衆院安全保障委員会で7月30日、防衛省・自衛隊における不適切な事案等の閉会中審査が行われ、渡辺周、重徳和彦、屋良朝博各議員が質問に立ちました。

■渡辺周衆院議員

 冒頭、渡辺議員は「自衛隊員を応援する議員連盟を立ち上げている。自衛隊員の手当、就労環境の向上を提案してきた。民主党政権で自衛官の災害派遣手当を増額したが、8時間勤務として時給で200円程度。過酷な勤務状況の中、不正受給は許しがたい。これまでの自衛隊の取組みに水を差す行為だ」と批判しました。

 手当ての不正受給による逮捕が2023年11月に起きてから、公表まで約8カ月かかっていることについて渡辺議員は、「防衛大臣は本当に知らなかったのか。通常国会前に分かっていたら、法案審議に影響が出ていた可能性もある。国会が終わるまでは隠ぺいしていたのではないかと勘繰りたくなる」と問いました。

 木原防衛大臣は「法案審議を考慮して非公表としたものではないと思っている」「『逮捕』に対する意識の差が、防衛省と政治、民間でずれがあった。この点は温度差があった」と説明しました。

 渡辺議員は、不正受給分について「時効であってもなくても、不正に受け取っているので返還させるべき。われわれも今後も追及していきたい」と強調しました。

 自衛隊による特定秘密の不適切運用の問題について、渡辺議員は「公表されたのが4月26日、海上自衛隊の組織上、情報を共有してはいけない人がいた。これもやはり報道されたときには時間が経っている。国会にはセキュリティ・クリアランスの法案がかかっていた。発表を遅らせたのではないかと疑いの目を向けざるを得ない」と指摘。「本来、最も特定秘密が守られければいけない自衛隊において、こんなにずさんであったら」法案の賛否にも影響が出たと述べました。


■重徳和彦衆院議員

 重徳議員は、川崎重工業が取引先企業との不適切な架空取引によって捻出した裏金で、海上自衛隊所属の潜水艦の乗組員に金品や飲食代を提供していた疑いについて、ただしました。今年4月2日に川崎重工業から防衛省へ一報があったものの、特別防衛監察が3カ月後の7月5日に開始されたことを受け、「なぜ3カ月もかけて調査を行ってきたのに公にせず、国会が終わってから指示をされたのか。そこに意図はなかったのか」と迫りました。

 木原防衛大臣は基礎調査を行ってきたものの、大阪国税局が川崎重工業を調査中であったため、事実解明のための関連資料が神戸工場になかったので4月から7月は(大臣へ報告すべき)特段の判明事項もないという報告を受けていると述べました。

 それに対し重徳議員は「事務方も大変な問題であると認識しているにも関わらず、資料がないという理由だけで何も公表しないのは異様なことだ」と強調。「直ちに現時点での報告を受けるべきだ」と力を込めました。

 最後に「大臣のリーダーシップが全く感じられない」と締めくくりました。

■屋良朝博衆院議員

 屋良議員は、昨年12月24日に16歳未満の少女が沖縄県の米軍基地に所属する兵士に誘拐され、性的暴行を受けた事件での政府の通報態勢等の対応について、ただしました。

 まず、当該事件について公表されたのが半年後の6月25日であったことから、上川外務大臣と木原防衛大臣の両大臣に当該事件を認知した日時について質問。上川大臣は、日時は差し控えるとし、木原大臣は6月25日に外務省から報告を受けたと答えました。

 また「1997年に日米合同委員会で合意した(以下、日米合意)連絡通報手続きに沿った対応がされなかったのは、誰の判断なのか」について上川大臣に問いました。上川大臣は、「捜査当局が非公表の事案とした判断を踏まえ、外務省事務方が対応し、防衛省に情報を提供しなかった」と答えました。警察庁からは外務省に事件内容を説明するにあたり当該事件は現在沖縄県警察で捜査中であり、公報を行っていないと伝えたものの、通報手続きを行わないよう求めた事実はないと明らかにしました。

 屋良議員は97年の日米合意について「いち早く対応し、再発防止や被害者のケアをきちんとしようという趣旨」で始まったもので、95年の少女暴行事件以降、普天間の返還まで政治的な大きなうねりとなっていたと述べました。その上で「それに匹敵する今回の事件を事務方が判断し、日米合意を無視して防衛省にも何も知らせなかった。少女のケアや賠償対応についても防衛省が行うはずだが、その仕事を取り上げた」と政府の姿勢を問題視しました。さらに、当該事件後に米軍による性暴行事件が不起訴を含め5件起きているとして、当該事件で然るべき情報共有・対策を取っていれば、「私たちの努力によって防げたかもしれない」と強調しました。最後に屋良議員は、当該事件の情報が外務大臣にいつ上がったのか答弁で明らかにされなかったことについて、小泉安保委員長に対し、今後の安保委員会で情報を上げなかった理由と経緯を報告するよう求めました。