農林水産キャラバン(隊長:田名部匡代参院幹事長)は7月24日、25日の両日、岩手県盛岡市、一関市、奥州市を訪れました。

 今回のキャラバンには、隊長の田名部匡代参院幹事長、事務局長の徳永エリ参院議員、副隊長の横沢高徳参院議員(農林水産部門長代理)のほか、岩渕誠岩手県議会議員、名須川晋岩手県議会議員、佐藤ケイ子岩手県議会議員、千葉秀幸岩手県議会議員らが参加しました。

 一行は24日に、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)東北農業研究センター(盛岡市)を視察し、意見交換を行いました。25日は、JAいわて平泉(一関市)における稲作のJ-クレジットの取組などについての説明を聴取、意見交換を行い、次いで、畜産農家(奥州市)との意見交換、岩手県農業協同組合中央会(盛岡市)との意見交換を行いました。

■農研機構東北農業研究センターを視察、意見交換(盛岡市)

 農研機構東北農業研究センターにおいて、同センター及び果樹茶業研究部門の概要と、同センターによる「子実トウモロコシを導入した新しい輪作体系の確立」「NARO方式水稲乾田直播」「カラムナー性リンゴ「紅つるぎ」の開発」「四季成りイチゴ「夏のしずく」の開発」についての説明、「生産量世界一のリンゴ品種「ふじ」」についての説明を聴取し、試験ほ場を視察したのち、意見交換を行いました。

 「子実トウモロコシを導入した新しい輪作体系の確立」は、生産現場で連作障害による転作大豆の低収、経営規模の急拡大と労働力不足等生産・経営面でさまざまな課題が存在する中、飼料生産増強による食料安全保障の実現等が期待されるものです。水田転作でのトウモロコシ栽培は事例が少なく、新品目の導入に等しいものであることから、栽培管理技術の開発・確立が進められています。

 「NORO方式水稲乾田直播技術」は、苗を育てて代かきした田に播種する従来の方式でなく、直接、種もみを播く栽培方式であり、畑作機械を稲作にも汎用利用できることから、輪作に適した大規模経営における水稲生産コストの削減につながる技術として、同センターが普及活動を行っているものです。

 「カラムナー性リンゴ「紅つるぎ」の開発」は、太い枝が横に広がるリンゴの樹姿を、枝が直立し、円柱状(カラムナー)となる栽培しやすいコンパクトな樹姿とし、食味が優れ、今後開発が進展するスマート農機にも高い適性が見込まれるものとして進められています。

 「四季成りイチゴ「夏のしずく」の開発」については、イチゴは冬春期に出荷する促成栽培が主流で、夏秋期は端境期となり需要に供給が追い付かず海外から輸入しているため、夏や秋に収穫でき、ケーキ等業務需要に向く適度な酸味のある新品種として、同センターと東北5県共同により育成したものです。

 意見交換の場では、農研機構の予算・人員の状況、農研機構と民間企業との共同研究の状況と連携の在り方、農研機構における地球温暖化対策、イチゴの輸送技術、中山間地域農業、プラスチック被覆肥料等に係る研究の動向、鳥獣被害対策に係る研究開発の必要性等について質疑応答、意見交換を行いました。終了後、メディアの取材に応じた田名部議員は「農業人口が減り、地球温暖化が進んでいく中での新たな技術は現場を支えていく力になっていく。どういう研究がなされているか直接見せていただき、希望が持てる有意義な視察であった」「新技術導入により新たな農業生産に切り替えていく環境を作っていかねばならない」「研究開発の予算を確保し、研究機関に優秀な人材が確保できるようわれわれも応援したい」と語りました。同じく取材に応じた横沢議員は、「最先端の農業技術をどう生産現場につなぎ、地域の生産者の所得を確保していくか。技術と現場をつなぐのが政治の役割。将来的なイメージももてた。」と語りました。

■JAいわて平泉における稲作のJ-クレジットの説明聴取と意見交換(一関市)

