立憲民主党は9月16日、札幌市内で「北海道ブロック立会演説会」と、「エネルギー・農政」をテーマに「北海道ブロック候補者討論会」を開催しました。枝野幸男、泉健太、吉田はるみ、野田佳彦各候補が政見などを力強く訴えました。同月23日の臨時党大会で新代表が選出されるまでの間、全国11ブロックで立会演説会と討論会を開催します。発言順は開催場所ごとに変わります。

北海道ブロック立会演説会

■枝野幸男候補

 「農家の皆さん、酪農家の皆さん、本当にこれまでの営みを続けていくことができない、とても子どもや孫に仕事を引き継ぐことができない、そんな悲鳴のような声をこの北海道各地でも聞かせていただきました」と述べた枝野候補は、人口減少が進み介護や医療の現場でも安い賃金や重労働で仕事を続けたくても続けられない状況が日本各地で起きていることを指摘しました。30年間日本の実質賃金が上がらず、円安、物価高、資材の高騰に「多くの皆さんが困っている」と述べ、競争や自己責任、働く人、暮らしを切り捨ててきた社会から、経済から人間中心の経済へ、ヒューマンエコノミクスという新しい時代のビジョンを掲げて「自民党とは違う新しい時代の姿を訴えたい」と話しました。

■泉健太候補

 泉候補は、「自民党をこれ以上強くしても強いものが強くなる。そんな政治が繰り返されるだけだ」と訴えました。自民党の裏金問題について「とんでもないことだ」と述べ、「20年近く受け取ってはいけないお金を受け取って支持基盤を増やしていた。こんな政治は絶対に許さない」と強調しました。
 北海道出身で父親が酪農関係の仕事をしていたという泉候補は、「北海道の食料自給率を高めていくこと、 そして小規模の酪農家もちゃんとやっていける農政にすること、 そして、地球温暖化で今まで養殖していたものや今まで獲れていた魚介類が獲れなくなっている。こういう農林水産業にちゃんと目を向けるのは立憲民主党だということを、ぜひとも皆さんに訴えたい」と述べました。

■吉田はるみ候補

 吉田候補は、「2012年、民主党政権時代の個人消費を100とすると、今は87まで下がっています。自民党政権で悪くなった」と述べ、政権交代をして暮らしの底上げをすると訴えました。医療費の格差、教育の格差を解消し、子どもが大学まで行きたいにも関わらず行かせてあげられない状況があることについて、「こういう子どもたちを全力で支えませんか。教育の無償化、これは立憲民主党が政権を握ったら、ここにいる4人の候補みんな賛成です。実現できるんです」と訴えました。また、教員の減少、子どもの自殺者が過去最高、不登校が過去2番目であることに触れ、教育に力を入れて若い人のエネルギーを育てることで経済が回り、社会保障を支えることになると訴え、「シニアの皆さま、そして現役世代を支えていく安心になる」等と話しました。

■野田佳彦候補

 野田候補は、日本の島の数が6800ほどであったのが昨年2月から約1万4000程に増えたことを紹介し、「島国なのに島のことを管理できない国だと良く分かった」と述べました。「大事なのは国境離島だ」と述べ、国境離島を起点として、領海、排他的経済水域が決まることを説明。この国境離島が今までは484あったものが「よく調べたら473に減っている」と話し、「国益を損ないますよ」と強調しました。野田内閣時代には、国境離島を管理するために、尖閣諸島の4つの小島に名前を付けたり、水没しそうな沖ノ鳥島の保全工事に予算をつけて管理していたことを紹介。国境離島が消滅してしまうのは、「国が自治体に説明をしていないからだ」と指摘し、「私は、領土、領海をしっかり守っていく政治を実現していきたい」と話しました。

北海道ブロック候補者討論会(テーマ:エネルギ―・農政)

