたちへの支援で必要なこととして、継続的な日常を保障する居場所の重要性を訴えました。荒れた光景は子どもの心に深く刻まれるため、「早くきれいにしていくこと」や、「信頼できる大人をつなぐこと」「心から喜べる体験の機会を提供すること」が大事だと述べました。また、2020・2021年の被災3県の調査では、中高生時代に被災経験のある保護者のうち、ひとり親家庭の割合が被災経験のない保護者の2倍以上だったことが明らかとなり、「被災経験を引きずっていると思わざるを得ない」と述べ、被災児への長期的継続的な調査を行うとともに、総合的かつ継続的に支援し続けなければならないと語りました。

東洋大学名誉教授 森田明美 氏

■インクルーシブ防災

 東北福祉大学講師の阿部利江氏は、誰も(1人も)取り残さない、あらゆる(多様な)人の生命を支えるという防災の考え方として、インクルーシブ防災について語りました。東日本大震災では障がい者の死亡率が住民全体の死亡率の約2倍といわれており、「多様性を認め合うのは大変なことではあるが、私たちの意識を変えていかなければならない」と述べました。インクルーシブ防災を目指す活動から見えてきた期待と課題として、「あらゆる防災組織が立ち上がるなかで、その位置づけと連携をどうするのか」「担い手に年齢や地区構成の偏りや、活動資金などの防災組織の体制構築と維持」「研修プログラムの充実として、自然災害が起こることを前提に定番化した訓練のみで足りるのか」等を挙げました。阿部氏は計画や仕組みをつくっていく立場の自治体議員に対し、「人が動いていくこと。そんな計画を立てていかなければならない」と述べ、「皆さんの持ち寄った良い事例、課題を意見交換してもらいたい」と述べました。その上で、参加者らでインクルーシブ防災を意識したグループワークを実施。「災害が発生したら、私が暮らす町で困るだろうこと」「災害時に備えて、私の町で取り組んでいる・取り組めるだろう防災対策・活動」を付箋紙に記入し、各グループで共有後、グループ内で語られた内容を各グループの代表者(ファシリテーター)が発表しました。

東北福祉大学講師 阿部利江 氏

 また、合同研修会前に女性議員NW研修会・意見交換会が行われ、「有権者の信頼を取得するセルフブランディングのコツ」をテーマに、イメージコンサルタントの古橋香織氏から講演がありました。

イメージコンサルタント 古橋香織 氏

 2日目(7月25日)は午前に分科会を実施。(1)セクシャル・マイノリティ(2)共同親権(3)議会改革分科会(4)こども未来戦略――等、4つの分科会で、さまざまな議論が行われました。午後は東京湾視察船「東京みなと丸」に乗船し、生活と密接する東京港の役割について視察を行いました。