 一関市のJAいわて平泉米集出荷センター輝倉庫において、同JAにおけるJ-クレジットを通じた環境保全と収益増の取組について説明を聴取し、意見交換を行いました。

 JAいわて平泉は、生物農薬の使用やASIAGAPの取組などを実施してきており、みどりの食料システム戦略の実施に伴い、生産者の導入負担の少ない水稲の中干し延長や地域資源の有効活用に向けたバイオ炭の取組を行っています。

 温室効果ガスの排出削減・吸収量を「クレジット」として国が認証し、取引を可能とするJ-クレジット制度が運営されています。水田からメタンが発生しますが、水稲の栽培期間中、中干し期間を延長すると水田からのメタン発生を削減することができます。この中干し期間の延長についてJ-クレジットとしての認証を受ければ、販売し、収益を得ることができるという施策が2023年より施行されています。JAいわて平泉では、2024年より、この取組を開始しています。また、管内で発生するもみ殻からバイオ炭を製造し利用する資源循環の取組を行っています。

 意見交換では、中干し延長米の取組に対する生産者・消費者の理解の形成、J-クレジットの認証に係る農家の手続きとJAによる支援、天候が中干し延長に与える影響とJ-クレジットの権利取得の必要性などについて質疑応答が行われました。

 また、JAいわて平泉から、「バイオ炭推進のため十分な予算措置が必要」「クロスコンプライアンスの推進に際してDXの支援が必要」「農業専門のコンサル業者があればよい」などの意見が述べられました。

 意見交換終了後、JAいわて平泉組合長から立憲民主党岩手県総支部連合会会長宛の要請書が農林水産キャラバンに手渡されました。この中で、①食料安全保障予算全体の拡充、 ②生産資材の安定供給体制の確立、③配合飼料の安定供給体制の確立、④再生産に配慮した適切な価格形成の実現、⑤担い手が安心して農業に取り組める支援策、⑥雇用労働力の確保に向けた対策、⑦野生動物による農作物への被害防止対策の推進が要請されました。

 要請書を受けた横沢議員は、「現場から積み上げていく政策を実現することがなによりも大事。ご要請を踏まえ、日本農政を立て直すために全力で頑張ってまいる」と語りました。

■菊地畜産との意見交換(奥州市)

 奥州市の菊地畜産を訪問、意見交換を行いました。菊地畜産からは、「消費者が喜ぶ美味しい牛肉を作ることを目的としている。菊地畜産の肉は美味しいという反応があればいいと思っている」という畜産経営の理念についての発言がありました。また、「いい肉を作るにはいい餌が必要。餌代が高騰しており、離農者が増えていく。早急な対応が必要」「規模拡大をすればよいというものではなく、安全性の面からも、適正規模での農業生産が大事」といった要望、発言がありました。

 また、同席したJA江刺関係者からは、「コストを価格転嫁することができる法整備が必要」との意見がありました。

■岩手県農業協同組合中央会との意見交換(盛岡市)

 盛岡市の岩手県農業協同組合中央会を訪問し、意見交換を行いました。岩手県農協中央会からは、水田活用直接支払交付金の5年水張ルールをめぐる農協としての対応についての発言がありました。また、「農業政策は全国一律ではなく、農業の形態が異なる東日本と西日本とで分けるべき」「あと10年もしたら、米農家が減少し、米が足りなくなるのではないか」「米については、ある程度国がコントルールすべき」「新たな直接支払制度について、否定はしないが、導入するのであれば法制化し、制度的安定性を担保する必要」「合理的な価格形成について、2024年問題に起因する運賃上昇、労賃上昇、生産資材の高騰を踏まえて再生産可能な価格をチェックしてもらいたい」「大規模化も必要だが、多様な農業経営がたくさんあることで人口減少を食い止めることができる。中核的な家族農業のあるべき姿を打ち出してもらいたい」などといった意見、要望がありました。