■枝野幸男候補

 枝野候補は、北海道はエネルギーも一次産業も「宝庫だ」と強調。大きな方向性を示す、将来像を示すことが大事だと述べ、「猫の目農政」とも言われるように、政策が「ころころ変わる」と、安心して営みを続けることができないと訴えました。したがって、経済状況に左右されず、営みを続けられるようにするためには、直接的な支払いで、酪農や水産業を含め一次産業の担い手を支えていくことが必要だと述べました。
 また、「ビジネス」という側面があることは否定しないとした上で、「安全保障そのもの」という認識も必要だと指摘。海外から「食料が入ってこなくなれば、わたし達は暮らしていけない」「エネルギーが入ってこなければ、農機具も動かせない」と述べました。
 さらに、安全保障である以上、送配電網は「民間任せ」ではなく、国が整備すべきと提案。洋上風力や小水力などで地域が産み出したエネルギーを、地域で消費するという「地産地消」の取り組みを推進すべきと述べました。
 その上で、ウランや原油、食料などを海外からの輸入に頼らないようにすれば、「その分、日本の富が国内に蓄積される」と述べ、それが結果として地域経済の活性化につながっていくと提案しました。

■泉健太候補

 泉候補は、「札幌生まれの石狩育ち」とのエピソードを紹介し、「農そのものが命」と強調。しかしながら、農家の方の話を聞くと、「今の不安定な農政では、子どもに継がせられないというのが実感」だとして、大規模農家だけでなく「小規模農家」も支えていくのが「自民党農政」との違いだと述べました。
 また、白いトウキビ(トウモロコシ)を北海道から海外に「輸出」する農家の取り組みを紹介し、有事になれば「それを国内の消費に回すこともできる」として、食糧安全保障にも資するので「どんどん支援」し、「輸出も伸ばしていきたい」と述べました。さらに、中国による日本産水産物の輸入停止措置については、「取り止めを求めてまいりたい」と述べました。
 その上で、再生可能エネルギーについて「景観を壊すから全部ダメだと言ってしまうと結局、化石燃料しかなくなってしまう」と強調。日本のエネルギーシフトのために、北海道胆振東部地震によるブラックアウト(北海道全域の停電)の経験も踏まえながら、電力の安定供給と新たな電源開発の双方を伸ばしていきたいと力を込め、エネルギーを「安全でリスクの少ないものに変えていく」と訴えました。

■吉田はるみ候補

 吉田候補は、日本の農政における課題に対し、(1)(北海道の)道東や道南などの地域事情を踏まえた多様な農業のスタイルを支援、(2)担い手不足に対しAIの活用やDXによるスマート農業の実現、(3)円安・物価高の中、チッソ・リン・カリウムなど海外輸入の肥料に頼らない低農薬・有機農法の推進、(4)気候変動下においても確保できる安定的な収入(直接支払い制度、戸別所得補償制度)――を提案しました。
 さらに、農業振興には「物流」の問題解決が必要不可欠だと強調。「せっかくいい農産物水産物ある素晴らしい北海道」であっても、それを道内や本州に届けるには「物流」が重要だとして、女性ドライバーへの支援や鉄道の復活を提案しました。
 また、エネルギーについては、たとえば北海道の地熱を、温泉事業者の方々などのご理解を得ながら推進していきたいと表明。太陽光発電についても、大規模メガソーラーだけではなく、住宅のガラス内で発電するなど「再生可能エネルギーは次のフェーズにシフト」しているとして、こうした「新しい技術を後押し」し、地域を活性化していきたいと訴えました。そして、北海道は「すべての答えを持っている素晴らしい地域だ」と参加者に呼びかけました。

■野田佳彦候補

 野田候補は冒頭、苦楽を共にした北海道の政治家の名を挙げながら、リーマンショック後の厳しい財政事情の中での予算編成や税制改正をふり返りました。
 その上で、国の中長期的なエネルギー政策の指針であり、第7次の策定が進む「エネルギー基本計画」に言及。電源構成について、注目はされるが、政府や電量会社が「責任を持ってやるかがはっきりしてない」として、「曖昧性を克服しなければ日本の本当のエネルギー戦略は作れない」と強調しました。
 また、農業従事者数が今後20年間で約30万人に減少すると予想されることについて、自民党の政策では「農業者を増やすという政策はまったくない」と指摘。自身が提唱している「令和版国立農業公社」の創設について、「専業」農家こそ気候変動などで不安定な収入ではいけない」と述べ、戸別所得補償制度は「全国どこへ行ってもご要望が多いので、それを実現する」と訴えました。
 さらに、安倍政権には「光と影」があったと言及し、影の部分は対ロシア外交だと指摘。対ロシアへの経済協力や大臣設置を打ち出しても、北方領土は「返ってこなかった」と述べ、経験を活かして、対ロ外交の修復を行っていくとの決意を表明しました。